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記事:田中秀喜 の記事

軍事政権が救った命、バングラデシュ製薬産業が発展した理由とは(田中)

2015年07月04日

バングラデシュの意外な輸出産業

バングラデシュ最大の輸出産業といえば縫製産業である。良質で安い労働力が手に入ることから近年競争力を増してきている。そして、意外と知られていないが、縫製産業に次ぐ輸出産業として、製薬産業がめざましい成長をとげている。2002~2010年にかけての製薬業界は年平均26%というハイペースで成長を続けてきた。製薬業界の国内マーケット規模は1000億タカ(約1500億円)。その内97%を国内産業が占める。

バングラデシュの日刊英字新聞The Daily Starによると、製薬産業の2012年輸出額は約50億タカ(70億円)である。2011年現在、製薬産業が輸出に占める割合は0.2%。割合こそ少ないものの着実な成長を続けている。

バングラデシュの薬代は世界一安いと言われている。例えば、風邪薬一本20円で買える。抗生物質も100円程度から買える。この安さのおかげで貧困層でも薬へのアクセスが可能になった。この安さの理由は2つある。一つはバングラデシュが発展途上国で、製薬関係の特許が適用されないこと。発展途上国における医薬品へのアクセシビリティを確保するため、特許による知的財産権保護の適用外にあるのだ。二つ目としては、薬を自国生産していること。これら2つの理由の背景については、後ほど詳述する。

この国の製薬産業が大きく成長するきっかけは一つの法律だった。1982年に制定されたNational Drug Policyによって、海外企業の活動を大きく制限され、国内企業に成長の余地を与えた。まずは1982年当時の状況を振り返ってみよう。


無実だけどブタ箱に、バングラデシュのムショ暮らし(田中)

2015年05月18日

電話がかかってきた。以前、知り合いの日本人の事務所で働いていた運転手からだ(以下、J)。こうして電話がかかってくるのはいつ以来だろう。その日本人の事務所はすでに撤退していたので、Jは別の仕事に就いているはずだ。

電話をとって近況を尋ねると「刑務所にいました」との返答。「え?刑務所?まさか?」とは思ったが、いろいろ話したいことがあるというので来てもらった。おおかた金の無心にやってくることは察しがついていたが、ひとまず保留。その後のやりとりが面白かったので、以下に書き留めておこう。

野党党首を襲撃、票の書き換え……選挙圧勝後に独裁化した与党―バングラデシュ(田中)

2015年05月07日

バングラデシュでは政治的な混乱が続いている。最大の火種は2014年1月の総選挙だ。不公正な選挙だとしてBNP(バングラデシュ民族主義党)など野党がボイコットした結果、与党アワミリーグが議席を占有し独裁化してしまったのだ。その後2014年は大きな政治混乱がなかったものの、2015年になってからふたたび政治闘争が始まってしまった。

総選挙後、野党グループは、オボロット(道路封鎖)や、ホルタル(ゼネスト)と呼ばれるバングラデシュ特有の抗議活動が展開。終わりの見えない抗争が続いていた。オボロットやホルタルが宣言されると、一般市民の経済活動にも多大な迷惑を被る。なぜなら、街中で火炎瓶などが往来の車に投げられたりすることからである。安倍首相の訪問で注目度が上がり、投資先として有望視されて来たところなのに、自分自身で冷や水を浴びせてしまった。

日本人学生がバングラデシュでお茶屋屋台をやってみた(田中)

2015年03月17日

私の会社には時々インターンを迎え入れている。現役の学生がほとんどで、ホームステイをしたり、語学学校に通いながらバングラデシュのビジネスの現場を体験してもらっている。

村へのホームステイではバスのチケットとホームステイ先の電話番号のメモを渡して単身でいってもらう。行った先で「ベンガル人50人ぐらいに囲まれてます!どうしましょう!」などと悲鳴のような電話が来ることもある。「あー、それね、単に外国人が珍しくて集まっているだけやから気にしないで」というやりとりを経験しながら異文化に慣れてもらう。

バングラデシュ情勢が不安定化、独裁色強める与党と暴力的抵抗路線に転じた野党(田中)

2015年03月16日

バングラデシュが再び不安定化

バングラデシュ情勢は2015年に入り、再び不安定化している。1月5日、BNP(バングラデシュ民族主義党)率いる野党連合は選挙のやり直しを求めて集会を開こうとしたが、政府が認可を出さなかったため、無期限道路封鎖を宣言。政府側はBNP党首カレダ・ジアの自宅まわりに大量の警官隊を配備。実質上の軟禁状態においている。

