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「共産党を信仰せよ」「中国に憲法はあるが憲政は要らない」官制メディアの怪論文ラッシュから習近平政権の性格を考える

2013年05月22日

■「共産党を信仰せよ」「中国に憲法はあるが憲政は要らない」官制メディアの怪論文ラッシュから習近平政権の性格を考える■

習近平―共産中国最弱の帝王

中国のホットトピック・アグリゲーション・サイト「墙外楼」が、マイクロブログユーザー・冬眠熊2010さんのつぶやきを引用。最近、中国官制メディアに登場した怪論文を紹介している。「社会主義の信仰は宇宙の真理論」「党性(党の性質)はキリスト教徒にとっての信仰論」「憲政は社会主義には属さない論」「憲政は中国の発展を阻害する論」の4つである。

同記事では、中国人民大学の劉小楓教授の「毛沢東は国父論」もあげられているが、こちらは官制メディアではないのでとりあえず除外し、上述4本の怪論文をさらっと紹介したい。


■共産党を信仰せよ

中国の夢の自信はいずこにあるのか?
解放軍報、2013年5月22日

中国の夢は信仰をもって魂となし、自覚を持って根となす。信仰はたいまつの如く燃えさかり、自信に満ちあふれ、気概はあふれ、意気揚々たる様だ。

現在の複雑かつ変化に富んだ国際状況、困難かつ複雑な国内の改革、発展の任務、共産党が直面している厳しい挑戦とリスク、この状況下において心を合わせて中国の夢の自信を大きく築き上げるためには、まず心を合わせて中国の特色ある社会主義の信仰を守ることが必要だ。「我らの信仰する主義は、すなわち宇宙の真理である」と強く信じることが必要なのだ。


神聖なる“党性”を堅守せよ
劉亜州(国防大学政治委員)、人民日報、2013年5月22日

ある一人の老革命戦士は敵を前にしても屈することなく、ほほ笑みをたたえていた。

ある時、隊において、自らに着せられた汚名に反論しなければならなくなった。証拠がないではないかと思われたその時、彼は苦しい中でも頑としてこう言った。「私は党性をもって保障します」、と。キリスト教徒の心にある「神」と同様、本物の共産党員たるもの、「党性」をもって自らの保障とする。その神聖さはキリスト教徒の「神への誓い」にまったく引けを取らない。


■中国には憲法はあるが、憲政は要らない


憲政と人民民主制度の比較研究
楊暁青(中国人民大学法学院教授)、紅旗文稿、2013年5月(第10号)

西洋現代政治の基本的な制度的枠組みとして、憲政のキーとなる制度的要素と理念は資本主義とブルジョワ専制にのみ属するものであり、社会主義人民民主制度に属するものではない。これは双方の基本的な制度的枠組みを比較すればすぐにわかることだ。

1:憲政は私有制の市場経済を基本としている。人民民主制度は公有経済を主体としている。
2:憲政は議会制民主政治を実行する。人民民主制度ではすべての権力は人民に属する。 
3:憲政は三権分立を実行する。人民民主制度における国家政権体制は人民代表大会制度を実行する。
4:憲政は「司法の独立」と司法機関による違憲審査権を実行する。 人民民主制度では全国人民代表大会とその常務委員会が憲法の実施を監督する。
5:憲政は軍の「中立化、国家化」を実行する。人民民主制度における人民の軍隊は共産党の絶対的指導を受ける。 


“憲政”では堂々巡りだ、中国の発展の道を否定する
環球時報社説、2013年5月22日

“憲政”なる概念が突然世論の場に姿を現れた。中国の主流な政治的発展の外にある小枝である。この“憲政”なるものは最初から理論的な問題ではなく、政治的な主張であった。それは西洋の言語体系から出発したものであり、中国政治理論の一部の言葉と無理やりつなぎ合わせ、中国の現在の政治制度を否定する結論を生み出すためのものである。“憲政”は実際のところ、たんなる婉曲表現であり、中国に西洋的政治制度を受け入れろという昔ながらの要求を新たな言葉で表現しただけのものだ。


■習近平政権はどこへ向かう?

普段からツッコミどころ満載のネタを提供してくれている中国官制メディアだけに、たまたま怪論文が集中したという可能性もゼロではないが、「共産党に対する信仰」と「憲政バッシング」というポイントがかぶっているだけに、なんらかの政治キャンペーンという可能性もありそうだ。

習近平政権だが、誕生前には「太子党だし、革命元勲の息子だし、左派のバックラッシュ来るのではないか」「改革派の習仲勲の息子だし、政治改革やってくれるはず」という相反する期待があった。

さらに中国社会が急激に変化し、また官僚の汚職が深刻化するなか、「中国共産党の正統性が弱まりつつある」との危機感もあり、このままでは国が持たないので新たな正統性確保のために政治改革に踏み出すのではないか、という期待まじりの予測もあった。

まだ習近平政権の性格を断定できる段階ではないが、ここまでのところを見ると、習近平が目指しているのは政治改革による正統性の回復という動きは見えない。表に浮かぶのは、汚職官僚をぶっ潰し立派な共産党を復活するという、「かつてのステキな共産党を復興します」路線に見える。

たんに政権発足から1~2年はこの手の暇つぶしをしているだけなのか、それとも無理筋にしか思えないステキ共産党復興に本気なのか。怪論文を眺めながら妄想が膨らむ。

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 コメント一覧 (3)

    • 1. saitama-ojisan
    • 2013年05月30日 21:50
    • すさまじい汚職と権力闘争。
      それと党への「信仰」なんての読むと、
      なんだか、陰謀と異端審問うずまく、
      レネサンス期の教皇庁めいてきたな。

      じっさい、けっこう似てると思うぞ。
    • 2. pleco
    • 2013年08月18日 01:36
    • 党性に忠実なら勘弁してもらえるのか
      ならなんで劉少奇やボーシーライは勘弁してもらえなかったんですかね・・
    • 3. Chinanews
    • 2013年08月21日 19:00
    • >plecoさん
      党性とかいっても結局、便利な言い訳に過ぎないという……。

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