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国有企業の配当改革を約束した中国=第4回米中戦略・経済対話を読む

2012年05月07日

2012年5月3日、4日の2日間、北京市で米中戦略・経済対話が開催された。プレス・コミュニケを眺めていると、内政干渉合戦(?)が目についたのでご紹介したい。


Kung-Fu 美国佬
Kung-Fu 美国佬 / Renato Ganoza

■米中戦略・経済対話

当初は自分のお勉強も兼ねて、第4回米中戦略・経済対話の各社報道をまとめようかと思ったのだが、ざっと眺めたところでいまいち興味が引かれなかったので断念。

「米中対話、北京で開幕 クリントン長官、人権保護求める」(朝日新聞デジタル、2012年5月3日)
「人民元改革・貿易不均衡が焦点 米中対話始まる」(朝日新聞デジタル、2012年5月3日)
「胡錦濤主席:中米は新たな大国間関係の発展に努力すべき」(朝日新聞デジタル、2012年5月4日)
「米から中国への輸出促進で合意 2国間の戦略対話終了」(朝日新聞デジタル、2012年5月5日)


■内政干渉合戦(?)

代わりにプレス・コミュニケを眺めて見たのだが、「マクロ経済協力の強化」という項目で、米中両国の内政干渉合戦(?)というか、今後の国内政策を相手国に約束するという部分にちょっと興味がひかれたのでご紹介。

米国のお約束

米国は経済成長モデルの転換に引き続き力を注ぎ、投資と輸出水準の増加に努める。中期的には貯蓄率を過去30年(1980~2010年)の平均水準にまで高める。

オバマ大統領制定の2013年度予算によれば、米国は今後10年以内に財政赤字を最低でも5兆ドル削減する。これには昨年から始まった1兆ドル以上の可処分支出及び社会福祉改革などその他予算の削減が含まれている。

また高所得納税者からの税収向上、税率低下、税制の穴をふさぎ税的支出を削減することを含めた税収改革、厳格な予算ルールに基づく(予算の)予見性と信頼性の向上に努める。

これにより米国は2010年代中期より経済に占める連邦政府債務の比率を次第に引き下げることになる。 


中国のお約束

中国は経済発展方式の転換に力を注ぎ、民生を改善し、内需を積極的に拡大し、また消費の拡大を内需拡大の戦略的重点とする。

これらの目標を適切に推進するべく、中国は構造的減税政策に注ぐ力を強化することになる。中国は2012年末までに一部の人民生活と密接に関連する生活用品の輸入関税を引き下げる。

中国は営業税の拡大、増値税の抜本改革の試行地域を拡大し、増値税改革の範囲をすべてのサービス業と地域に次第に拡大することを実現、重複的な徴税を解消しサービス業の急速な成長を推進する。

また中国は国有企業の利益上納比率を着実に高めていき、利益を上納する中央国有企業、省級国有企業の数を増やしていく。さらに国有資本経営予算を国家予算制度に組み込み、国有資本収益の徴収制度の整備を進める。

中国側は国有上場企業を含むすべての上場企業が配当支払いを増やすことを奨励する。また、中国が国有上場企業の平均配当水準の向上を奨励し、(中国国内の)その他上場企業の市場平均配当水準と一致させる。


■「国家資本主義」批判

上記のお約束は「米国は財政赤字を減らし、中国は内需を拡大することで、世界経済危機に協力して立ち向かう」という文脈で出てきているものだが、すでに発表されている財政赤字削減策を盛り込んだだけの米国と異なり、中国はさらに踏み込んだ国内経済改革を公表している。中国メディアの米中戦略・経済対話報道でも最大の焦点は、国有企業の分配率上昇だとして報じられている。

また朝日新聞デジタルの報道によると、米国は「中国の政府系銀行が輸出企業に有利な貸し付けをしていることを「実質的な輸出の補助金だ」と非難」。中国も「中国の輸出企業が政府系金融機関から低利の融資を受けている状況を見直す」ことで合意したという(プレス・コミュニケのどこに該当するのかよくわからなかったが……。本当に盛り込まれたのかな?)。

「世界の工場」から「世界の市場」へ、そして「世界的なプレーヤー」へと中国が立場を変える中で、「国家資本主義」批判が高まりつつある。政府によって保護された中国企業が存在感を高め、自由主義国の企業を圧倒するのではないかとの懸念が広がっているわけだが、国有企業の分配率改革や輸出企業への政府融資に対する批判は、まさに「国家資本主義」抑制を求めたものと言えるのではないか。

直前に起きた陳光誠事件もあり、ついつい人権問題ばかりに目をとらわれがちだが、やはり中国絡みで最大の国際問題は経済だろう。上記で取り上げた問題のみならず、証券会社の持ち株比率など金融分野の緩和などで、米中戦略・経済対話は着実な成果をあげている。

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