• お問い合わせ
  • RSSを購読
  • TwitterでFollow

“妖魔化”される中国、「ネット監視に200万人」動員と海外メディア報道

2013年10月09日

■“妖魔化”される中国、「ネット監視に200万人」動員と海外メディア報道■
 

China - Internet Cafe (网吧)
China - Internet Cafe (网吧) / eviltomthai


■妖魔化

中国語に「妖魔化」という言葉がある。悪の力で悪を討つダークヒーローが変身時に叫ぶ言葉……ではない。日本語に翻訳するのは難しい。「悪魔化」という直訳が当てられていることもあるが、意味的には「(本来悪いものではないのに)悪と決めつけられる」というもの。今では一般的に使われるが、もともとは「海外メディアが中国を悪しき者と描いている」と反論する時の頻出ワードである。

「妖魔化」への反発が一つのピークに達したのが2008年。北京五輪を前に中国への注目が高まる中、チベット騒乱、聖火リレー妨害事件と続くなか中国バッシングの報道があふれた。これに「中国は妖魔化されている」と怒ったネットユーザーがanti-CNNというサイトを中心に立ち上がり、海外メディアの“偏向報道”を批判した。
(関連記事:中国の若きナショナリストたち=四月青年と愛国主義文化産業ファッショナブルな若き保守派中国人の台頭とその転落=四月網問題で分かったこと

当時の報道が本当に“偏向報道”だったかについてはさまざまな意見があろうが、過去の写真をチベット騒乱のものとして報じたり、あるいはトリミングによってチベット人が投石している姿を消したりと、よろしくない行為があったのは事実だ。一方で、一部のミスの存在をもってして、海外メディアの報道をすべて“偏向報道”と決めつけ、中国の立場を正当化する論法があったのも残念だった。


■海外メディアも“誤読”ブームに参入

さて、なんでこんな昔話を開陳したのかというと、今、中国界隈でちょこっとした話題になっている「中国ネット検閲業界で200万人が働いている」というニュースのねじ曲げられ方ぶりを見たからだ。

この話については記事「中国では200万人がネット検閲業界で働いている?!炎上ニュースの裏側にある中国流資格ビジネス」で詳述したが、新京報が「ネット世論分析師は約200万人いる」とだけさらっと書いたのを、「ネット検閲業界で約200万人働いているのか!」と、みなみなが積極的に誤読したという話。

政府に批判的な中国ネット民が格好のネタを見つけたとして話題にするならまだしも、なぜかBBCCNNといった世界的メディアまでもが“誤読”にのっかっている。BBCはタイトルで「state media say」(国有メディア報道)と書いている。確かに新京報も上をたどっていけば主管部局はお上となる。ただしその論法でいけば中国には国有メディア以外のメディアは存在しないことになる。政府批判で知られる南方週末だって立派な国有メディアである。このタイトルではあたかも人民日報が200万人を認めたかのような印象だ。

CNN日本語版
にいたっては「public opinion analysts」に「世論分析官」という訳語を当てて、中国政府が200万人もの世論監視職員を雇っているかのようにミスリードしている。英語が苦手な私からすると、「public opinion analysts」のどこに“官”という言葉が入っているのか、不思議でしょうがない。

「ネット検閲業界で200万人が働いている!」というのは面白いニュースで、ついつい取り上げたくなる気持ちはよくわかる。200万人はどうかとして相当数が検閲関連業界で飯を食っていることも間違いではない。とはいえ、原文を無視して面白く伝える“誤読”がここまで広がるのはいかがなものか。中国人ならずとも「妖魔化しすぎとちゃいますか?」と苦言を呈したくなってしまう。

関連記事:
チベット・ウイグルのネット世論を観測せよ=ITで進化する中国の監視社会
ネット世論観測産業の勃興=民の声に怯える政府が大口顧客―中国
書籍からテレビ、携帯まで、チベット関連のすべての情報を検閲するチョモランマ・プロジェクト(tonbani)
<中国ジャスミン革命>たった一つのつぶやきが中国政府を驚かせた=不思議な「革命」の姿を追う
毎日エロ画像を吐くまで見続けるだけの簡単なお仕事です?!人力ネット検閲スタッフ大募集―中国
2万人が机を並べてネットを監視?!笑えない中国ネット検閲事情―ブログ「走れ!プロジェクトマネージャー!」をご紹介


トップページへ

コメント欄を開く

ページのトップへ