「日本人民は侵略の罪も理解しているし中国にも友好的。一部右翼が日本を誤らせている」というのが中国の公式な立場。ところが「日本人民全体がわかってない」という公式見解に反する言説が中国メディアに掲載されるようになりました。
■日本の軍国主義化、その土壌は民衆にある
2014年7月7日付環球時報に掲載されたのが中国人民抗日戦争記念館の李宗遠副館長の署名記事「対日“歴史カード”は倦まずたゆまず切り続けよ」。時事通信の城山英己記者が取り上げていますが、
安倍が大胆・無謀になれるのは、日本社会に次のような認識が存在するからである。第1に、日本が発動した侵略戦争の罪に関して非常に多くの戦後生まれの人たちが、自分たちと無関係だと認識していること。第2に、当時の日本は中国との長期抗戦が敗戦の原因ではなく、米国に負けたと認識していること。第3に今日の経済規模が中国に追い抜かれたことに不満を持っていること。こうした考えは現在の日本社会において非常に深くて厚い基礎を有しており、侵略戦争を否定・わい曲・美化する安倍のために広大な土壌を提供している。
そして7月3日付重慶青年報の記事「
日本に対して友好的過ぎなかっただろうか」にも同様の言及。こちらはブログ「
中国という隣人」が取り上げています。
軍国主義は何もないところからは生まれない。日本の民衆がその誕生の土壌なのだ。最近のアンケートでも、大部分の民衆が「集団的自衛権」の解禁を支持している。感情的に、民衆を軍国主義から切り離すのは、歴史的に事実には合わない。
■公式見解は転換するのか?上述2本の記事の背景にあるのは、日本の集団的自衛権の行使容認です。行使容認そのものよりも各種世論調査で相当数の日本国民が支持しているとの結果がでていることが大きいのではないでしょうか。
中国外交部報道官はいまだに「日本の一部右翼勢力、右翼政治家が~~」という公式見解を踏襲した発言を続けていますが、中国の偉い人の中にも日本の「普通の国」シフトそのものに不満を覚えている数が増えている可能性はありそうです。
公式見解ですと、日中は基本的に友好モードで悪い右翼が妨害しているという話だと「悪代官を成敗すれば平和が帰ってくる」的なお手軽仲直り方法があるわけですが、「日本人全員がわかってない」となると、「もう一回一億総懺悔をお願いします」となるわけで手続きが面倒です。
現時点ではぽつぽつとメディアに載っているだけですが、この論調が広がるのか否か、注目されます。
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