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【ブックレビュー】イラン人女子の目力の秘密と野茂のフォーク=エマミ・シュン・サラミ『イラン人は面白すぎる』

2013年12月22日

■【ブックレビュー】イラン人女子の目力の秘密と野茂のフォーク=エマミ・シュン・サラミ『イラン人は面白すぎる』■


イラン人は面白すぎる! (光文社新書)

◎内容紹介
日本で暮らすイラン人としていつも悲しく思うのは、
イスラムに対する日本人の過剰な拒絶反応だ。
過激な反政府デモや核開発疑惑などから、イラン=危険なテロリスト国家というイメージが染みついてしまっている。
でも、イラン人はみんな日本が大好き。
そんな「片想い」を少しでも「両想い」に近づけたい、本書はそんなキューピッド的発想から生まれた。
陽気なイラン人たちが織りなす数々の珍エピソードを通して、本当のイスラム文化を知っていただけるはずだ。

◎目次
第1章 陽気なイスラム教
第2章 豚肉とラマダン
第3章 すべてはバザールと食卓にある
第4章 中東の恋愛不毛地帯
第5章 イランの罪と罰
第6章 学校という名の階層社会
第7章 アラブの中のイラン

イラン人の芸人エマミ・シュン・サラミさんの著書。ラジオ「荒川強啓デイキャッチ」のコーナー・レギュラーとして出演されていて、そのイラン小話というかイランあるある話にはいつも爆笑している。『新潮45 』最新号の特集「世界はだいたい日本の味方」に、「すべてが揃っている「奇跡の国」」という原稿を寄稿されているのを見て、そういえば著書もあったなと思い出して購入してみた。


■卓越した小話

一応、章ごとにテーマが決まっているが、体系的にイランの知識を得るならばもっといい本はあるのではないか。ただイラン人が書いた本ならではの細かい小ネタが素晴らしすぎる。一部を紹介しよう。

(イラン人の女性はチャドル、つまり顔を見えないように隠す頭巾のような民族衣装を着ることが風習だが、その目だけで男性にアピールするテクニックを身につけているという話)中東の女性は目地唐が強いとか、エキゾチックなまなざしをしているという声をよく耳にする。それは、彼女たちがアピールできる露出部分が目に限られているためで、自然とその瞳は力強く生命力にあふれるからだ。

(…)イスラム女性にとって、目は自由に自分を表現することのできる唯一の手段なのだ。流し目、上目づかい、ウルウル濡れた目(僕はチワワ目と呼んでいる)など、目の動きだけで男を悩殺するテクニックを何種類も本能的に身につけている。野茂英雄投手がフォークボールの握りで何種類もの球を投げられたのと似ている。

当時ブリトニー・スピアーズに憧れていたナザニンは、ハサミを入れて胸元が見えるようにしたエロかっこいいチャドルや、ひざのあたりをボロボロにしたダメージチャドルをつくったりしていた。また、キャラクターのアップリケをつけたりスプレーでペインティングしたりといろいろ試したらしいが、すべて職務質問されて没収されたという。

しかし、そんなことではへこたれないナザニンは、ブカブカのチャドルの下に奇抜なチャドルを着込み、ディスコに入った瞬間ブカブカチャドルを脱ぎ捨てるという荒技を生み出した。

(結婚しないとセックスできないイランで、いかにして性風俗を実現するか)イスラム教で政敵問題は一番のタブーだが、捌け口として一時婚(ムトア)という特例が存在する。一時婚とは、双方が望めば最短1分から最長99年間の間で婚姻関係が成り立つ制度だ。

またイランのことわざも結構紹介されていて、「結婚とは、断食あけのケバブ」(恋愛禁止、婚前性交渉禁止のイランで結婚の喜びをあらわすことわざ)とか秀逸なものがいくつも紹介されているのが嬉しい。

ついでに書いておくと、たんに笑える小ネタだけでははなく、日本人のイランへの不理解(イラクといつも間違える。ドーハの悲劇の相手はイラクですよ!)、親米国が優遇される国際社会への批判といった著者の意識がところどころににじみでているのも良い。


■エマミ・シュン・サラミさんの自伝が読みたい

ちょっと不満な点も書いておこう。著者の経歴がまったく明らかにされていないことだ。エマミ・シュン・サラミさんの祖父は軍関係者、父も軍の技術関係者だったという。そのためちょっとハイソな私立学校に通った著者は石油王や貴族たちの暮らしもエピソードにも詳しくて楽しいネタをいっぱい紹介してくれているわけだが、著者がどういう経歴で育ったのか、なぜ日本に来たのかなどは一切明かされていない。

そこには絶対面白いストーリーがあるはずなのだが。あるいはエマミ・シュン・サラミさんの経歴を軸に小ネタを紹介するという形式にしていたらもっと一本筋が通った本になっていたのではないか……などとも妄想する。

こういう海外事情の小ネタ本は楽しいのだが、中国や韓国、あるいは米国の小ネタ本はいろいろあれど、それ以外の国についての話はまだまだ少ない。日本語で、しかも書籍というそれなりにクオリティが担保された形でそうした小ネタ本が読めるのは幸せなことだし、それこそが文化の程度を示す指標なのではないかとも思う。いつか世界200カ国小ネタ本フェアができるよう、このニッチな本を支援していきたい。

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