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【まとめ】ようやく決着したアリババVSヤフーの株買い戻し問題=中国政府系金融機関が大量出資か

2012年05月26日

2012年5月21日、中国EC最大手アリババグループと米ヤフーは、ヤフーが保有するアリババ株の売買契約にサインした。両者にとって懸案だったアリババ株の行方がようやく一段落を迎えた。


20120526_中国
*画像はアリババグループのネットショッピングモール・タオバオ。

日経、ロイターなど各社報道で、発表内容に微妙な差異があるように思われるのだが、主に財新網を参照した。


■ヤフーとアリババの関係悪化

ヤフーがアリババ株を入手したのは2005年8月のこと。現金6億4000万ドル、ヤフー中国、そしてソフトバンクから3億6000万ドルで取得したタオバオ株と交換に、ヤフーはアリババの普通株40%を入手した。しかしヤフーの低迷とともに、アリババにとっては協業関係にあるメリットが薄れたばかりか、ヤフー保有株が他社に売却されるというリスクに悩まされるようになった。ヤフー側にとってもアリババ株は最大の資産であり、株主からはその活用(=有利な現金化)を迫られていた。

両者の関係が一気に険悪化したのが昨年6月の支付宝(アリペイ)問題だった。

ヤフーは変動持分事業体(VIE)構造という手法を用いてアリババに出資している。簡単に説明すると、ヤフーが直接出資しているのはケイマン諸島の企業でしかない。同社は中国企業アリババと契約を交わすことで実質的な権利を獲得するという手法だ。外資の出資制限など中国国内の法規制を回避する裏技として、中国企業ではよく使われている手法だ。

アリババは旗下のネット決済サービス・支付宝の業務認可を獲得する必要があったが、認可の条件として外資の独占業務委託(VIE)から外す必要があった(とアリババの創業者ジャック・マーは発言している)。結局、支付宝はアリババグループからジャック・マーの個人会社に所有権が移転されたのだが、ヤフー、そして同じく大株主のソフトバンクの許可を得ていなかったとして、アリババとヤフー、ソフトバンクは激しく対立していた。


■アリババ株の値付けは適当だったのか?

かくして外資の大株主を排除したいアリババと株式資産を現金化したいヤフーとの意向は一致したのだが、売買交渉は難航していた。一時はアリババとソフトバンクが組んでヤフーを買収するという話が広まるなど、カオスな噂が飛び交う展開となっていた。

難航した第一の理由は値付け。未上場のアリババグループの価値をいくらに見積もるかという問題だ。今回は355億ドルと評価し、その20%分として70億ドルが支払われることになった。シティバンクやメリルリンチなどの評価額には一致しているが、「安すぎる」という声もあるという。2011年、アリババの総収入は23億4000万ドルを記録した。比較対象として中国検索最大手・百度を見ると、総収入は22億7000万ドルと下回るが、その時価総額は500億ドルを超えている(2011年決算前の時点。現在は427億ドルにまで減少)。ヤフーが慌ててたたき売ったのか、それともいいタイミングで合意したのかは将来をみなければわからないが。

第二の問題は税金を払わずに現金化する道をヤフーが探ったためだった。子会社を設立し、そこにアリババが出資。その子会社の株式とヤフーが保有するアリババ株を交換する「キャッシュリッチ・スピリットオフ」と呼ばれる手法が使われると報じられていた時期もあったが、結局は断念することになった。71億ドルで売却しても、うち38%は税金として巻き上げられてしまうことになる。


■「外資が大株主のアリババ」から「政府に頭が上がらないアリババ」になる?

さて長い交渉を経てようやくまとまった今回の協議だが、まだ終わったわけではない。アリババ側は63億ドルをどうにか集めなければいけないのだ。中国内外の金融機関と交渉を続けているが、ちょっと興味深いニュースもある。

それは中国の政府系ファンド・中国投資有限責任公司(CIC)が出資する可能性があると伝えられていること(ロイター)。同じく政治色の強い中国国家開発銀行からも資金を調達しているので、いまさらCICの金を受け入れようがたいした問題ではないのかもしれないが、「日米企業に株式を抑えられた中国最強EC企業」から「中国政府に頭の上がらない中国最強EC企業」へのジョブチェンジは、将来また別の問題につながるのでは……と気になってしまうのだが。

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