この1月5日は2014年に行われた総選挙から一周年となるタイミングだった。昨年の選挙でボイコットを宣言し不戦敗を喫したBNPと野党連合。「国民全員が参加できる選挙を求め」て、選挙のやり直しを政府にせまっている。一方で「不参加という意思表明をして、国民の政治参加の機会を奪ったのは野党の責任」と政府は意に介していない。意見の咬み合わない与野党の対立は終わりなき政争を産み出してしまった。

1000人が命を落とした縫製工場ビルの崩壊がバングラデシュを変えた(田中)

2014年11月19日

発展途上国はその発展過程に於いてしばしば大規模な産業事故を経験することになる。過去日本においても炭鉱事故などで大きな労働災害を起こしてきた。その経験をもとに法規制や安全意識の大きな変化が発生してきた。別の言い方をすればある種の犠牲なくして発展することはさけられないとも言える。

国土が狭く人口密度が高いバングラデシュでは、縫製工場でも平屋建てになることは殆ど無く、5階建て程度のビル構造になることが多い。それが、バングラデシュ特有の労働災害を引き起こしていた。

例えば、2012年11月ダッカにあるタズリーンファッション社の衣料品工場の火災で117人の労働者が死亡した。原因はむき出しの電気配線へのホコリ引火だがそれに加えて避難経路の問題が犠牲者の数を増やした。
このような100人規模の労働災害は過去にもなんどかあったが、それでもこの国は変わらなかった。だが、2013年4月に起きたラナプラザ崩壊事故はバングラデシュに大きなパラダイムシフトを引き起こすインパクトを与えたのである。

今回は、この事件後の顛末と現地の変化について、記述したい。

バングラデシュとコメ文化、飢えを追い払った化学肥料の力(田中)

2014年11月11日

日本人とバングラデシュ人の共通点として、共に米食文化であることがあげられる。日本語では食事を取る意味で「ごはんを食べる」という。つまり、米の飯を食うことが「食事」の文化なのだ。これはバングラデシュ人も同様で「バット(ご飯)」を食べる事が食事という認識である。

かつては日本人も一年に平均100キロ以上のコメを消費する民族だったが、食生活の多様化に伴い減少した。一方、バングラデシュ人は今でも100キロ以上コメを食べている。

農村で肉体労働者の青年の食事風景をみると、どんぶり飯どころか洗面器なみの大きさの器に山のように飯をもり、平らげているのを時々見かける。こちらのコメはインディカ米で、うるち米に比べてカロリーが少ないため、必要な食事量も多くなるのだ。

中国の“真珠の首飾り”戦略を止めた、安倍首相のバングラデシュ訪問とその狙い(田中)

2014年09月08日

■異例の親密さ、日本とバングラデシュの首脳外交

日本とバングラデシュの外交関係が活発化している。今年だけでも3月に岸田外相がバングラデシュを訪問。5月にシェイクハシナ首相が訪日。そして9月6日に安倍首相がバングラデシュを訪問した。この活発な外交はいったいどのような成果をあげたのだろうか。

安倍首相のバングラデシュ訪問における主要議題は以下の2点だ。

1)ベンガル湾産業地帯構想、チッタゴン港湾地域の超臨界石炭発電所、深海港、石炭貯炭場など総合開発について、6000億円の経済協力。そのほか、400億円の日本向け経済特区の開発。
2)2015年の国連安全保障理事会非常任理事国選挙の不出馬と日本支援の約束取り付け。1978年の選挙で日本はバングラデシュに負けたことがある。アジア太平洋地域の立候補表明国は日本とバングラデシュの2カ国だけ。バングラデシュが不出馬となれば日本の選出は間違いない。

もっともこの成果を字面だけ追っていては異例の密度の首脳外交の背景は理解できない。背景にあるのは中国の「真珠の首飾り」戦略を牽制しようとする日本の外交戦略だ。

外国人ビジネスマンにとっては憂鬱な季節、バングラデシュのラマダン(田中)

2014年07月12日

■ラマダン(断食月)とは

2014年6月29日、バングラデシュではイスラム教の年間重要イベントの一つ、ラマダンが始まった。

ラマダンというのはヒジュラ暦(イスラム暦)の第9月の名称。この月は、イスラム教徒は新月から次の新月が見えるまでの期間断食をする事になっている。ヒジュラ暦は陰暦で、閏月による補正を行わないので毎年10日ぐらい暦が太陽暦に比べて進む。およそ33年で季節が一周する。

断食期間の決め方はとてもアナログで、月を目視して決める。新月がみえてから、次の新月が見えるまでが断食の期間なのだ。各国でイスラム教の長老たちが肉眼で新月を確認し、断食期間のタイミングが発表される。

断食といっても一ヶ月もの間ずっと飲まず喰わずではない。このひと月、日の出から日の入りまでの間、食事や水を飲むことができなくなるのである。ただし、病気や旅行中である場合、子どもや妊婦は対象外とされる。

