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国民国家の狭間はぼくらのすぐ近くにある……安田峰俊『境界の民』が面白い(高口)

2015年03月02日

献本御礼。安田峰俊『境界の民 難民、遺民、抵抗者。 国と国の境界線に立つ人々』(角川書店、2015年)。
面白い!一気に読み終えた。

20150301_写真_ブックレビュー_境界の民

目次
はじめに
第1章 クラスメイトは難民――日本のなかのベトナム
第2章 偽りのシルクロード(上)――迷走するウイグル
第3章 偽りのシルクロード(下)――道具としてのウイグル
第4章 ガラパゴスのコスモポリタン――引き裂かれる上海
第5章 黒いワイルドスワン――軍閥、文革、歌舞伎町
第6章 甘すぎる毒の島――幻想としての台湾
おわりに

2012年刊行の『和僑 農民、やくざ、風俗嬢。中国の夕闇に住む日本人』の続編的な本。『和僑』が海外で暮らす日本人の“面白い人”に焦点を当てた作品ならば、『境界の民』は日本と関連する外国人、無国籍者の“面白い人”に焦点を当てた作品だ。

20歳を過ぎて初めて自分が無国籍者だと気づいたボートピープル2世。在日ウイグル人団体のボスに祭り上げられた男。日本人による社畜的勤勉さでの支援が生み出した在日ウイグル社会のゆがみ。日中ハーフのレゲエ学生の活躍。貴人の血をひく男が上海で風俗店を経営するまでの物語。そして2300万人市民全員が“境界の民”と化している台湾。

一つ一つが大変興味深いエピソードだが、それを我々とは別世界の物語ではなく、すぐ近くにあるのではと感じさせるのが安田氏の筆力ではないだろうか。例えば自分を無国籍者だと気がついたボートピープル2世はその悩みをなんとヤフー知恵袋で質問し、しかもその場のやりとりで「日本に帰化します」とあっけらかんと決めている。

もう一つ、筆者のこだわりをあげるとするならば、「かわいそうとされている人を利用して食い扶持にする輩」への辛辣な視線だ。「ワシにことわりなく難民に声をかけるな」とクレームを入れてきた支援者団体のおっさん。東日本大震災後の上海。企業から賛助金を集めてガワばかりゴージャスな被災地支援イベントを企画し、就職の材料とする若者などを拾い上げてはさらしていく。

扱った材料も良ければ、深い取材にもうならされる。シニカルな視点から掘り起こされた暴露に驚くことも。オススメできる一冊だ。

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