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■「悪い村役人に中国ネット世論激怒」の裏側
「悪逆非道の村役人が13歳の少女に手錠をかけ、市中引き回しのはずかしめを与えた」とのニュースが中国で話題となっている。村役人許さまじと誰もが怒りが覚えるニュースであり、世論の盛り上がりを前に問題の村役人が停職処分を受けた。
しかし村役人の主張、さらに現地取材した中国メディアの報道をみると、虐げられていたか弱い村民たちの別の姿が浮かび上がる。農村における政府と村民の緊張関係、そして村民がネット武器に「情報戦」を戦った興味深い姿が透けて見える。
■ザ・時代劇な悪業村役人
事件の経緯についてはすでに日本語でも報道がある。
13歳少女に手錠かけて引き回し? 中国共産党地方幹部ら停職処分(CNN、2013年5月30日)
共産党幹部の車に水かけた少女、手錠姿で街引き回される=貴州(サーチナ、2013年5月28日)
地元政府の公用車に誤って水、13歳少女が手錠かけられ「市中引き回し」―中国貴州省(新華社日本語版、2013年5月29日)
発端となったのは2013年5月27日にマイクロブログで公開された「水をこぼして書記の専用車を濡らしてしまったため、13歳の幼女が手錠をかけられて市中引き回しに」(因倒水淋湿书记专车,13岁幼女戴手铐游街示众)というタイトルのつぶやきだ。
その内容はというと、ざっくり以下のとおり。
・4月6日、貴州省畢節市赫章県可楽イ族ミャオ族郷での話。13歳の少女が不注意にも副郷長が乗っている車に水をかけてしまった。
・怒った副郷長が車から降りて少女を殴打。
・援軍に駆けつけた郷のトップ、袁沢泓郷党委書記。少女を殴打し手錠をかけさせ、約20分間も通りを歩かせるはずかしめを与えた。その後、派出所に12時間も軟禁。手錠をかけられるのを見た少女のおばは卒倒。
・その袁書記、少女の家族に向かって「党が白といえば白、黒といえば黒だ。俺は一声かければ数十人を集められる。歯向かうならやってみろ。とことんつきあってやる」と悪人ゼリフ。
・袁書記はもともとほしいままに村人を殴打し、民草の土地を奪い取る悪役人。ついに我慢できなくなった村人が今、抗議の声をあげてこのつぶやきをアップした。
・可楽イ族ミャオ族郷は中心部の人口は8000人ほどだが、旧暦で3、6、9がつく火には市が立ち、近隣から3万人余りが集まってくる。
・2013年1月、政府は新たな市場区画を作り、そこで市を開くように村人たちに命じた。他の場所で露店を開くことを禁止し、農作物や果物は新たな市場区画の中でのみ取引するように命じたが、反対者も多かった。政府は市が立つ日には見回りを出し、違反者を取り締まっていた。
・少女の父親、饒富貴も反対者の一人。饒富貴は通りに面した自宅で店を開いており、市場が新区画に移れば商売に差し障りがでる。
・事件が起きたのは4月6日ではなく、3月30日(旧暦2月19日)、少女のおば・金奇郷が見回りの政府職員を罵倒。あまりにもひどすぎると、副郷長の王梅は政府庁舎に連行することに決めた。その車が発車しようとした時、問題の「不注意で水をかけてしまった」が起きる。
・政府報告書によると、少女はわざと車に水をかけ、窓が開いていたため王副郷長がずぶぬれになったという。目撃者によると、水は車の後輪にかかっただけだという。
・どちらにしろこの件をきっかけに口論に。王副郷長は腕まくりして少女に向かっていったとのことなのでやる気満々だったかもしれないが、少女は王副郷長にびんたを食らわし、さらに揉み合いのなか、その手にひっかき傷を残したという。
・最終的に王副郷長は少女を車に乗せて連行した。車がいくらも進まないうちに警察の車が到着。警官は少女をパトカーに移乗させたが、その際に手錠をかけたという。この手錠をかけたままで王副郷長の車からパトカーへの移動が「市中引き回し」の真相となる。なお警官は少女をすぐにパトカーに乗せず、あたりをぐるっと回ったと話す目撃者もいる。
上が上なら下も下だった。