• お問い合わせ
  • RSSを購読
  • TwitterでFollow

突然解放された僧侶、拷問のため衰弱=罪状も理由もわからずに“行方不明”にされた僧侶作家(tonbani)

2013年04月23日

■僧侶が拷問後病院へ、その後家族の下へ/僧侶作家2人長期失踪■


■デモ参加の僧侶が家族の元に返されるも、激しく衰弱

2012年9月1日、ジェクンド州ティンドゥ県にあるシルカル僧院に突然、軍・警察が押し掛け、5人の僧侶を連行した(関連記事)。連行の理由が明かされなかったばかりか、懲役刑を受けた今も罪状は明らかになっていない。おそらく2012年2月8日のデモと関連しているのだろうと思われている。

この5人の1人、僧ソナム・イクネン(45)が1カ月ほど前に家族の元に戻ったことが明らかになった。ひどく衰弱しており、拷問が原因と見られている。2013年4月22日付ボイスオブチベット中国語版が伝えた。

ソナム・イクネンの量刑は懲役2年。月に1回許される面会のため、家族は3月に刑務所を訪れたが、ソナム・イクネンの量刑はそこにいなかった。刑務所側は居所を伝えなかった。その後、彼が西寧の病院に収容されているということが判明、家族が向かったが、面会は許されなかった。そして、最近突然彼は家族の下に送られたという。

彼の容態はよくないようだ。家族はこれからまた入院させるというが、回復したとしても、また刑務所に連れて行かれるではないかと心配されている。これほど衰弱するような持病はなく、拷問が原因のようだ。

中国には「保外就医」という制度がある。健康が悪化した場合、病院や自宅で治療を受けつつ刑期を過ごす制度だ。ただし回復後は刑務所に戻ることと定められている。本来ならば懲役囚の人権を考えた制度なのだろうが、チベットでは拷問によって衰弱した懲役囚を監獄外に放り出す制度になっている側面もあるようだ。

拷問により健康が悪化し、治療がひどく長引いたり、もはや助ける手立てがないと判断された場合に家族に身柄を返すというケースがあるようだ。実際に釈放されてしばらくした後に死亡したというケースが複数報告されている。


■僧侶作家ガルツェ・ジグメ
今年1月1日にアムド、レゴン県にあるガルツェ僧院内から僧侶作家として有名なガルツェ・ジグメ(འགར་རྩེ་འཇིགས་མེད་)が突然連行された。連行直前に出版した雑誌「王の勇気༼བཙན་པོའི་སྙིང་སྟོབས༽」第二部が原因ではないかと思われている。同作において、ガルツェ・ジグメは焼身、抗議デモ、ダライ・ラマ法王、チベット亡命政府、チベット人の権利、環境、少数民族と北京の関係等、チベットの現状についての報告を行っていた(関連記事)。彼は地区で作家、知識人のセミナーを開いたりもしており、影響力のある作家であった。

RFAチベット語版は彼が4ヶ月近く経った今も行方不明のままであると報告し、家族や友人が彼の安否を非常に心配していると伝える。


■僧侶作家ツァワ・ダニュク

僧侶作家といえば、カム地方チャムドのパシュ県出身の僧侶作家ツァワ・ダニュクは、2008年3月20日頃に突然僧院から消えた後、現在も行方不明のままだ。RFAが報告している。ツァワ・ダニュクは数冊の著書を出版しており、チベットの歴史や政治状況について伝えていた。


■チベットの人権

19日、アメリカは「2012年国別人権報告書」を発表した。チベットの人権状況についても詳しく報告され、「チベットの人権状況は2012年度急激に悪化した」としている。

「恣意的逮捕、拘束が増加しているのも問題だ。拘束令状と共に警察は法律上、最長37日間その容疑者を拘束できることになっている。その期間中に正式に逮捕するか、解放すべきである。また、警察は拘束の後24時間以内に容疑者の家族や雇い主に連絡すべき事になっている」と非難している。

中国当局は政治的嫌疑でチベット人を拘束した場合、家族にその事を知らせるということはまずない。それは、長期間に及び、1年以上も行方不明というケースも珍しくない。当局は家族や周辺の人々を不安に陥れ、精神的苦痛を与えるためにわざとやっているのである。

上記2人目のツァワ・ダニュクの場合は行方不明になりすでに5年経ったことになる。他にも2008年に失踪したまま、今も生死も分からぬチベット人が数多く存在するといわれている。


関連記事:
中国当局、チベット人政治犯を期限前に釈放=拷問で衰弱、獄中死を避ける目的か(tonbani)
若き僧侶が焼身抗議=米政府、人権擁護と調査団受け入れを要請―チベットNOW
「中国政府はマフィアのよう」リチャード・ギアが語るチベット支援の意味(tonbani)
中国政府、秘密裁判でチベット人僧侶に懲役2~10年の有罪判決=焼身扇動が罪状か(tonbani)
「人々は3代に渡り心に傷を負った」米議会におけるキルティ・リンポチェの証言―チベット(tonbani)
「チベットには自由がない。亡命しても自由がない」焼身未遂の若者の言葉を聞いた=チベット蜂起記念日のダラムサラにて(tonbani)

*本記事はブログ「チベットNOW@ルンタ」の2013年4月23日付記事を許可を得て転載したものです。

トップページへ

コメント欄を開く

ページのトップへ