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習近平ショックで中国人観光客が日本から消える?!旅游法の衝撃と駆け込み需要

2013年09月04日

■習近平ショックで中国人観光客が日本から消える?!旅游法の衝撃と駆け込み需要■


中国人の仕事仲間といきなり電話がつながらなくなりました。いったい何事かと心配していたのですが、後で話を聞くと突然香港旅行にでかけていたとのこと。出発前に連絡入れておけよと怒ったのですが、その仲間曰く「いやいやいや、値上げ前の駆け込み旅行で時間がなかったんよ。習近平のせいで香港旅行が10月1日からえらく高くなってしまうんや」との答え。

というわけでむかつきつつも良いネタをいただいたので、今回は「中国旅游法と駆け込み需要」について。


■「旅行者はマナーを守るべし!」という法律

中華人民共和国旅游法」は2013年4月25日公布、10月1日施行の新たな法律。旅行会社、観光地運営者、地元政府、そして観光客など多方面の関係者の義務を定めています。

観光客にも義務がある、というのが中国らしさというか、なんとも面白いところ。

第13条 旅行者は旅行活動において社会公共秩序と社会道徳を尊重しなければならない。現地の風俗習慣、文化伝統、宗教信仰を尊重し、旅行資源を守り、生態環境を保護し、旅行マナーと行動規範を遵守しなければならない。

タン吐き、ゴミのポイ捨て、公共空間で大声で騒ぐといった「中国人観光客の評判の悪い行動」は違法行為になってしまいました。

続く14条がザ・中国という条文でステキすぎます。

第14条 旅行者は旅行活動、あるいはもめ事の解決において、現地住民の合法的権益を損なってはならない。他者の旅行活動を妨害してはならない。旅行経営者、旅行業従業者の合法的権益を損なってはならない。

この条文だけ読んでもなかなか意味がわからないと思いますが、例えば

一族郎党で香港旅行に申し込んだAさん。旅行を楽しみにしていたのにろくに観光地を回らないで土産物屋に連れ込まれるわ、超高級ゴージャスホテルとか言われていたのに南京虫がでる宿だわと最悪。クレームを入れるも旅行会社はしらんぷり。激怒したAさんは観光地駐車場の出入り口を占拠。自分たちのツアーバスだけではなく、他のツアーバスも出入りできなくする嫌がらせ工作を展開。結局、警察が仲裁する羽目に。

といったことはやってはあきませんよ、という条文。別の法律で十分取り締まれるので無理に旅遊法に入れる必要はないはずですが、人民の父母にして国民の道徳も規制する中華人民共和国的には入れておきたかった条文なのでしょう。

ちなみに旅游法の罰則規定は旅行会社や観光地などを対象としたもので、旅行者には具体的な罰則は定められていないので、上記の条文はたんなる努力目標的なものでしかありません。


■お土産キックバックとオプショナルツアーを封じ込め

閑話休題。今回の旅遊法がツアー旅行需要を冷え込ませる原因になるとみられているのは第35条の条文です。

第35条 旅行社は不合理な低価格で旅行活動を企画し旅行者を騙してはならない。また買い物やオプショナルツアーによるキックバックで不正な利益を得てはならない。

旅行社はツアーを企画し旅行者に対応するに辺り、買い物する場所を指定したり、オプショナルツアーを日程に組み込んではならない。ただし旅行社と旅行者が協議の末一致した場合、あるいは旅行者が要求しなおかつその他の旅行者の日程に影響しない場合はのぞく。

前二者の規定に違反した場合、旅行終了後30日以内に限り、旅行者は旅行代金及び先払い金、さらにはオプショナルツアーの費用の返還を要求する権利がある。

中国では劇的に安い低価格ツアーが横行しており、以前には「費用0元で香港ツアー!」というありえない話まであったほど。そのビジネスモデルは指定のショップで高い品物を売りつけて旅行会社やガイドをキックバックを受ける。正規の旅行代金は安くとも本当に見たい見どころはオプショナルツアーとして別料金を徴収、あくまで支払いを拒む客はバスやホテルで待っているしかないという悪魔的手口を駆使するところにありました。


■旅游法ショックで料金値上がり

10月1日の施行からしばらく立てば、中国旅行業界も訴えられない新たな詐欺的手口を編み出して格安ツアーが復活すると私は確信していますが、少なくとも今年の国慶節(10月1日)前後の長期休暇ではツアー料金がどかんと値上がりしていると報じられています。

中国広播網によると、一部路線では6割増し。人気のタイ旅行では倍増しているケースもあるそうで。

我らが日本も中国人向けのキックバックに対応するショップがそろってきた(といっても在日中国人経営が多かったりするわけですが)ので格安ツアーが開催されていますが、こちらも2~3割の値段上昇になっているのだとか(フィスコ)。

最終的にどれほどの影響となるかは未知数ですが、日本旅行業界に影響が出ることは確実です。今回の旅游法を期に誠実な旅行社の真っ当なツアーが売れるようになったらいいんですが……。まあ、上述したとおり、最終的には元の木阿弥になると確信しています。


■習近平のせいで旅行代金値上がり?!

それでですね、ちょっと面白いのが駆け込み需要。高くなるからその前に旅行しとけ!というわけで、この9月はツアー旅行がバカ売れだとか。

ただちょっと考えてみればわかる道理なのですが、その低価格はお土産物屋連れ込みとオプショナルツアーのキックバックによって成り立っているわけです。そんなせつない旅行をしなくてもいいようにというお上の慈愛によって旅游法が施行されるのに、「やべっ、習近平のせいで旅行が高くなるやん。今のうちに旅行しとこう」という発想になるのがなんともかんとも。今いったら安いかわりにきっつい旅行が待っているのに。

冒頭に取り上げた仕事仲間ですが、きっちりとお土産物屋ツアーに引き回されたそう。「買い物を拒否したら、がちぎれしたガイドと口げんかになった」と語っておりました。まあ、その程度で済んだのは幸せです。買い物するまでツアーバスを動かさないとか、買い物しなかった客を放置して移動とかいう話もありますので。

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 コメント一覧 (4)

    • 1. Anonymous
    • 2013年09月04日 21:39
    • 法律で人間として当たり前の常識をこうですよと示さないといけないという低民度っぷり・・・
    • 2.
    • 2013年09月09日 20:51
    • 中国国内旅行で優良旅行者ポイントを貯めてから海外旅行に行けるようにする法律が良いんじゃない?
    • 3. あ
    • 2013年10月03日 14:14
    • 土産物屋からのキックバックは日本向けの旅行に限った話じゃないんですけどね
      中国国内の格安日帰りツアーなんかは確実に土産物屋をまわってます。
      大連での旅順203高地ツアーに行ったけど、強制は無かったものの、かなりの時間土産物屋に居ましたね。
    • 4. Chinanews
    • 2013年10月06日 14:28
    • >あさん
      あの中国人向けツアーの土産物屋めぐりはいくらなんでもやりすぎですよね。ツアーのほうが気楽だなという時があっても、とても参加する気にならないという……。

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