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高僧の逮捕、共産党による転生ラマの選出にチベット人が抗議、2児の母が自殺図る(tonbani)

2013年09月12日

■ナクチュ:2児の母が抗議の自殺を計る■


20130912_写真_チベット_
*シャク・ロンポ僧院に駐留する中国の軍隊。

チベット自治区ナクチュ地区にあるシャク・ロンポ僧院に対する中国当局の弾圧についてご紹介したい。

この由緒ある僧院はかねてより政治的に問題がある僧院として当局に目をつけられていたが、特に2010年に、この僧院の総括ラマである8世ロンポ・チュゼの死に伴い、その転生者を探すための責任者となっていた高齢のラマ・ダワが当局により逮捕され、7年の刑を受けたことにより緊張が高まった。

当局はこのラマ・ダワが転生者選びのために14世ダライ・ラマと密かに連絡を取ったと見なしてラマ・ダワを逮捕した。それ以外にも転生者選びに関わったという高僧を逮捕し、刑をあたえた。また、僧院に部隊を派遣し、長期の政治教育を課した。暴力を伴った厳しいこの政治教育に反発し、僧院の僧侶たちは2度に渡り僧院から逃げ出し、僧院は2010年5月と2013年7月末に閉鎖されている。また、この政治教育を苦にし高齢の僧侶が1人自殺している。

この僧院の惨状を見かね、地元のチベット人たちは何度も政府に対し、ラマ・ダワの解放等を要求したが、政府はこれを完全に無視し続けた。それどころか部隊をさらに増強し、僧院と周辺の村への監視を強化。役人を送り込むなど取り締まりを強めた。

その結果今年7月半ばには村人と部隊が衝突し、多くの負傷者が出るという事件が発生した。この時50人ほどのチベット人が拘束されたが、その内9人の名前が最近やっと判明した。中には拘留中の暴力により病院に運び込まれた人もいるという。

さらに、中国政府は8世ロンポ・チュゼの転生者として、僧院の意向を無視し、勝手に新しい9世ロンポ・チュゼを認定した。

最近、この衝突で拘束された夫であるロプサン・ツェリンの解放と当局が決めた偽転生者の認定撤回を要求し、2児の母であるドルマ・ヤンキ(28)が抗議の自殺を計った。彼女はバイクに乗り、異常なスピードで運転した末に故意に転倒し自殺を計ったという。警官が彼女を病院に運び込んだが、病院には警官が待機し、訪問者を中に入れず、彼女の容態は不明のままという。

残された2人の子供は祖父母たちが預かると言ったにも関わらず、当局が強制的に孤児院に送ったと伝えられる。

参照:
9月10日付TCHRDリリース9月9日付Tibet Times9月9日付RFAチベット語版9月10日付phayul

シャク・ロンポ僧院についての弾圧は8月3日の記事「ナクチュの由緒ある僧院が当局の弾圧の結果 閉鎖に追い込まれる」、8月31日の記事「ナクチュ地区シャク・ロンポ僧院続報 党のテレビショー」でも取り上げている。


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*本記事はブログ「チベットNOW@ルンタ」の2013年9月11日付記事を許可を得て転載したものです。


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