2010年7月12日、中国最大の黄金生産企業・紫金鉱業は汚染事件について正式に発表した。汚染事故の発覚から発表までに9日もかかったこと、当局が受験生に「魚を食べ過ぎるな」と事故を知っていたかのような通達を出すなど、多くの奇妙な問題がつきまとっている。13日、南方週末が伝えた。
12日午前、紫金鉱業株が売買停止となった。同社は中国最大の黄金生産企業にして、世界500強企業にもランクしている大企業。午後、同社は記者会見を開き、福建省龍岩市で起きた汚染事件について公式に発表した。福建省環境保護庁のサイトも事故に関する報告を掲載している。
環境保護庁のサイトによると、3日午前、紫金鉱業集団株式有限公司所有の銅鉱山にある汚水をためた池の逆浸透膜が破損。漏れ出した水が付近の川とダム湖を汚染し、魚の大量死を招く事故になったという。新華網の報道によると、死んだ魚の数は約190キロに達するという。
第一財経日報の取材に答えた紫金鉱業の劉栄春副総裁は、大雨という自然災害が原因であり、事故は予見不可能だったと弁明している。現地政府は死亡した魚については500グラムあたり6元(約78円)、養殖の魚については500グラムあたり12元(約156円)で回収しているという。その資金についてはとりあえずは県政府が負担し、最終的な賠償額が確定した後に紫金鉱業に請求することになる。
現在、現地市民が最も不安視しているのは、「魚が大量死する水を人間が飲んでも問題はないのか」という点にある。中広網に掲載された上杭県防疫駅の伝衛国福江機長によると、魚は銅汚染に弱く、1リットルあたり0.1グラムで中毒を起こし、死亡するという。しかしこの程度の量では「気持ち悪くなるかもしれないが、中毒にはならない」とコメントしている。
今回の事故は紫金鉱業による初の汚染事故ではない。雑誌・新世紀の報道によると、中国文化保護部は今年5月、紫金鉱業の汚染事故を報告している。同鉱山の汚水処理システムは昨年9月に稼働停止されており、汚染された排水は直接ダム湖に排水されていたという。今年5月、中国環境保護部は環境面で問題のある上場企業11社を名指しで批判したが、紫金鉱業はその筆頭にあげられていた。
問題はこれだけではない。今年の大学入試試験(6月7日、8日)直前、上杭県にある20以上もの高校は現地教育局から緊急の通達を受け取った。内容は「大学入試を受ける学生は魚を食べ過ぎないように」との注意だったという。事情に詳しい関係者によると、雨期に突入したため、紫金鉱業の排水が流れ込んだダム湖から重金属を含んだ水が上杭県河川に流入、魚の大量死を引き起こしていたことが原因だという。
なぜ魚の大量死が確認されてから9日が過ぎてから公表されたのだろうか。紫金鉱業証券部の趙挙剛総経理は「問題が発生した時、まず原因を調査し、明らかにしてから市民に伝える。そうすればパニックにならない」と弁明した。
福建省環境保護庁のサイトによると、河川の水質は改善されつつあり、飲料水への影響はないという。あるメディアによると、龍岩市政府と紫金鉱業はきわめて深い関係にあったという。元上杭県副県長の鄭錦興氏は2006年から2009年にかけて紫金鉱業理事会主席の座にあり、主席の職を去った現在は武平県副県長についている。