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日本メディアは誤解してない?「中国、記者25万人にマルクス主義学習義務づけ」の正しい読み方

2013年10月14日

■日本メディアは誤解してない?「中国、記者25万人にマルクス主義学習義務づけ」の正しい読み方■
 

beijing newsstand
beijing newsstand / ernop


中国政府が25万人の記者にマルクス主義試験義務づけ、新たなメディア取り締まり強化だ!」とのニュースがちょっとした話題となっています。

中国、記者25万人に免許試験 マルクス主義学習義務付け(共同)
中国 記者に「マルクス主義」試験(NHKニュース)
ネット大国中国、規制を加速 監視要員200万人(共同・中国新聞
メディア記者25万人に免許試験 中国 マルクス主義学習で(MSN産経ニュース)

実は日本語の報道が出る前にこのニュースを目にしていたのですが、「たいした話題じゃないな」と思ってスルーしておりました。日本人読者のニーズをとらえるアンテナがバカになっているな、と反省した次第です。

ただですね、やっぱりたいしたニュースじゃないんじゃないかな、とも思うのです。少なくともマルクス主義を記者に叩き込んでやるっ!といった意図はあまりないんじゃないかな、と。どちらかというと、「軽く試験を課すことによって記者証を保持し続けることが面倒になる」ぐらいの感じというか。日本の運転免許更新の講習うざい、と似たようなものというのが本当のところじゃないでしょうか。


■記者証とは

記者証とは取材時に警察手帳のように提示しなければならないもの。コンピューターシステムにより記者証番号と名前を確認することができます。やってきた記者が本物の記者かそれともニセの記者かを確かめられるという一品です。

取得するにはまず採編人員从業資格証書という資格試験に合格する必要があります。その後メディアで1年以上の実務を経た後に申請できるという仕組み。この記者証は年に一度審査があるほか、5年に1度更新があります。前回は2009年だったので、今話題になっている2014年の更新は日程どおりということに。

ただ今までの更新は申請だけすればOKだったようで、そのためすでに記者の職についていない人、つまり「実態のない記者」がえんえんと記者証を取得し続けたまま、という事態がありました。その代表例となったのがノーベル文学賞受賞者・莫言氏。1997年から2007年まで検察日報社所属という身分だったため、記者証を取得していたそうです。2009年の記者証更新もくぐり抜け、記者証を保持していたことが発覚しちょっとした話題となりました(レコードチャイナ)。


■記者証更新の実際

今回の更新では研修と試験が義務づけられたわけですが、「実態のない記者はじき」が第一義的な目的ではないのかな、と。人民網によると、研修には『ニュース記者研修教材』という冊子と研修ビデオ6本が制作されたとのこと。テーマは「中国の特色ある社会主義」「マルクス主義ニュース観」「ニュース倫理」「ニュース法規」「ニュース取材編集規範」「虚偽ニュースの防止」の6つ。

日本語メディアだと最初の3つぐらいしか取り上げていないので、なんたる洗脳研修よ!とのイメージがありますが、6つ並べると結構普通に見えませんか?もちろん社会主義系のプログラムが2本入っているわけですが、まあ中国ではごくごく当たり前の話じゃないかなという気もするのですが。

ちなみに大学では「毛沢東思想、鄧小平理論と3つの代表」といった授業が必修です。胡錦濤の科学的発展観もそのうち必修授業に入れてもらえるようになるのでしょうか。入れてもらえなかったらせつないですね。それはともかく「記者25万人にマルクス主義学習義務づけ」で売れるニュースになるなら、「中国人大学生600万人にマルクス主義学習義務づけ」でもいけますかね?ちなみに必修授業なのにみなかけらもやる気がなく、絶好のさぼりタイムとなっているのもポイント。

そういうお国柄なので、記者証更新に研修を課すのならば、「中国の特色ある社会主義」「マルクス主義ニュース観」は入れておくべ、という発想になるのもむべなるかな。これを締め付け強化というべきかは疑問が残ります。


■落第者には再試験が待っています

研修ですが、講義と議論合わせて18時間以上が義務(ただし事前に関連テーマの研修を実施していた場合はそれを研修として含むことが許可されるのだとか)。記者証を持つ記者30人以上を有する機関は自社で研修を実施。30人未満の機関は主管する政府部局での研修となります。

研修を終えた後、来年1~2月に各省・市単位で研修内容を確かめる試験があるとのことですが、合格しないとどうなるのでしょうか?記者証剥奪!!!……ではなく、再試験だそうで。まじめに勉強しなさいね、ということですね。

再試験に落ちるとどうなるのかまでは規定されていないようですが、試験不合格だから記者証剥奪という話もありません。

そもそも記者証更新以外に年に一度の審査というのがあるので、本当に記者証をとりあげたい相手ならばこのタイミングで没収することが可能。なのでまじめにマルクスしないやつを試験で排除するという意図はないと思われます。

とりあえず5年に1度、18時間の研修プラス試験勉強分、記者さんの時間を奪うあまり意味のない制度。5年に1度、受験生の気持ちを思い出させてくれる制度という評価が現時点では妥当なのではないでしょうか。


■金鰤的読み方

というわけで、「中国とネット、言論統制」は“売れるネタ”ということを再認識したので、今後はたいした話じゃなくね?と思ってもなるべく拾っていこうと決意した次第。

ただこの手の話をちょろちょろっと取り上げて、「中国政府は言論統制を強めているッ!」の結論をくっつけていっちょあがりというのはちょっと残念だなと思うので、「中国のおっさん記者、今さら大学時代以来のマルクス主義の勉強を強要されて涙目」などの独自の切り口を目指していきたいな、と。いーじゃん、それでと思った皆様、ぜひぜひご支援のほど、よろしくお願いいたします。

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 コメント一覧 (1)

    • 1. bossa
    • 2013年11月05日 10:56
    • 現地人の友達も言っていた。大学でもその他の学校でも、何をやるにもまず最初の1コマは思想の授業。photoshop講座の1コマ目が思想w。

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