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立派なタテマエの裏側には「ともかく不動産作りたい」という本音=西安の人造湖計画と地方政府大躍進―中国

2012年09月05日

陝西省西安市。内陸部に位置する、乾燥したこの街が「水の都」に生まれ変わる計画が進んでいる。その目的は「マンションを高値で売る」ことにあるという。2012年9月4日、人民網が伝えた。



西湖
西湖 / ehnmark

■壮大すぎる人造湖計画

西安、すなわちかつての長安は今でこそ乾燥した街だが、かつては各所に湖のある街だったという。その威容を取り戻そうと西安市政府は再開発計画を進めている。運河を作り、水を引き、市内に28もの人造湖を作ろうというのだ。

そのうち最大のものとなる昆明池は10.4平方キロメートル。中国を代表する湖である杭州市の西湖の2倍という大きさだ。史書によると、かつての長安にも昆明池という人造湖が存在した。漢の武帝が水軍の訓練のために作らせたものだが、唐代末に消失している。1000年ごしに湖を復活させようという壮大な計画だ。

昆明池など28の湖すべての面積を合計すると30平方キロメートル超。西湖5個分に相当する。とほうもないビッグプロジェクトだが、計画がここまでふくれあがったのはごくごく最近だという。今年8月以前は市政府水利部局は「八水九湖」(8本の運河、9つの湖)計画と呼称していた。それが現在では「八水潤西安」計画となり、わずか1カ月の間に、新たに湖19個の建設が決まっている。計画立案に参加していた専門家が「計画拡張は新聞で知りました」と話すほどの突然の変更だったという。

新・昆明池にしても2011年末時点では4.5平方キロメートルと計画されていたのに、今年になってから省長の鶴の一声で計画倍増が決まったという。1000年前の昆明池も10平方キロあったという。だったら新しいものも同じ大きさで、という理由だという。


■人造湖計画の真の狙い

この壮大な人造湖計画、たんなるメンツだけのプロジェクトではない。湖や川に面したマンションは高値で売れる。人造湖建設を通じて周辺の地価をあげるという狙いが含まれているという。確かに中国のマンション販売広告を見ると、湖や川のほとりにあり、敷地内には青々と緑が茂っているという完成予想図が一般的。中国人の考える理想の住まいということなのだろう。もちろん「予想図は実際の完成品とは異なります」というのが常なのだが。

西安市には曲江池という湖があるが、これもかつて存在した湖を再現した人造湖。市中心部からは離れた位置にあるが、今では人気の区画となっており、地価も高値を付けているという。

最大の湖である昆明池にしても、周辺の農村再開発とレジャー施設建設がセットとなっている。「長安の威容を取り戻し、国際的大都市にふさわしい環境を整える」という名目で、農民の土地を収用し、マンションやレジャー施設を作って、市政府と不動産開発業者が大もうけ、というすばらしい算段なのだ。


■建て前と本音、地方政府の大型プロジェクト

先日、記事「北宋の古都再現に1兆円投資=景気対策の隙を突く地方政府の暴走的ぶちあげプロジェクト―中国」で、これまたかつての都である開封が「古代の街並み再現」を名目に、旧市街地の再開発をぶちあげていることをご紹介した。

「水の都復活」「古都再現」などなどもっともな名目をつけても、やりたいことは結局、不動産開発。今、各地の地方政府が大規模なプロジェクトをぶちあげている。その総額はなんと10兆元(約130兆円)を超えているという。その多くはこうしたもっともらしい言い訳がついた不動産開発プロジェクトだ。

不動産投資に依存した経済成長に対する風当たりが強くなっているが、景気が低迷する中、プロジェクトを認可する中央政府の手綱もゆるまっている。隙あらばばんばん開発したいと狙っている地方政府、今がチャンスともっともらしい名目をつけて、大計画をぶちあげているのが現状だ。

西安の新・昆明池は今年着工し、2020年の完成を目指しているという。それまで今の大開発モードは続くのだろうか。今がチャンスと大規模な開発が続けば、土地を追い出される人々が大量にでることになるが、その社会不満にはどう対応するのか。

習近平が10年政権を担当するとするならば、任期は2022年まで。この地方政府大躍進の後遺症はそれまでに確実に噴出することになるだろう。


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