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「安倍首相よ、台湾“建国”を支援してください」台湾独立派が日本首相に書簡

2013年05月01日

■「安倍首相よ、台湾“建国”を支援してください」台湾独立派が日本首相に書簡■

総統府
総統府 / slash__


■「安倍首相よ、台湾建国を助けよ」との請願書


ちょっと不思議なニュースが流れていたのでご紹介。あまりにもマイナーすぎて金鰤以外では日本語にはならなさそうなお話である。

台湾独立派が日本は植民地宗主国であり台湾“建国”を助ける責任があると主張
香港・中国評論通訊社、2013年4月29日

28日、日本政府はサンフランシスコ条約発効61周年を記念して、初となる「主権回復の日」を祝う式典を開催した。翌29日、台湾独立派団体は日本の対台湾外交窓口である日本交流協会台北事務所に出向き、日本が”主権独立国家”になったことを祝った。その上で“台湾国臨時政府”の総呼びかけ人、沈建徳氏は「日本はかつて台湾の植民地宗主国であった。母国・日本は台湾の“主権”獲得を助ける責任と義務があると話している。

この日の参加者は公投護台湾聯盟の総呼びかけ人・蔡丁貴、台湾客社の張葉森社長、台湾北社の李川信事務局長、“908台湾国”運動総会の王献極会長、そして沈建徳氏ら20人あまり。午後、「日本首相安倍氏に送る書簡」を日本交流協会関係者に手渡した。日本交流協会関係者が直接書簡を受け取った。

環球時報などの中国メディア、新浪網や網易などの大手ポータルサイトがこのニュースを転載している。中国本土の人々の反応はとコメント欄をのぞいてみたが、「これだから台湾独立派はもう!」ぐらいの薄い反応ばかりだった。


■台湾独立派のロジック

フェースブックで29日の活動が紹介されているのだが、そのタイトルは「4月29日日本交流協会に書簡を手渡し陳情。安倍首相は日本主権回復の日を制定すると同時に、下関条約における台湾の主権帰属及び中華民国亡命政府に主権を移譲していないことを対外的に表明するようお願いする」というもの。

台湾独立派のロジックとして、「中華民国→台湾国」になるのではなく、そもそも国際法的に見れば中華民国は台湾を不当に占領しているのであり、「日本→(中華民国の不法占領)→台湾国」という形で主権を確立するべきという話になる。

この話は日本語版ウィキペディアの項目「カイロ宣言」にも書かれているので、知っている人にとってはごく常識的な話なのだろうがすこぶる面白いことは間違いない。ややこしいのだが、まとめると以下のとおり。

・ポツダム宣言で「カイロ宣言の条項は履行されるべき」とあるが、そもそも「カイロ宣言」なる文書は存在しない。

・いわゆるカイロ宣言と言われているものはたんなるプレスリリースであり、時間と日付が記されていない。カイロ会談に参加したルーズベルト米大統領、チャーチル英首相、蒋介石中華民国主席が署名した事実もなければ、事後による追認もない。

・カイロ宣言がない以上、ポツダム宣言第8項の「カイロ宣言の条項は履行されるべき」との条文は意味を持たない。つまりカイロ宣言の「第一次世界大戦により占領した太平洋の全島奪還、及び日本が中国領土から奪った領土を中華民国へ返還(例として満洲、台湾、澎湖諸島)」という項目は存在しない。

・よって台湾はポツダム宣言によって中華民国に返還されたわけではない。

・ポツダム宣言による台湾の中華民国への返還を確認した日中共同声明も誤り。


■2代連続で弁護士が台湾総統に

陳水扁前台湾総統もこのロジックを支持していたということで、中国本土に蛇蝎のごとく忌み嫌われたのもわからんでもない。ちなみに陳元総統も馬英九総統も弁護士出身。二人とも面倒臭い国際法トリックがお好きである。台湾総統はすでに12年間にわたり法学出身者が保持している。

というわけでちょっと面白かったのでご紹介したのだが、上述イベントの参加者が20人あまりという点はきっちり抑えておくべきだろう。陳前総統在任時には住民投票に持ち込もうかという話にまでなっていたわけだが、すでに完全に支持を失ってしまったのだろうか。台湾独立派の現状に詳しい人はぜひレポートして欲しい。


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