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自警団の暴行と出稼ぎ労働者の暴動=政府の仲裁機能が失われつつある中国

2012年07月02日

2012年6月25日、広東省中山氏沙警鎮で、現地住民と外地人による暴動事件が起きた。香港メディアは数千人が参加し死傷者も出たと報じたが、現地当局は否定している。


■ネットの噂と当局発表

中国・広東省で労働者と当局が衝突
朝日新聞デジタル、2012年6月28日

中国広東省の中山市で25、26の両日、出稼ぎ労働者数千人が治安当局と衝突し、双方に数十人のけが人が出た。
 香港紙によると、同市沙渓鎮で25日、地元の少年ともめた重慶市出身の少年が治安当局者に捕まり、殴られたことが発端。少年の親や同郷の出稼ぎ労働者らが役場を取り囲み、石やビール瓶を投げ、警察車両や建物を壊した。26日も治安部隊とのにらみ合いが続いた。

出稼ぎ住民の暴動沈静 中国広東省中山市
日本経済新聞、2012年6月29日

中国広東省中山市政府は29日、25日に始まった出稼ぎ住民の暴動について記者会見を開き、発生地となった同市沙渓鎮の趙錫雄・共産党委員会副書記が「すでに平穏な状態を取り戻した」と述べた。「死者と重傷者はいない」とも語った。投石や車両をひっくり返すなどの暴動は27日夜まで続き、26日夜には破壊行為の中心となった20人を拘束したという。

ウェブの噂&香港紙報道の数万人暴動と当局発表の300人暴動の間で大きな食い違いがあるが、現地取材した日経がやたらと冷静に書いているあたり、当初言われていたほどの騒ぎではなかったようだ。


■中国史好きにはたまらない自警団

個人的に興味を持ったのは2012年6月27日付財新網が報じている目撃者の証言だ。

まず当局発表では少年を取り押さえたのは治安巡防隊(警察を補佐する組織)となっているが、証言では治保会(自警団)となっている件だ。どちらも仕事内容は大差ないが、治保会は村や社区(団地)など基層自治体に属しているという点で異なる。

事件が起きた沙渓鎮龍山村は中山市西郊外に位置する。グーグルマップで見ると一目瞭然だが、農地よりも住宅や工場が多い。もともとの住民よりも出稼ぎ労働者のほうが多いという。広東省など都市が拡大し出稼ぎ労働者が多い地域では、郊外の村が工場や出稼ぎ労働者に土地を貸しだし、住民が土地の権利だけで相当の収入を得ているというケースも少なくない。その利益を村トップがネコババすると烏坎村のような問題になるのだが……。

閑話休題。財新網掲載の証言によると、一昨年にも龍山村治保会が自転車修理の露店を営む四川人を殴る事件があったという。その時も四川人が集まって村民委員会を取り囲んだという。

ブログ「中国ジャスミン革命」が沙渓鎮象角村自衛隊の写真をアップしている。隊員たちは手に赤いリボンを巻き、巨大な刀などゲームにでも出てきそうな凶悪武器で武装しているという。ネットで流れたネタだけに慎重に扱う必要があるとはいえ、前近代の団練、大刀会を思わせる姿に中国史好きならば興奮する写真だ。

20120702_写真_中国_自警団_1

20120702_写真_中国_自警団_2


■お上の仲裁に対する不信感と民間の暴力

2009年に広東省韶関市玩具工場で起きたウイグル人と漢人の衝突、2011年の広東省潮州市及び広州市の出稼ぎ労働者と現地人の対立など、広東省では在来住民と外地人との対立が目立っている。

問題はたんに事件が繰り返されていることではない。出稼ぎ労働者は同郷会と呼ばれる出身地を軸とした結社を組織。普段は出稼ぎ労働者から保護費を毎月召し上げているが、一朝事あったあかつきには「打手」と呼ばれる暴力要員が動員される。今回の事件でも数万人が集まったとの噂が一定の信憑性を持って受け止められたのは、出稼ぎ労働者の抗議ネットワークの存在がよく知られているためだろう。

一方で現地住民たちも自警団を作り、対抗する暴力を備えている。

出稼ぎ労働者と現地住民の双方に共通しているのは、お上の仲裁に対する不信感だ。警察・司法の手を借りるのではなく、民間の暴力の必要性がますます高まっているように思われる。今回の沙渓鎮の事件に関して、格差の拡大や差別、出稼ぎ労働者に対する不公正な待遇を背景として説明している記事もあったが、お上の仲裁が機能不全に陥っていることが根本的な問題ではないか。

なにかの問題が生じた時、いつ暴力という非常手段が動員されるか分からない状況に怯える社会というのは、精神的にも金銭的にもコストが高そうな社会ではないだろうか。

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