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尖閣は核心的利益になったのか?外交部の混乱と中国的マジックワード

2013年04月29日

■尖閣は核心的利益になったのか?外交部の混乱と中国的マジックワード■
 


■一部中国者に話題の「中国、尖閣は「核心的利益」と初めて明言」問題とその後の混乱について

中国外交部公式サイトによると、26日の中国外交部記者会見で以下のようなやりとりがあった。

日本人記者:
デンプシー米統合参謀本部議長は先日、日本メディアの取材に答え、訪中した際に中国は何度も釣魚島の領土主権は中国の核心的利益の一つだと強調していたと発言しています。これは中国公式の立場でしょうか?

中国報道官:
中国国務院新聞弁公室が2011年9月に発表した「中国の平和的発展白書」が明確に示しているとおり、中国は断固として国家の核心的利益を擁護します。(その核心的利益には)国家主権、国家安全、領土の完全性などが含まれています。

釣魚島問題は中国の領土主権に関するものです。


これだけ見ると「ふーん」という感じだが、実は実際の問答は異なる内容で、「釣魚島問題は中国の領土主権の問題であり、当然中国の核心的利益に属する」と発言していた(毎日JP)。

尖閣を核心的利益と断言したというのは、絶対に譲歩できず武力行使も辞さないとの意味。日本メディアはビッグニュースだと各紙先を争って報道したが、外交部定例記者会見記録では穏当な表現に変えられており、肩すかしを喰らった格好となった。

果たして尖閣は中国の核心的利益となったのか。外交部報道官の発言を数時間後に発表された記録で書き換えた意図とはなにか、と推理を楽しめる状況が生まれている。


■核心的利益年表

そもそも核心的利益とはなにか?中国が「尖閣は核心的利益だよ」と言うだけでそんなに困るのだろうか。

日本語のウェブで読める「核心的利益」ネタとしてもっともわかりやすいのは前田宏子氏の「中国の『核心的利益』をどう解釈するか」だろう。

同論文を参考に「核心的利益」騒動年表をまとめてみよう。

・2010年3月、戴秉国・国務委員がスタインバーグ米国副長官と会談し、「南シナ海は中国の核心的利益」と発言したと報じられ、「中国が武力行使も辞さないとの意志を表明したらしいぜ」と世界的な話題に。その後、中国は「南シナ海を核心的利益とは言っていない」と打ち消し、今にいたる「どこが核心的利益なのかよくわからない上に核心的利益がカバーする範囲はいつ拡大するかわからないよ問題」が勃発することに。

・2010年12月、その戴秉国・国務委員がが論文「平和的発展の道を堅持」で、「(1) 中国の国体、政治体制、政治の安定、すなわち共産党の指導、社会主義制度、中国の特色ある社会主義。(2) 中国の主権の安全、領土保全、国家統一。(3) 中国の経済社会の持続可能な発展という基本的保障」と説明される。

・2011年9月の白書「中国の平和的発展」で、「中国の核心的利益には、国の主権、国の安全、領土の保全、国の統一、中国の憲法に定められた国の政治制度、社会の大局の安定、経済社会の持続可能な発展の基本的保障が含まれる」と定義される。

・2012年5月、温家宝首相(当時)の発言が尖閣を核心的利益と表明したのかどうかについて議論に(関連記事)。

・2013年4月、ナウ。


■ブラックボックスの核心的利益と屋上屋を重ねる推理

去年の温家宝首相の発言、そして今回の中国外交部報道官の発言が典型だが、きわめて中国的な用語である核心的利益がどの範囲をカバーするのか、中国様の御心を推測する形で、日本の専門家とメディアが頑張っている。人民日報が「今日から尖閣は核心的利益でござる」「南シナ海は核心的ではないでござる」とか書いてくれれば楽なのだが、すべてがブラックボックスなので専門家も新聞も妄想を膨らませて、推理を積み重ねているのが現状だ。

