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蹴る殴るで中高生に売血を強要、チンピラグループと採血所副所長を起訴―中国(高口)

2014年08月22日

2014年8月17日、甘粛省武威市公安局は記者会見を開き、中高生に売血を強要した7人を逮捕。うち未成年1人をのぞく6人を起訴したことを発表した(南方週末)。

献血 in 大須万松寺 献血ルーム
献血 in 大須万松寺 献血ルーム / Kanesue

「あれ、売血は禁止されていたのでは?」と驚いたのだが、それは私の不勉強であった。輸血用血液の有償採血は禁じられているが、血漿分画製剤用の場合には今も許されているとのこと。中国以外でも複数の国々で行われている。日本では禁じられているものの、有償採血を原料とした血漿分画製剤を輸入しているという。


■殴る蹴るで中高生に売血を強要

さて事件だが、2013年11月から2014年5月にかけ、中高生10人が売血を強要されたというもの。採血所副所長の黄が「売血してくれる子を紹介してくれたら50元あげるよ」と街のチンピラ(義務教育を途中退学し、無業の輩に身を落とした者)6人をそそのかしたところ、脅したり殴りつけたりして若人を連れてきては売血させていたとのこと。紹介料だけではなく、本来は提供者に支払われる謝礼まで全部チンピラがポッケに入れていたという。有償採血にあたっては身分証を提示しなければならないが、別人の身分証を使ってごまかしていたという。

なおこうした犯罪は初めてではなく、武威市では2008年にもチンピラが未成年14人に売血を強要させる事件を起きている。


■事件の背景

騰訊網のコラムサイト・今日話題がこの事件の背景を取り上げている。現在、有償採血の報酬は血漿500ミリリットルあたり180元~220元と定められている。この規定は1998年に定められたもので、それから値上げはされていないという。

また2004年には政府機関が血漿分画製剤用の成分献血を実施することが禁じられた。製剤用採血所は薬品メーカーに移管されたのだが、それまでは「儲かるわい」と、規定以上の量を抜いたりと必要以上にやる気満々だった地方自治体は一気に興味をなくし、逆に「街中に売血の行列ができるとか見栄えが悪い」と採血所の閉鎖を命じる始末。その典型が貴州省。2004年以前は19もの採血所を擁し、中国の血漿原料需要の30%を供給していたというが、2004年以後15カ所を閉鎖したという。


■政府の信頼

チンピラに勧誘をお願いする事態になったのは、有償献血の報酬を1998年以来引き上げていないことが原因。今日話題はそう指摘しているが、200元という値段がそんなに安いかと言われると疑問だ。

むしろ問題は信頼にありそうだ。1990年代の河南省で売血奨励政策が行われた結果エイズが蔓延する悲劇が記憶にも新しいほか、「無償献血でゲットした血を売って儲ける赤十字許さまじ」「献血は激しく健康に悪い」といったイメージも広がっている。無償献血の不足も深刻で、毎年複数の都市が「血荒」(血液不足)で苦しんでいる。親族や友人に献血してもらって、自分で血を確保しない限り手術はできないなどという切ない話もしばしば伝えられる。

あまり面白みのない結論だが、結局のところ「信頼してもらえる政府となり、献血の啓蒙活動を続けていく」。それ以外に解決の道はないのではないか。

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