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中国軍艦がベトナム漁船に発砲=尖閣対立の裏で深まる南シナ海問題

2013年03月27日

■中国軍艦がベトナム漁船に発砲=尖閣対立の裏で深まる南シナ海問題■
 

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iPhone camera / くーさん


昨秋以来、尖閣諸島問題にばかり注目が集まっていたが、その間、南シナ海問題も静かに対立が深まっていた。

■中国艦艇がベトナム漁船に発砲、中国国防部は捏造だと反論


ベトナム漁船に発砲 南シナ海 中国海軍
産経新聞、2013年3月26日

ベトナム政府は25日、南シナ海のパラセル(中国名・西沙)諸島周辺海域で、中国海軍の艦船がベトナム漁船1隻に発砲し、中国側に強く抗議したことを明らかにした。

ベトナム外務省によると、事件があったのは20日。中国海軍艦船は、漁船を約30分間にわたり追跡した後、警告なしに発砲した。

漁船は積んであった4つのガソリンタンクとともに炎上した。乗組員にけがはなかった。

今月に入りベトナム漁船が中国艦船に追跡されたケースは4件にのぼっているが、発砲を受けたのは今回が初めて。

警告なしで発砲とは、と驚かされたニュース。中国の勇ましい人たちはこのニュースに大喜びのようで、グーグルニュース中国語版をチェックすると、「中国がついに1発目を打った!強硬姿勢はここから始まる!」「中国の軍艦がベトナム漁船に発砲!日本ネット民がもらしやがった!」といったキワモノ・ブログが上位に表示された。そんなに人気ブログでもないようだが、私のキワモノ好きを知ってグーグル様がサジェストしてくれたのか、全知全能たるグーグル様がこりゃ面白い、上位表示や!とオススメしまくっているかは謎。

それはともかく、一部の勇ましい人たちが欣喜雀躍したこのニュースだが、中国国防部が「警笛、拡声器、手旗信号などで繰り返し警告。最後に信号弾を打ったが、空中で燃え尽きた。ベトナム当局が捏造したいわゆる“銃撃”事件はなんらかの意図を持つ下心あるもの」と反論。

中国海軍 「事件はねつ造」と反論
NHK NEWSWEB、2013年3月27日

中国国営の新華社通信は、当時の状況について中国海軍の責任者の話として、「中国の領海に侵入して操業していたベトナム漁船4隻に対し繰り返し領海から出るよう、要求を続けたが効果がなかった。そのため警告として、海軍の艦船が2発の信号弾を上空に向かって発射したが、いずれも空中で燃え尽きた」と伝えました。

そのうえで、この海軍の責任者は、「武器を使用しての射撃は行っていないし、ベトナムの漁船も火災は起きていない。ベトナム側が事件をねつ造している」としてベトナム側の主張に反論しており両国の間の対立はますます深まっています。

この時点ではどちらの主張が真実かは判断しがたいが、少なくとも言えるのは「後ろに米軍が見える尖閣では軍艦を表に出さない中国も、南シナ海では軍艦をばりばり表に立たせている」ということ。ベトナムやフィリピンをなめていることがはっきりとわかる。


■ジャイアニズムと反中感情の高まり

ここ数年、中国におけるジャイアニズムの台頭は、反中感情の高まりを引き起こしている。日本の反中感情の高まりもさることながら、それだけではない。レコードチャイナによると、ベトナムメディアが「中国産果物には、致死量を超える防腐剤や殺虫剤が含まれている」と連日報道。中国産果物の輸出量が激減しているという。

そしてベトナムと並んで南シナ海問題で中国と対立するフィリピンは、国連海洋法裁判所に仲裁を求めて提訴した。中国側は国際法廷での審議を拒否しているが、国際海洋法裁判所では当事国が出廷を拒んだ場合、別の担当者に代行させることが可能。25日、フィリピン外務省が明かしたところによると、同裁判所の柳井俊二裁判長はすでに中国側代表者としてポーランド国籍の裁判官を指名している。今後30日以内に審議する裁判官が選出され、中国、フィリピンの両者の主張を聞き取りした上で、どちらの主張が正当か判断が下されることになる(RFI中国語)。

また東南アジアの国防整備が活発化していることも注目される。「南シナ海の領土問題を巡る緊張などを背景に、シンガポールやベトナムで潜水艦の輸入や発注が相次ぐなど、東南アジア諸国の輸入が07年までの5年間より169%増えた」(毎日jp)。さらにフィリピンには日本がODAの一環として巡視艇を供与することも決まっている。




以前にも書いたが、中国は「ケンカ相手は1国まで」が外交原則。昨年10月には韓国海上警察が違法操業の中国漁民相手にゴム弾を発射。あたりどころが悪くて死亡する事件が起きたが、「今は反日で忙しいので」と中国メディアの報道も禁じられ、あっさり手打ちしている(関連記事)。

だが反日モードもこれほど長く続くと、他に支障をきたす。フィリピンの国際海洋法裁判所提訴など普通だったら国をあげてのフィリピン叩きキャンペーンが展開されそうな大ネタだが、やはり反日で忙しいのでそれどころではないという状況だ。

全人代が閉幕し政権交代が完了した今、中国は外交方針を変えやすいタイミングではある。反日をちょっぴり手仕舞いにしてフィリピン叩きにうつるか、という流れも考えられなくはない。だが、この手の日本、ベトナム、フィリピンとモグラ叩き的抗争をえんえん続けるのも辛いので、そろそろ長期的な安定を志向するべきではないか。

ぼんやりと反日モードがフェードアウトさせるのではなく、つまらない抗争が起きないような枠組みをつくって欲しい。さもなければ中国ハンマーが他の人を叩いているだけほっと一息をつけるものの、いつ自分の頭上に戻ってくるかわからないドキドキワクワクの世界が続くことになるだろう。

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 コメント一覧 (1)

    • 1. 日本人
    • 2013年10月08日 20:08
    • 中国は一度火傷しないと解らないのだろうか。

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