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ベトナム反中デモの真相=反中史観は後付けの論理?反政府組織という「黒幕」(じんじん)

2014年06月10日

南シナ海での中越対立が激化しています。中国企業の石油採掘プラットフォーム設置が引き金となった対立ですが、ベトナムでは異例の暴力的デモが起きるなど事態は拡大しました。

衝突現場での動き、外交的なレベルでの駆け引きは日本でも多く報じられていますが、ベトナム社会の雰囲気、対中感情の変化などについてはなかなかよく分からないのが現状です。そこでベトナム在住の日本人じんじんさんに事件以来感じている社会のムードなどを教えていただきました。

Vietnam
Vietnam / Padmanaba01

Q:

異例の暴力的デモが起きてしまったわけですが、ベトナム人の対中感情は高まっているのでしょうか?歴史的な問題が反中国の機運とつながっているのでしょうか?

A:
対中感情は非常に悪いです。ただし歴史的な経緯ばかりが原因ではないと思います。ベトナムでは「アメリカやフランスはここ100年程度の敵だが、中国とは1000年来の戦いを続けている」という話をよく耳にしますが、どちらかというと目の前の脅威に敏感に反応しているだけ。「よく考えてみれば歴史的にも敵だったではないか」という後付けのロジックではないでしょうか。とにかく、今目の前にある現実的な脅威は中国で、それに対抗しているということなのかと思います。

アメリカやフランスと戦う時には同志として中国から援助を引き出す。今度は中国が脅威となれば、枯れ葉剤を撒かれるなどさんざん国に被害を与えたアメリカにも支援を求めるというような、現実的な対応がベトナム外交の特徴です。侵略された歴史を持つ小国がゆえの生きのびる知恵ではないでしょうか。


Q:
とすると、ベトナム国民の間では今、中国を大変な脅威だと考えるような空気があるということでしょうか?

A:
領土主権というもっともセンシティブな問題が引き金になったのはもちろんですが、一方で地域ごとに事情は大きく異なります。歴史問題など以外のもっとリアルに生々しい要因が積み重なった、「暴動」となるようなケースはそれぞれにバックグラウンドがあったということでしょう。

死者が出るなどの騒動もあったハティン省では元々中国人労働者が大量に入ってきて地元住民との摩擦があったとの経緯もあったようです。同じくデモが激化したビンズオン省の工業区では、低所得の若者がエネルギーがくすぶらせていました。

またアメリカを拠点に活動する反政府組織「Viet Tan」党が扇動の黒幕だと、ホーチミン市公安が断定したそうです。思ったよりデカイ話になってしまったこの反中暴動の結末として、中国側にも申し分が立ち、国内的にも新たな敵を作らないという意味で、この結論はベトナム政府にとっては現状最も都合の良い感じには聞こえます。真偽のほどは知る術もありませんが。

ハティン省はベトナム中部、ビンズオン省は南部なのですが、中国との国境が近い北部ではあまり激しい動きは目立ちませんでした。中国との商売が必要不可欠だという現実的な対応なのかと思います。


Q:
政権が抑え込みに回り、暴力的なデモは沈静化したかのように見えます。これで一件落着となったのでしょうか。それとも再燃の可能性もあるのでしょうか。

A:
ベトナムも中国に負けない警察国家です。公安が本気を出し始めた今、これ以上の大きな混乱はないのではないでしょうか。ただし南シナ海の領土問題、石油掘削、そして中国人労働者といった火種は残っていますから、対中感情は悪いままでしょう。

もし再び表だった動きがあるとするならば、ベトナム政局との絡みでしょうか。記事「ベトナム政局から読み解く南シナ海の中越対立=反中感情が首相の追い風に」で紹介しましたが、ベトナム共産党内部の権力争いに対中外交が利用されている側面は否めません。その絡みで再びタガが外れた場合には、デモにつながる可能性はあるでしょう。

ただし国同士の武力衝突につながる可能性は低いと思います。中国と戦って勝てると考えているベトナム人はいないでしょう。抵抗を続けるならば、ベトナム戦争当時にアメリカ世論をも味方につけたような、したたかな「国際世論工作」が続くのではないでしょうか。

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