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県トップの昇進を阻止せよ!市民数千人が抗議集会=石炭成金と民間金融が生み出す不思議な事件

2013年07月16日

■県トップの昇進を許すな!市民数千人が抗議集会=石炭成金と民間金融が生み出す不思議な事件■
 


■県トップの昇進を許してはならない

2013年7月15日、RFAが「陝西省楡林市神木県で数千人の民衆が集会、県委書記の昇進・離任を阻止すべく抗議」という記事を掲載した。「あまりにもすばらしすぎる政治家を手放したくなくて、民草が留任を求めて集会したのかな……」と思って記事を眺めて見たら、実際はその逆だった。

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報道によると、Wechat、QQグループ、ネット掲示板、携帯メールなどを通じて、「神木経済の急落について、人民は借りを返してもらわねばならぬ。三角債務に皆が苦しめられている。今のトップは神木から逃げだそうとしているが、逃してはならない。15日午前10時に広場に集まれ」というメッセージが飛び交い、15日、実際に数千人が県政府庁舎前に集まったとのこと。

2010年に就任した雷正西県委書記は汚職ざんまい。600億元(約9900億円)もあった県財政の剰余金を食いつぶすどころか、さらに300億元(約4950億円)もの借金をこさえ、今では県職員の給料支払いの金を省に借りている始末ではないか。裕福な県財政を背景に導入された無料医療や高校までの無料教育もまもなく撤回されてしまうのでは、というのが民草の怒りの要因らしい。

この集会を受け、神木県政府はデマの流布の容疑で4人を逮捕している。


■不動産姉ちゃん

この神木県という田舎の県が中国全土を騒がすニュースとなったのは今年2回目。1回目のニュースはいわゆる「房姐」(不動産姉ちゃん)事件である。高利回りを約束して一般市民から金を集める、いわゆる「民間集資」を行っていた神木農村商業銀行元副行長の龔愛愛が逮捕された事件だ。

龔はなんと41軒もの不動産を所有しており、「房姐」と命名された。さらに地元と北京と2人分の身分証明書を持っていたことが発覚。これを期に次々と複数の身分証明書を持っている人物が明らかとなった。高飛び用に複数のパスポートを持っているというのはよくある話だが、黒いお金持ちは中国国内でも複数の身分証明書を用意しておくのが智慧というものらしい。


■石炭成金と民間金融の崩壊

この房姐事件と今回の抗議集会は同じ要因を背景にしている。それは「石炭成金と民間金融の崩壊」だ。

石炭産地の神木県だが、石炭価格の上昇と鉄道の開通を期に2005年ごろより好景気が到来する。大金をつかんだ石炭成金たちがなだれ込んだのが投資の世界。高利回りを約束して民間から金を集める「民間集資」が一気に広がった。房姐もその波に乗った一人である。月利2.5%の高配当を約束し金を集め、3.5%で別の高利貸に貸しだしていたという。一部は自分の不動産投資にも回していたはずだ。

石炭成金と民間集資のタッグは、ゴーストタウンで世界的に有名になった内モンゴル自治区オルドスと同じ構造である。

しかし2012年に入ると石炭価格も下落し、債務不履行が続発。2012年だけで神木県裁判所は民間債務絡みの裁判を4786件も受理。同県警察が摘発した民間金融案件は7件、その総額は43億元(約680億円)に達していたという。

こうして見ると、県を裕福にした前県委書記と貧乏にした現トップとの違いはタイミングの違いしかないようにも思える。汚職については田舎の石炭産地のトップが黒くないほうがおかしい……というのは偏見だろうか。


■民間金融が生み出す不思議な事件

記事「「影の銀行」「中国経済の危機」とはなにか?」で紹介したとおり、今、話題のシャドーバンキングは(1)銀行のオフバランス取引と(2)頼母子講、闇金、企業家同士の個人的な貸し借り、質屋、民間集資などの民間金融の2種類がある。規模的には圧倒的に前者が多く、後者の民間金融は金融システムを揺るがすほどのインパクトはないと見られる。今回の神木県の事件も中国経済を左右するようなものではない。

しかしながら「県トップの昇進阻止を求めて抗議集会」といった不思議な事件が起きるのは圧倒的に後者である。なぜならば民間金融は一般的にきわめて狭い地域に集中して展開しており、きわめて脆弱なためちょっとした異変で連鎖的に債務不履行が出現。街中の人大激怒という展開になりやすいからだ。

しかも中国政府も「金融システムを揺るがすようなものではない」といって捨て置ける話ではない。なにより恐れる治安悪化に一発でつながる案件である。しかも石炭価格の低迷や不動産価格の下落が全力アクセルで投資していた民間金融の破綻につながっていたとなると、成長率の低下を覚悟の経済構造改革を進める中国政府に圧力として働くことになるだろう。

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