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「明日から自動車販売禁止」突然すぎる広州の規制とその背景―中国

2012年07月11日

2012年6月30日、広東省広州市は突然、乗用車購入規制案を発表した。翌日施行という慌ただしさで広州市の自動車ディーラーには駆け込み需要の客が殺到したという。


深圳白石洲_堵车_01
深圳白石洲_堵车_01 / 刘云天

■突発的購入制限政策

マイカー時代に突入した中国では渋滞が深刻な社会問題となっている。上海市では1994年からナンバープレート競売制度を導入。「世界一高額な鉄片」と呼ばれるほどの高値がついている。北京市では2010年に抽選制度を導入したが、当選しなかった人は次回以降に回されるため、順番待ちの人がえんえん積み上がっていくことに。(「中国4都市の自動車購入制限策を比較」中国証券網―朝日新聞デジタル、2012年7月4日)

広州市も今回、購入制限を導入することとなったが、6月30日の発表時点では細則が明かされないというお粗末さ。今年7月は実質、自動車販売禁止月間となった。10日になってようやく細則が発表されたが、北京と上海の折衷案。年間12万台の割当制限のうち、50%は競売で、50%は抽選でという方式になる。ただし中古自動車の扱いについてはまだ細則が決まっていないとのことで、まだまだ混乱が続いているようだ(財新網)。


■自動車をめぐる中国と地方の駆け引き

自動車業界の人が憤死しそうな、この突然の制限策。渋滞緩和、排気ガス対策が目的とされている。が、本当の狙いは別にある!と説くフィナンシャルタイムズ中国語版のコラムが面白かったのでご紹介したい。


中国の自動車関連税は世界最高水準であるが、地方政府の収益はほとんどが自動車メーカーによるもの。消費税、車両購置税、石油製品消費税などはいずれも国の税収であり、地方には落ちてこない。中国財政部の統計によると、2011年の車両購置税は前年比14.1%増の2044億元に達した。全税収の2.3%に相当する。自動車消費税は10.2%、石油製品消費税は6.4%の税収増といずれも大きく伸びた。

自動車関連の税金はお国に召し上げられてしまうにもかかわらず、道路や駐車場の建設、大気汚染対策などは地方政府が解決しなければならない問題だ。巨大なインフラ建設ニーズは地方政府にとって耐えがたい重荷となっている。広州市は第12期5カ年計画(2011~2015年)期間に3175億元を交通インフラ整備に投下する予定だ。

自動車消費の急成長は、国にとっては膨大な税収をもたらすタネだが、地方政府にとっては財政を飲み込む大穴でしかない。これは中国の税制における深い矛盾であり、地方政府自身では解決できな問題だ。自動車消費制限やナンバープレート競売制によって自分たちの収入を増やすことは地方政府の切実な要求になっている。

地方政府にとって自動車は迷惑、というのは言い過ぎじゃないかと思われるものの、税制が自動車普及に関する地方政府のモチベーションに影響しているという指摘は面白い。

朱鎔基の分税制改革によって税収の多くは中央政府が分捕ることとなった。地方政府は独自のプロジェクトを推進するために土地を担保に金を借りる土地融資プラットフォームを設立したが、これが隠れた地方債務の急増をもたらしてしまう。現在も中国政府は地方政府の「使いすぎ」に目を光らしており、地方自治体の独自起債を認めていない。

こうした中央と地方の対立は、たんに金額ベースの話だけではない。地方がより積極的に経済を回した見返りが得られるようにすることによって、地方政府のモチベーションを引き出し望ましい方向性にベクトルを向けるという構造的な改革も求められているのではないか。

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