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「沖縄は日本の領土ではない」「中国に剣を抜かせるな」中国タカ派論文の書き方教えます

2012年07月30日

「沖縄は日本の領土ではない」「ベトナムよ、中国に剣を抜かせるな」「よし、ならば戦争だ」となにかと威勢のいい中国「タカ派」メディア、言説。騰訊網の特集コーナー・今日話題がその特徴をまとめている。マスターすれば、今日からでも「中国タカ派コラムニスト」になれること間違いなし、だ。


DDH-181 Hyuuga / 護衛艦ひゅうが (by CX1)
DDH-181 Hyuuga / 護衛艦ひゅうが (by CX1) / woinary

先日の記事「「琉球は中国の藩属国、沖縄人は独立を熱望」中国軍高官の愛国論文は盗作でした」でも、今日話題の記事「少将が「琉球は中国に属する」と放言=その背景とは」を取り上げたが、前回記事で紹介していない部分も秀逸だ。

中国「タカ派」言説のお決まりパターン


まずは不安から:日米はいつも新たな陰謀を画策、中国はいつも包囲されている

ベテラン・メディア人の黄章普はかつて環球地面の一面の内容は「日米はいつも新たな陰謀を企てている。台湾独立分子にまたも新たな動き」に概括できると述べている。実際のところ、「タカ派軍事戦略家」「国際問題専門家」「国際・軍事系メディア」がもっともよく使う言葉は「連携して中国を牽制」「中国を包囲」「中国は包囲網に囲まれた」などのお決まりのパターンだ。金一南少将、羅援少将、朱成虎少将、戴旭大佐の記事も、こうした単語の出現頻度上昇に貢献している。

こうしたムードは海外メディアの中国語版にまで影響している。2011年6月21日、日本の著名通信社・共同通信の中国語版は「日美公布共同战略目标 明确指出将联手牵制中国」(日米が共同戦略目標を公布=協力して中国を牽制と明確に指摘」を掲載した。このニュースは中国の各サイトに転載され話題となったが、実は日米の「共同戦略目標」には「協力して中国を牽制」に相当する個所はない。また共同通信の英語版と日本語版にも対応する語句はない。
(「日米共同戦略目標に「対中国」が明記された、と中国で話題になったもの。今日話題も昨年、この話題を取り上げ、共同通信中国版によるデマだと批判している。もっとも私の見るところデマというよりは誤訳だろう。本文では「声明虽然并没有点名敦促对象,但明显展示出牵制中国军力扩张,联手对抗中国的姿态」(共同声明では個別の対象こそ名指しされてはいないが、中国の軍事力拡張を牽制し、共同で中国に対抗する姿勢を明らかに示している)となっている。タイトルを付ける時に「明显展示出」(明らかに示している)ではなく、「明确指出」(明確に指摘)と書いたため、目標に対中国と明記されたのだ、と誤解が広がったのだろう。翻訳怖い。)


続いて激高:世界は中国の強大さに驚いた、堪忍袋の緒が切れた、今こそ剣を抜く時だ

(1)恐れない
(タカ派が描く包囲された中国という)険悪な国際環境にどう対応するべきか。まず言うのは「恐れない」という言葉。羅援少将の言葉を紹介しよう。

我々はどの国であっても敵とすることを望まない。だが、我々の厳正な立場、我が国の核心的利益を無視し、独善的に行動し、(我が国を)虐げるのであれば、我々は絶対に(戦いを)恐れることはない。国家、軍隊にはプライドが必要だ。「相手が攻撃してこないのであれば、こちらも攻撃しない。」「相手が攻撃してくれば、こちらも攻撃する」、だ。中国人民と中国の軍隊にとって、この言葉は決して冗談ではない。

(2)俺たちは強い
続いて出てくる言葉は「我々は強い」。上述写真に掲載されているタイトル(「ひとたび日中が開戦すれば、中国は日本を滅ぼすのに1カ月もかからない」「釣魚島から見た日本の没落=解放軍が実際に攻撃する前に勝敗はもう決まっている」など)のパターンに加えて、「仰天文体」もある。「日本メディア驚愕=中国は日本の「領土化」をねらっている」「米国驚愕=中国の早期警戒機は驚くほどのレベルに」「フィリピンメディア驚愕=中国の軍艦がやってきた」「米国議員驚愕=中国の潜水艦建造ペースは中国の3倍」といった類だ。

(3)殴るぞ
そして最後は「武力を行使するぞ」という言葉。ただし相手が小国の場合に限定されるが。「ベトナムよ、中国を武力行使に追い込むことなかれ」「フィリピンよ、中国と戦おうというのか?身の程知らずめ」といった具合となる。

とまあ、こういう形で非常に定型化した「タカ派言説」が広がっている次第。もちろん新鮮味も必要で、「沖縄人の75%は独立を求めている」とか、「日本がミャンマーに経済支援、中国包囲網の完成目指す」といった、ウソでもいいから新たなファクトが求められている。

というわけで、一々反応するのもバカらしいぐらいオモシロ言説が量産されているわけだが、個人的に興味があるのは2点。第一にこうしたナショナリズム高揚ネタが「売れる」という点。中国の軍事娯楽メディア、タカ派娯楽メディアの台頭も、メディア全体の大衆化・娯楽化の中から生まれたものであり、きわめて商業的なニーズに支えられている。もっともこうしたオシャレ感に欠けた軍事・タカ派ネタの読者層は高齢化が危惧されている。

第二に人民解放軍の将官がなぜタカ派娯楽論文を書き散らかしているのか、という点だ。矢板明夫『習近平―共産中国最弱の帝王』によると、人民解放軍高官が表に出てきてタカ派発言をするようになったのは、2005年の朱成虎少将の「中国は米国との核戦争を恐れていない」「中国は西安以東の全都市が焦土になることを覚悟している」という発言以後のことだという。ちなみに朱少将も、「沖縄は日本の領土ではない」の羅少将もともに太子党だ。朱少将は朱徳元帥の孫、羅少将は羅青長・国務院副事務局長の息子だという。太子党の勢力拡大とみるべきなのか、それとも実権はないが階級が上がってしまった太子党軍人がヒマにまかせて放言しているのか。
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 コメント一覧 (2)

    • 1. 在日本中国人甲
    • 2012年08月03日 15:57
    • 中国は昔「タカ派」の言葉自体がなかった、ちなみに全員「タカ派」だからだ。今は、やっと少しずついろんな声が聞こえるようになって、「タカ派」と呼ばれるようになったってわけだ。
    • 2. Chinanews
    • 2012年08月03日 23:10
    • >在日本中国人甲さん
      今でも「鷹派」ってちょっと違和感ありますね。

      偉い人はともかく、興味あるのは一般人です。中国って軍事紙、軍事番組が結構人気ありますが、どういう人が主な消費者なんでしょう。軍事好きの人は高齢化している印象ありますけど、どうでしょう?

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