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チベット・プロパガンダ番組はなぜ中国国内で放映されなかったのか?―チベット人作家(tonbani)

2012年06月15日

■ウーセル・ブログ「チベット人焼身に関するCCTVの釈明」/中国側発表貴重ビデオ付き■

*本記事はブログ「チベットNOW@ルンタ」の2012年6月14日記事を許可を得て転載したものです。


20120615_写真_チベット_焼身抗議
*画像はCCTV特番の1シーン。

チベット人作家・ウーセルさんはCCTV(中国中央電視台)のチベット人焼身抗議特番に関するブログエントリーを発表した。ダライ・ラマと亡命政府を批判するプロパガンダ番組であることは明らかだが、一方で未公開の映像も多く貴重な資料でもある。


チベット人焼身に関するCCTVの釈明
ウーセル・ブログ、2012年5月9日
訳:雲南太郎
小見出し:Chinanews 


■CCTV制作番組が中国国内では見られないという不思議

CCTV(中国中央電視台)は5月7日、チベット人焼身抗議に関する中国語版と英語版の特集番組を放送した。

そのやり口は「神秘的」とも言えるだろう。中国官製メディアが当局の代弁者としてチベット人焼身を描いた、41分の番組は深夜2時過ぎに放送されたのだ。あるネットの友人は「真夜中に放送する……つまり一般の国民には見せないということか」と疑問を投げかけている。

翌日、CCTVは海外向けチャンネルでも、フランス語とスペイン語、アラビア語、ロシア語で同番組を放送した。しかし海外向けチャンネルは中国本土では受信できないため、中国国内には番組を見られた人はほとんどいないと言っていい。

またCCTVのネットテレビである中国インターネット電視台はこの番組を流していない。だが放映から3日後となる10日、YouTubeに中国語版と英語版の番組がアップされた。画面にはCCTVのロゴが入っていないことから、録画ではなく放送前の動画データをCCTVが自らアップしたものと思われる。ただしよく知られているとおり、中国ではYouTubeへの接続は遮断されている。またこの番組は現時点では中国国内の動画サイトに転載されていない。


■チベット焼身事件はプロパガンダ最前線

ここから分かるのは、同番組が対外的なプロパガンダでああるということ。中国語版も主に国外の華人に向けられたものということだ。チベット研究者のエリオット・スパーリングは「チベット人の焼身事件は対外的なプロパガンダの戦線になっている」と話す。中国政府は2009年以降、焼身による決然とした抗議の増加を目の当たりにし、自分たちにとって有利でメンツが立つ釈明を世界に聞かせる必要があった。「ダライ集団と焼身暴力事件」という事実をねじ曲げた番組名から、この事はすぐに見て取れる。

CCTVは現時点で、中国国内の視聴者向けにはこの特番を放送していない。2008年春にチベット全土で抗議が爆発した後、CCTVはすぐに「ラサ略奪焼き討ち暴力事件の記録」という番組を製作した。5月の連休に合わせて、おごそかに放送・再放送し、DVDまで発売した。民族工作に従事していた定年した公務員の言葉を借りれば、この強大なプロパガンダ攻勢の生み出した効果は次のようなものだ。「まだ修復できた民族間の亀裂を徹底的に広げた。覆水盆に返らず、だ」

では、深い策略を持つ当局はどんな考えからチベット人焼身抗議の特番を国外で放送し、国内では放送しないのか?漢人を中心とする中国人がチベット情勢をより理解し、「現在はチベット族人民の歴史でこれまでにない発展と幸福の時期だ」という当局の宣伝に疑念を持たれないようにするためだろうか?


■国内で放送しなかった理由

これは理由の一つに違いない。しかしより大きな理由は、チベットに暮らす数百万人のチベット人、そして同様に当局から恐れられているウイグル人やモンゴル人などの民族を刺激することを心配したからに違いない。この特番はチベット人の焼身抗議者13人を取り上げただけだが、焼身抗議の映像と写真が初めて公にされ、焼身するチベット人の巨大な勇気を見せつけた。一方、CCTVのさまざまな釈明は穴だらけで、ただあざ笑われただけだった。

アムド地方のサンチュ(現在の甘粛省甘南チベット族自治州夏河県)から届いた情報によれば、「ダライ分裂集団」がチベット人の焼身抗議を計画しており、焼身者全員の人格に問題があったとするプロパガンダ番組が今年2月上旬に現地で放送されていた。僧院や村、学校から代表を出し、番組を鑑賞し、(焼身を)批判するよう現地の役人が求めたが、観衆の反発は大きかったという。

実際、アムドは焼身抗議者の最も多いエリアで、31人に達している。番組の放送後、2月に6人、3月に11人、4月に2人が焼身抗議した。5月には、3人の子どもを持つ母親を含む3人のチベット人が焼身抗議している。このうち2人の焼身抗議はラサで起きた。最も重要な仏教の大祭サカダワの6日目のことだ。ラサで働いていたアムドの青年2人が、神聖なジョカンと圧迫を職務とするバルコル派出所の間で焼身抗議した。

サンチュなどを対象にしたプロパガンダ番組はテスト放送だった可能性がある。多くの場面が共通していたというから、CCTVの外国向けプロパガンダ番組のひな形だったはずだ。だが、CCTVの番組はネット仲間にこう論評されていた。「40分のCCTVプロパガンダ番組を見終わった。音声を消せば反政府ニュース番組に変わると思った。こんな諸刃の剣のプロパガンダ番組をつくった目的が分からない」。この番組を製作した目的ははっきりしている。その釈明がでたらめで卑劣だと証明するためだ。

2012年5月31日
(RFA特約評論)


英語版








中国語版

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*本記事はブログ「チベットNOW@ルンタ」の2012年6月14日記事を許可を得て転載したものです。 

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