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「国営企業+資源系+サムスン=ベトナム経済」、民間企業が成長できない「国進民退」問題(いまじゅん)

2014年01月25日

■資源、サムスン、国営企業:ベトナム経済でも進むか「国進民退」■

01 Saigon Post Office
01 Saigon Post Office / michael clarke stuff


中国では、国有企業の復活とそれによる民間企業の生存空間の縮小を「国進民退」と呼びます(関連記事)。今や中国経済の重要課題として考えられているわけですが、同じ「社会主義市場経済」のベトナムではどうなっているのでしょうか?

果たしてベトナム経済にも国進民退はあるのか?面白い報告がありましたのでご紹介します。ベトナムの老舗ネットニュース老舗ベトナムネットが「2013ベトナム企業500」を発表しました。世界企業番付「フォーブス500」の模倣。色々な指標を導入しているようですが、基本は「売上高」のランキングです。


■上位は資源系、国営企業、そしてサムスン
 
トップ10のうち8社までが国営企業。残る2社は2位のサムスンエレクトリックベトナム、7位の「JOINT VENTURE "VIETSOVPETRO"」です。この謎の会社(?)は石油ガス関係。どうやら旧ソ連時代から関係が続くロシアとの合弁企業のようです。

なお7位までが「フォーブス500」の第500位よりも収入規模が大きいとのこと。ちなみに日系ではホンダ(16位)、キャノン(20位)、ヤマハ(34位)、トヨタ(39位)が上位にランクインしていました。やはり日本企業トップはバイクのホンダですね。

1位:ペトロベトナム(ベトナム石油ガス集団:Petro Vietnam Oil and Gas Group)
2位:サムスンエレクトリックベトナム 
3位:ベトナム石油グループ(Petrolimex)
4位:ベトナム電力公社(Electicity Vietnam:EVN)
5位:ベトナム軍隊通信グループ(VIETTEL GROUP:ベトナムの3大携帯通信網の一つ、軍経営)
6位:ベトナム郵政通信グループ(VIETNAM POST AND TELECOMMUNICATION GROUP:VNPT)
7位:JOINT VENTURE "VIETSOVPETRO"

目立つのはやはりサムスンでしょう。最近は「ベトナムの工場で暴動」などの負のニュースも伝えられましたが、ベトナムではきわめて重要な企業であることは間違いありません。ベトナムの輸出総額の15%がサムスン、などというトンデモナイ数字もあるくらいです。

資源、国営、サムスン。これだけでベトナム経済の大部分が語れてしまうという現状があります。


■ベトナムもやはり「国進民退」だった
 
さて国営企業に話を戻しましょう。ベトナムネットの解説記事を読むと、やはり国営企業の存在感が目立ちます。500社の内訳は民間44%、国営40%、外資15%となっています。民間企業の数は増えているのですが、会社収入の上位は国営企業が占めているのです。

収入別でみると、62%は国営企業、民間19.4%、外資18.5%とという内訳に。トップ500入りした企業数では民間企業が外資の3倍なのですが、収入規模ではほぼ同規模なのです。

規模の大きい業種は鉱山業・石油、電気、金融とありがちな分野。ただ鉱山業・石油産業の企業収入全体に占めるシェアが33.6%と他を圧倒する規模で驚きます。道理でペトロベトナムの本社が立派なわけです……。

上述したとおり、トップ500の売り上げに占める国営企業のシェアは62%。2010年の46%から大きく増えています。ベトナムも経済改革を進めており、2000年から2010年の間に国営企業の数は約半分にまで減らされました。しかし中小企業ばかりが整理されて、「大物」には手が付いていないというのが現実のよう。改革とは名ばかりで、「国進民退」が進行しているイメージです。

今年新たにランクインした160社を見ても、民間40.4%、国営36.6%、外資23%という内訳。新顔、つまり伸びてきている企業数においても民間、国営は拮抗しているわけです。既存企業は国営が圧倒している現状を考えれば、国営経済セクターの優位はしばらく変わりそうにありません。


■司法の厳罰か、「株式化」か:改革のメスは入れられるか?

上述のように国営経済セクターは巨大な影響力を持つ利益集団となっています。これをいかにして改革するかはベトナムのみならず、中国などの社会主義からの移行組にとっては大きな課題となっています。

ベトナムでも毎年のように国営企業改革が提唱されていますが、今年も例外ではありません。グェンタンズン首相も「国営企業改革やりまっせー」という発言を繰り返しています。交通運輸省の会議では「国営企業の株式化を進めないリーダーは更迭だ!」とも吠えています。国営企業関連では幹部の汚職問題も相次いでおり、幹部に死刑が出る大きな裁判も行われたばかり。同首相は国営企業の既得権益層に近い人物と言われているのですが、改革に積極的な姿勢を打ち出しています。


■ベトナム経済の主体は誰が担うのか?

昨年末、ベトナム国会で憲法改正が議論されました。その焦点の一つとなったのが「ベトナム経済の主体は誰か?」という問題です。というのもベトナム憲法には「国営企業が主導的な役割を担う」という条文が今でも残っているからです。

あらゆる所有形態の企業を公平に扱うとする企業法の精神に反している、民間経済の育成を阻むものだとして憲法改正を求める声が上がったのですが、結局改正はされませんでした。ベトナム以上に国有企業改革が進んでいる中国でもまだ憲法には同様の条項が残っています。社会主義経済の歴史とそれに伴う様々なしがらみの強さは相当なものだということでしょうか。

効率という観点では圧倒的なダメ評価を受けているベトナム国営企業。それがこれだけのパイを占めてしまっていては、ベトナム経済の先行きが思いやられます。民間企業の成長を促すとともに、国営企業の効率向上の改革が必要です。とりあえずまずは株式化(ベトナムでは「民営化」はラディカルすぎる単語なので、国営企業改革はまず株式化からはじめることに)し、外部が監視できる体制にしていかなければいけません。

国営企業改革は毎年のように提唱されているわけですが、笛吹けど踊らず。ズン首相はそろそろ「やるやる詐欺」の汚名を返上しなければならないのですが、いかに。

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*本記事はブログ「ハノイで考えたこと」の2014年1月19日付記事を、許可を得て転載したものです。

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