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野心をみなぎらせ、戦い、そして敗れた「凄い女」たちの物語、福島香織『現代中国悪女列伝』

2013年11月22日

■野心をみなぎらせ、戦い、そして敗れた「凄い女」たちの物語、福島香織『現代中国悪女列伝』■

現代中国悪女列伝 (文春新書 946)

中国語圏には政治ゴシップ本というジャンルがある。中国本土では発禁処分を受けていることが多いので、香港で出版されていることが多いのだが、中国本土観光客の人気のお土産になっている。どこまで本当か怪しい話も少なくないが、凄絶な権力闘争、汚れた手段を駆使しての出世、欲にまみれた人間関係、そして情欲と大変魅力的なエピソードが詰まっていることは間違いない。

そうした中国政治ゴシップ本の魅力を詰め込んだのが福島香織『現代中国悪女列伝』だ。

目次
はじめに
第1章 江青の系譜を継ぐ正統派悪女―谷開来
第2章 温家宝の妻のダイヤモンド女王―張培莉
第3章 夫の存在感“食う”ファーストレディ―彭麗媛
第4章 堕ちた歌姫は権力闘争の生贅か―湯燐
第5章 魔性の熟女のチャイナドリーム―李薇
第6章 元鉄道相の美しくない愛人―丁書苗
第7章 中国赤十字の信用を失墜させた九〇后美少女―郭美美
第8章 八〇后の露悪女―鳳姐
第9章 中国近現代史上最悪の悪女―江青
第10章 林彪を操り破滅させた女―葉群
第11章 中国に悪女が多いワケ
あとがき 

女の魅力を駆使し体を武器として、妻や愛人の立場を手に入れ、のしあがっていった女性10人のエピソードを収録されている(郭美美、鳳姐という変わり種もセレクトされているが)。

「女の魅力を駆使し」といっても、誰か一人の権力者をたらしこんだだけなどという単純な話ではない。例えば谷開来は薄熙来の妻となることで権力の後ろ盾を得るが、さらに谷に恋心を寄せる程毅君という台湾人の力を借りて、「米国に勝訴した弁護士」として名声を得る。そして彼女の蓄財を助ける外国人2人とも情を通じ、後に毒殺することになるニール・ヘイウッドとは英国で同棲状態にあった。薄熙来の右腕にして、最終的には薄と谷の失墜の引き金を引く王立軍重慶市副市長とも深い関係にあったという。

あるいは「女の魅力」以上に才気を見せる女性もいる。葉群は統合失調症だった夫、林彪の代わりに実務を取り仕切り、夫を「毛沢東の後継者」の位置にまで押し上げた。実質的な女帝の地位を得るまで後一歩だったわけだ。本書に登場する「悪女」の中で唯一、美女ではない丁書苗だが、その細やかな気遣いで信頼を得て、そして商売の才覚も発揮し、大富豪の地位にまでのしあがっている。

持てる武器すべてを駆使し、野心を実現させようと戦い、そして敗れ去っていく女たち。著者はたんなるゴシップとして彼女たちを描いていない。行間からにじみでるのは、この凄い女たちへの共感だ。私も彼女たちの戦いに爽快感と切なさを感じさせられた。

物語としての読み方を外れるならば、本書は中国政界の空気感を知る上でも絶好の一冊ではないか。たびたび登場する「圏子」(サークル)という言葉、愛人の存在が失脚の原因ともなりかねないのに知り合いに愛人を見せびらかす権力者たちの社交、複数の権力者と寝ることでコネをとりまとめるハブのようになっている公共愛人の存在など、ゴシップからしか見えない姿が浮かび上がる。

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