中国、新興国の「今」をお伝えする海外ニュース&コラム。
2013年04月30日
チベット人作家ツェリン・ウーセルは2013年4月13日、ブログエントリー「北京はなぜ工作組を派遣し、僧侶の携帯電話を検査するのか?」を発表した。
「中国政府が携帯電話専門家の特別チームをラサの主な僧院に派遣。全僧侶の携帯電話がチェックされている」というニュースを取り上げ、たんなる確認や脅迫ではなく、個人情報や通話情報を監視するためのマルウェア(悪質なソフトウェア)を仕込んでいると推測。「明らかに国家のテロ行為」だと批判している。
■北京はなぜ工作組を派遣し、僧侶の携帯電話を検査するのか?
ブログ・看不見的西蔵、2013年4月13日
翻訳:雲南太郎
小見出し:Chinanews
中国中央テレビ(CCTV)は2カ月前、チベット人焼身に関するプロパガンダ番組を放送した。番組の中では携帯電話の通話記録やチャットソフトが証拠として映し出されていた。電話の通話記録のみならず、ウェブサービスもログも中国当局に筒抜けとなっている。以下の画像は番組のスクリーン・ショット。
◆僧侶の携帯電話を検査する“専門家”
2013年3月11日付けのRFAの報道によると、中国政府は携帯電話専門家の特別チームをラサに派遣した。3月8日からデプン僧院やセラ僧院、ジョカン、ラモチェ、ガンデン僧院で、全僧侶を対象にした携帯電話の検査を始めたという。ほかの僧院でも数ヶ月以内に順次検査する。携帯電話の中に「国家の安全を脅かす」情報や写真が見つかれば措置が取られ、ひどい場合は逮捕される。
北京から来た携帯電話検査工作組は、今もラサで僧院ごとに僧侶の携帯電話を調べているということだ。見たところ、こうした大々的な検査方法を幸運にも回避できる僧侶はほとんどいないようだ。
◆マルウェアを仕込んでいるとの指摘
これほど大げさに動いて、ただ「国家の安全を脅かす」情報や写真があるかどうかを調べるだけなのだろうか?ツイッターでニュースを紹介し、私のこの疑問を打ち明けると、すぐに反応が返ってきた。
あるネット仲間は書いた。「工作組の任務は写真を数枚調べるだけじゃないでしょう。(写真などの)問題がなかったとしても、携帯電話にマルウェアを組み込める。数枚の写真だけが目的ならネット封殺で十分だし、これだけ大きなエネルギーを費やす価値がありますか?」
別のネット仲間は書いた。「目の前では検査しないでしょう。たぶん検査後、一部の携帯電話に何か付け足している(例えばスパイウェアとか)。特にアンドロイドのユーザーにはね。携帯電話のセキュリティに詳しくない人にとってはかなり危ないよ」
もちろん目の前で検査することはあり得ない。報道によれば、工作組は各僧院で携帯電話を全て集め、4、5日かけて集中的に検査する。そして、この検査は決して僧侶の前では進められない。更に、工作組の行動時には、往々にして完全武装の軍警が一緒に出動するという。通常、僧侶は一間か、二間の僧坊に住んでいる。部屋中をひっくり返すような捜索はないことではなく、2008年3月以降には度々起きている。
私はまた、携帯電話の検査は脅迫目的ではないかと尋ねた。ネット仲間は「脅迫のほか、次の一手のために準備をしている可能性がある。特定の地域の携帯電話は必ず登録が必要で、登録してようやくネットに接続できるというように」と答えている。
◆マルウェアが横行する中国モバイルインターネットの世界
3月15日、中国官製メディア・中国新聞網は、中国のモバイル・インターネットにはマルウェアが横行しているとの記事を発表した。
中国インターネット・データセンター(DCCI)のリポートによると、スマートフォンのアプリの66.9%はユーザーのプライバシーに関するデータを取得している。このうち、通話とメールの記録、アドレス帳はプライバシー漏洩の3つの危険地帯だ。34.5%のアプリにはプライバシーについて『常軌を逸した行為』があり、アプリ自体の機能に全く関わりのない状況下で、ユーザーの個人情報を取得している。そこにはアドレス帳や通話記録、位置情報、メールの内容など、非常にプライベートな個人情報が含まれている。