日が出ている間だけの断食だから季節によって長さは異なる。夏ならば長く冬ならば短いわけだ。現在の断食開始は朝4時前。3時半前ぐらいから起きて食事を促す放送がモスクからかかる。アザーン(礼拝への呼びかけ)が始まるとそこから日没のアザーンまで食事はもうできない。

マフィアの要請受け特殊警察が政治家を暗殺か、バングラデシュを騒がすナラヨンゴンジ殺人事件(田中)

2014年05月30日

ある地方都市で起きた誘拐殺人事件がバングラデシュ全体の政治問題を大きく揺るがすような事件になりかねない事態になり、注目を集めている。この事件、バングラデシュの政治に関わる人々の暗部が垣間見えて非常に興味深い。


■事件の経緯

ナラヨンゴンジはダッカに南東に隣接した、河港のある都市である。ダッカーチッタゴンロードの出発地点であり、古くからバングラデシュ特産のジュートの集積地として栄え、最近では一大縫製工場地帯となり、繊維の街として発展してきた街である。日本で言えば東京都と川崎市のような関係といえば理解が早いだろうか。

この街で4月27日にナラヨンゴンジ市区長を含む7人が誘拐された。のち、31日に彼らは市郊外の川岸、ホテイアオイの群生の中で一人を除き死体となって発見される。死体は腹部を切り開き、中にレンガをつめ込まれた状態で袋に入れられていた。死体が浮上しないように細工をしていたが、何らかの理由でガスが溜まり浮かんできたと思われる。
(ナラヨンゴンジは日本でいう政令指定都市にあたり、市の下に幾つかの行政区が存在する。今回殺されたのはその行政区の首長だった。)

バングラデシュ名物・停電が消える?民間資本開放とロシア製原発(田中)

2014年05月20日

バングラ名物、停電は過去の物?

バングラデシュの4月は一年の中で最も停電が多い季節である。この国は3月中頃から気温がぐんと上がる。特に今年の4月は54年ぶりの猛暑で、連日40度以上を記録した。


■停電が減りました

この猛暑の中、ダッカにおける停電は外国人の多い居留区で1日2~3時間程度だった。この数字はかなり健闘していたと言っていい。5、6年前はその倍は停電するのが当たり前だったのである。

バングラデシュ・ローカル飯屋の作法(田中)

2014年05月09日

■飯屋の作法■

旅先でその地域ならではのものを食べる楽しみは欠かせない。バングラデシュのベンガル料理というのはそれなりにおいしいものなのだが一般的な旅行者やビジネスマンとしてバングラデシュに来た人々にとって、ローカルの飯屋というのはなかなかにハードルが高い。

まずメニュー表が飯屋に存在しない。いったい何が食えるのか、さっぱりわからない。テーブルに座ってもさてどうしたものかと思案してしまうだろう。さらに言葉の壁。ローカルの飯屋で働いている連中ではさすがに英語を理解するものも少ない。つまり、オーダーする方法さえもないわけだ。

本記事ではそんなバングラデシュ初心者のために飯屋の作法を手ほどきしたい。
 

バングラデシュ政治の意外な展開=「異常」な選挙と「平穏」なその後(田中)

2014年03月24日

■バングラデシュ政治の意外な展開=「異常」な選挙と「平穏」なその後(田中)■
 

途上国も飽食の時代、バングラデシュのハイカロリー美食とダイエットブームの目覚め(田中)

2014年02月17日

■途上国も飽食の時代、バングラデシュのハイカロリー美食とダイエットブームの目覚め(田中)■
 

世界第2位の大混雑!500万人が集結する巡礼祭ビッショ・イステマ―バングラデシュ(田中)

2014年02月12日

■世界第2位の大混雑!500万人が集結する巡礼祭ビッショ・イステマ―バングラデシュ(田中)■

会社を乗っ取られないために、独立戦争時代のバングラデシュ人に要注意(田中)

2014年02月04日

■会社を乗っ取られないために、独立戦争時代のバングラデシュ人に要注意(田中)■

試験地獄が生み出す公平な社会、バングラデシュの超学歴社会と少子化(田中)

2014年01月21日

■試験地獄が生み出す公平な社会、バングラデシュの超学歴社会と少子化(田中)■

バングラデシュ名物リキシャに驚きのイノベーション!社会の変化を象徴(田中)

2014年01月14日

■バングラデシュ名物リキシャに驚きのイノベーション!社会の変化を象徴(田中)■

「短パンでもいい、耳の穴だけは守れ!」バングラデシュの不思議な防寒対策(田中)

2014年01月07日

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軍事政権か、それとも民主主義の危機か=総選挙目前のバングラデシュと与野党の攻防(田中)

2014年01月04日

■軍事政権か、それとも民主主義の危機か=総選挙目前のバングラデシュと与野党の攻防(田中)■

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