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数千人規模の抗議デモが起きた理由=中国政府、詐欺と脅迫でダライ・ラマ批判の署名集め―チベット

2012年04月28日

■リタン一帯で法王と亡命政府首相を非難させるキャンペーン 拒否する住民に文革式制裁■

*本記事はブログ「チベットNOW@ルンタ」の2012年4月27日付記事を、許可を得て転載したものです。


Men Laden With Tea, Sichuan Sheng, China [1908] Ernest H. Wilson [RESTORED]
Men Laden With Tea, Sichuan Sheng, China [1908] Ernest H. Wilson [RESTORED] / ralphrepo

チベット族数千人がデモ 弾圧に抗議、四川省
共同・MSN産経、2012年4月27日

米国の海外向け放送、ボイス・オブ・アメリカ(VOA)は27日までに、中国四川省カンゼ・チベット族自治州徳格県で25日、チベット族住民数千人が、地元当局による僧侶への弾圧などに抗議するデモを実施したと伝えた。

当局の治安部隊が22~24日に同県のチベット仏教寺院を取り締まり、多数の僧侶に暴行を加え、数人を逮捕。デモでは弾圧停止や警察の寺院からの撤退を求めたという。

米政府系放送局のラジオ自由アジアによると、同自治州の理塘県では約2カ月前から、当局者がチベット族住民に対し、チベット仏教の最高指導者ダライ・ラマ14世の帰還に反対することなどを誓わせる文書に署名を要求。住民らが拒絶すると、警察官らが暴行を加えたという。(共同)


■村人を騙した「署名活動」

共同通信が短いニュースで報じているが、中国政府によるダライ・ラマ法王及びチベット亡命政府のロブサン・センゲ首相を批判する署名の強要が問題となっている。一部地域では大規模な抗議デモに発展したケースもある。

署名キャンペーンは2ヶ月ほど前から始まったようだ。場所はチベット・カム地方カンゼ州(四川省カンゼ・西蔵族自治州)のリタン県及びナクチェ県の一部。現地と連絡を取った亡命議会のアトゥック・ツェテン議員が、センゲ首相の父親の出身地であるリタン県モラ村の状況を詳しく報告している。


■モラ村の状況

モラ村では2ヶ月ほど前から、政府関係者が家々をまわっている。「冬虫夏草に関する争いをなくすための署名だ」と嘘を付き、書面の内容をよく説明することなく署名を迫っているという。
(冬虫夏草とは蛾の幼虫に寄生する菌類の一種。冬は虫の姿で夏には菌糸を草のように延ばすことから冬虫夏草と呼ばれる。漢方薬の原料として高額で取引されるが、その採集をめぐって利権争いなどの問題も報告されている。)

字も読めない村人の中にはこれに署名するものもいたが、最近になって「ダライ・ラマ法王とセンゲ首相を非難するものだ。署名してはいけない」という話が広まった。2人の村人が署名したことが判明し、2人は他の村人たちから「お前たちは村八分だ」と非難された。2人は「冬虫夏草に関する書面だと聞かされていただけで、本当の内容を知らなかっただけだ」と弁解し、謝罪の印に500元を払ったという。

この書面は7項目を含んでいるというが、このうち最初の3項目だけが伝えられている。

1)亡命政府首相センゲが約束する、ダライのチベット帰還に反対する。
2)焼身抗議など、現在のチベットの緊張状態はダライが画策したものである。
3)ダライ一味を非難する。

ツェテン氏によれば、このキャンペーンはリタン一帯で広く行われているという。これに対し地域のチベット人たちは全面的に拒否の姿勢を見せており、各地で拘束者が出ているという。


■武装警官隊による署名強要

今月半ば、リタンの政府関係者が300人以上の武装警官隊を伴いモラ村に現れ集会を開いた。「この7項目の書面に署名し、分裂主義者ダライを非難し、ダライがチベットに帰ることに反対すべきだ。問題があるなら何でも言うがよい」と演説した。

会場は静まりかえり誰も発言するものはいなかった。政府関係者は不機嫌となり、ある老人を指差し意見を述べるよう迫った。その老人は「死ぬ前にインドに行ってダライ・ラマ法王に一度でもお会いしたいと願い、何度もパスポートを申請しているが、まったく手に入れることができなくて悲しい」と答えた。もう1人の老人は「かつて兄弟2人が中国軍によって殺された。これが私の人生でもっとも苦しかった経験だ」と答えた。

これを聞いて政府関係者は「お前たち、そんな口をきいてたらただではすまないぞ!」と怒鳴った。これに対し集まっていたチベット人たちは「署名などするもんか!」と声を上げた。これを見て部隊が参加者に襲いかかり、署名を強要した。署名しないものは暴力を受け、中には髪を切られるものもいたという。

さらに、「役人たちは署名を強要するために文革時代そのままのようなやり方を行った。署名しないものたちは村人同士で非難し合うことを強要され、家族が呼ばれ、公衆の面前で家族同士で非難し合い、署名しないものを殴らせた」とツェテンは報告する。

現在もこの署名強要は続けられており、モラ村一帯は非常に緊張した状況だという。センゲ首相の血縁者も残っているであろうこの村が、特に当局の標的となったということも考えられる。


■他地域の現状

リタンのシャクパという地区でもこの署名キャンペーンが行われたとき、住民は署名を拒み、衝突に発展した。約60人が拘束されたという。また、無期懲役を言い渡されているテンジン・デレック・リンポチェの僧院や付近の村でもこの署名キャンペーンが行われたが、僧侶や住民はこれに強く反対し、緊張が高まっているという。

もう1人の報告者、南インドバイラコピ在住チベット民主連合会長セルメ・ロガ氏が明らかにするところによれば、この署名キェンペーンはリタン県以外に東隣のナクチュ県にも及んでいるという。

彼が知る限り、リタンとナクチュの、少なくとも8つの地区と僧院でキャンペーンが実施されている。多くの地区ではおそらく全3ページの書面のうち、「3)」書かれた書面だけを見せられ、署名を強要されている。1枚目と2枚目にはダライとセンゲ(首相)を支持しないとの文面が記載されているもようだ。

リタン県ではモラ郷、シャクパ、リタンティル、サンチュ僧院とラルカ地区で行われ、最近ラルカでは署名を拒否した若者20人が拘束され、多くのチベット人が部隊により暴力を受けた。その他、リンカド地区、リタン・ユンル地区にもキャンペーン隊が入っているが、どこでも住民たちは全員が署名を拒否しているという。

ナクチュ県のアトック僧院と周辺の村にもキャンペーン隊が入り署名を強要している。彼によれば、署名拒否や部隊との衝突により、すでに合わせて200人ほどが拘束され、多くのチベット人が負傷したという。

参照:
24日付Tibet Express チベット語版、25日付RFA英語版、26日付RFAチベット語版、26日付phayul、27日付Tibet Timesチベット語版

関連エントリー:
リタンで愛国再教育に抗議 60人逮捕」チベットNOW@ルンタ、2012年4月17日 

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