そうした中で時に楽しすぎる解釈が生まれることも。

今回の定例記者会見を担当した華春瑩報道官。昨年11月に報道官になったばかりの新人だ。本サイトでも就任時に記事「中国外交部が新キャラを投入、キャンパスの花的人妻報道官の人気やいかに(水彩画)」として取り上げている。この華報道官だが、レーダー照射事件について質問を受けた時、一瞬詰まって「知らない」と発言したものだからさあ大変。「中国政府内に亀裂がっ!」「軍はシビリアンコントロールを受けていないのではないか」云々と大変な騒ぎになった。

20130429_写真_中国_

もっとも中国では一番大事な外交は党組織が担当するために、行政組織である外交部はないがしろにされることが多い上に、日本の官房長官や米国のホワイトハウス広報官と違って、報道官にはたいした情報が与えられていないんじゃないか疑惑もあるので、知らなくてもそんなに不思議ではない。そこは知らなくても鉄面皮にやりすごせばいいだけなのだが、うっかり詰まってしまったので要らぬ詮索を受けた。

今回もそんな華春瑩たんがうっかり言い間違えただけなのではないか疑惑もささやかれている。かくいう私も第一印象では華たんのうっかりミス説を支持していた。


■中国的マジックワードを拒否せよ

ブラックボックスだからといって「核心的利益」を放って置いていいというわけではない。というのも中国共産党高官内部でひとたび核心的利益認定をしてしまえば、後に妥協したくなったとしても転換は困難になる。その旗を振った人物が「あやつは核心的利益を損なった売国奴」という認定を受けてしまうためだ。その意味でブラックボックスだろうが、屋上屋を重ねる推理だろうが、尖閣が核心的利益に含まれる範囲かどうかを専門家が注視しておくことは必要だ。

その一方で、中国のブラックボックスな意志決定の中で「南シナ海は核心的利益だで」「国際社会の反発がひどいから弁明しておくべ」とか、融通無碍に変化する核心的利益の範囲について一喜一憂するのもこれまた無意味というものだろう。

今回の件で何が重要かといえば、デンプシー米統合参謀本部議長相手に「核心的利益」というマジックワードを駆使して圧力をかけたという点にある。

中国ともうまくやりたいが、中国に対抗しうる庇護者としてアジア諸国にもいいところを見せたいという相反する立場に米国はある。そこにデンプシー米統合参謀本部議長との会談でマジックワードが連呼されたのは、中国の強硬な立場を示してゆさぶりをかけたという点にある。その意味では2010年3月の南シナ海問題に関する核心的利益発言と酷似している。

米国は尖閣が安保の対象であることを明言しているが、この関係を切り崩そうと中国はひそかに動いていることは注意しておくべきだろう。


■対中外交のキモ

さて、長いスパンで考えて、最終的に必要なのは、やれ核心的利益だ、いや核心的利益とは明言しないが中国の領土であるとは宣言する、といった中国式マジックワードを駆使した外交にお付き合いすることではない。もうちょっと国際社会で通じる言葉で語り合おうというテーブルに引っ張り出すことこそが必要だ。

その意味では核心的利益という中国式マジックワードに対応するというのは、今話題の北朝鮮における「無慈悲な鉄槌」とか「容赦ない報復」とかの文言を読んで、北朝鮮の怒りゲージが上がったのか下がったのかを読み解くという話とあまりかわらない。

北朝鮮がやるならまだかわいいものだが、大国・中国にいつまでもそんな遊びをやられていては困るのです。これを中国に理解してもらえるか否か。これが今後しばらくの間、対中国外交のキモになるポイントだろう。

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コメント一覧

    • 1. Anonymous
    • 2013年04月29日 23:05
    • 4 面白い
      華春瑩たんの画像が少ないので星4つ
    • 2. Chinanews
    • 2013年04月30日 18:17
    • >Anonymousさん
      あざーっす。人妻にしてちょっとMっぽい華たん、前任者の独身でSっぽい姜たん。中国外交部は人材多いですw

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