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米国産牛肉は「毒牛」か?輸入解禁問題で議会が麻痺―台湾

2012年06月18日

2012年6月、米国産牛肉の輸入をめぐって台湾議会が麻痺している。


■熱すぎる台湾政治

6月11日から野党・民進党が立法院(国会に相当)を占拠している。同党の議員40人は交替で籠城に参加。議長席を占拠し議場の扉を封鎖し続けた。立法委員の皆様はTシャツに運動、さらに女性議員は髪をしばって、ケンカでもはじめようかという勇ましいスタイルで徹底抗戦をアピールしている。

中には寝袋まで持ち込み、占拠というかまさに「寝るのが仕事」を実行している議員までいるという。

20120619_写真_台湾
Nownewsの報道

熱さが売りの台湾政治は乱闘事件などたびたび世界のメディアに三面記事を提供してくれているが、今回の寝袋もまた新たなエピソードに加わったようだ(AFP)。


■安全な痩肉精をどう扱うか?

与野党衝突の焦点となっているのが米国産牛肉の輸入解禁問題だ。 5年間にわたり中断している米台貿易投資枠組協定(TIFA)の交渉再開、その先にある米台自由貿易協定(FTA)、環太平洋経済連携協定(TPP)参加に向けて、馬英九政権にとってはどうしてもクリアしなければならない課題だ。

だが台湾ではいまだに米国産牛肉の安全性に疑問を持つ人が多い。問題となっているのは塩酸ラクトパミン。飼料に添加するだけで赤身肉が増える薬品だが、中国でたびたび被害をもたらしてきた塩酸クレンブテロールとよく似た物質。ちなみに両者はともに「痩肉精」と呼ばれ、中国本土では家畜への使用を禁止されている。中国本土のニュースと接する機会が多い台湾で反発が広がり、「美牛(米国牛)ならぬ毒牛だ」と反発が広がるのもわからないでもない。

ちなみに塩酸クレンブテロールと異なり、塩酸ラクトパミンは危険性が低く米国、カナダ、メキシコ、インドネシアで牛飼料への添加が認められている。日本でも塩酸ラクトパミンを摂取した牛肉の輸入が認められている。台湾も日本と同様、輸入向けの暫定基準値は設けるが国内での使用は解禁しない方向で話が進んでいる。


■印象リードの反対論

今年1月の選挙で見事に勝利を飾った馬英九総統だが、嫌われる政策は今がチャンスということなのか、米国産牛肉の輸入解禁に加え、ガソリン・電力価格引き上げ、証券所得税改訂と物議を醸す政策を連発している。民進党寄りの自由時報によると、世論調査では68.9%が「馬英九は民心を失った」と回答している。一方で国民党寄りのメディアは民進党の抵抗戦術は台湾の民主主義を空転させた、台湾の恥を世界に晒したと手厳しい。

今回の牛肉問題が外から眺めていて今一つ分かりづらいのは、農業保護を訴える立場は別として、塩酸ラクトパミンの安全性そのものがあまり争われていない点だ。米国や日本はばりばり食べているわけで、「将来なんらかの問題が起きる可能性があるやも……」というぼんやりとした不安以上のものが示せないため。民進党も7月のコーデックス委員会の決議を待つべき、馬英九政権は説明を尽くしていないという批判をメインとしている。

つまり「なんか危ない」という印象中心の反対論が広がっている状況で、安全リスクに対する議論は深まっていない。遺伝子組み換え作物をめぐる日本の状況に近い印象だ。議会空転が続く台湾だが、20日も臨時議会を開催。米国産牛肉の輸入解禁を決定する公算が高まっている。

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