• お問い合わせ
  • RSSを購読
  • TwitterでFollow

「裁判所なんて意味がない」?酷すぎる中国の官僚=悪辣な地方政府に怒った農民が決起

2010年07月20日

中国といえば、「法治」(法による統治)ではなく「人治」(権力者の裁量による統治)が特徴。そうした現実を象徴するかのような事件が起きてしまった。

省政府の一部門である国土庁が裁判所の判決を無視、それどころか判決と真反対の裁定を農民に強要した。もはや行政も司法も頼りにならないと絶望した農民は武器を持って決起、86人が負傷する騒ぎとなった。

saibankansaibanin2

※写真は当記事とは関係ありません。


2010年7月、陝西省国土庁は裁判所の判決を拒否し、会議によって決定をくつがえそうとする暴挙に出た。もはや法律では身を守れないと考えた農民たちは17日、「械闘」(村同士や家族同士など、対立するグループが戦うこと)を引き起こす騒ぎとなった。

事件の発端は2000年。陝西省楡林市横山県の北窯湾炭鉱は採掘許可証の更新を迎えてきた。これに目を付けたのが山東省出身の李釗。公印偽造、申請書改ざんなどの手段で採掘許可証を獲得し、炭鉱を自分のものとした。

問題を知った樊河村の村民は、連名で当局に修正を要望した。横山県鉱産局はただちに同意、また市鉱産局も省国土庁に報告した。省国土庁はただちに修正すると口頭 で約束しつつも、解決を引き延ばし続けた。仕方なく、炭鉱の正当な所有者だった樊占飛は省国土庁を訴える行政訴訟を始めた。

2005年、市中級法院は判決を下し、省国土庁による採掘許可証の発行は個人の合法的権益を侵すもので、法手続きに違反していると認定。李に与えた採掘許可証を取り消すよう命じた。省国土庁は上告したが却下され、2007年に判決は確定した。

しかしそれから2年余り、敗訴した省国土庁は一向に採掘許可証の修正を行おうとしなかった。それどころか今年3月、「採掘権紛争和解会 議」を開き、裁判で勝訴した樊占飛の炭鉱立ち入りを禁止、保証金800万元(約1億円)を支払うことで、李の採掘権を認める独自の決定を下した。ある国土 庁関係者は「裁判なんか意味がない。裁判所には裁判所の法律があるが、俺たちには俺たちのやり方がある」とうそぶいたという。

ことここにいたり、もはや行政や司法は問題を解決してくれないと絶望した農民たちは決起。17日、武器を持って炭鉱に乗り込み、争いとなった。事件により87人が負 傷。うち63人が村民(重傷6人)、炭鉱労働者が24人となった。「械闘」の首謀者ら8人が警察に拘束されている。

 尊重判决是公民和政府机关的责任_评论频道_凤凰网

ikki

この問題は「国土庁事件」(中国語は「国土門」)と呼ばれ、注目を集めている。「人治」の問題性と法が軽んじられている現実を映し出したものと言えよう。

近代以前の中国の史料を読むと、「官逼民反」という言葉がよく使われている。反乱は「民衆が地方官の暴政に耐えかねたことが原因」だと主張する常套句だ。この言葉には「国のトップである皇帝は悪くないのだが、地方官が民を虐げた」という意味が内包されており、皇帝統治そのものには罪がないとのエクスキューズ となった。今回の事件もまさにその「官逼民反」モデルで処理され、悪代官「国土庁」は中国共産党の温情ある統治を妨げた存在として成敗されることになりそうだ。

日本人ならば、「官逼民反」はまさに水戸黄門の世界観ではないかとすぐに気づくだろう。『水戸黄門漫遊記』は韓国の『春香伝』をモデルにしたと言われているが、「善き王(またはその代行者)」が悪代官を成敗し下々を救うというストーリーはきわめてありふれたものだ。中国でも「康熙微 服私訪記」という水戸黄門まんまのドラマが人気を博している。

問題は21世紀の中国にもまだ悪代官、そして悪代官と結びついた越後屋(炭鉱を奪った李は恐らく国土庁高官に深いつながりがあったのだろう。まさしく越後屋的ポジションだ)があちらこちらに跋扈しており、裁判でもとがめられないということ。つまり、中国は今なお水戸黄門を必要としている。広大な国土に腐敗が横行する中国。民の怒りが高まる中、必要な水戸黄門の数は10ダースではきかないのではないか。

(chinanews)

*追記
ブログ「中国という隣人」さんが、この件についての記事を書いています。私が参照した記事にはなかった内容だと思うのですが、国土庁が裁判所の判決を無視したロジックが紹介されているのですが、これが大笑い。「登記を改ざんした時に炭鉱の名前を変えた。元の所有者に返還しろという裁判所命令は元の名前の炭鉱に適用されるもので、名前を変えた炭鉱には適用されない」というトンチが効きまくった話だそうで。思わずずっこけました。
ここからは台湾の正名運動みたいなのですが、炭鉱の名称は李釗が所有したときに「横山県波羅鎮北窯湾炭鉱」から「横山県波羅山東炭鉱」に変更されています。

省国土庁は、「市中級法院と省高院の判決文で行動で示せと言われたので樊占飛の北窯湾炭鉱採掘権を回復させた、羅山東炭鉱の所有権は李釗が持ってる。だから判決は成立しないよね」と小学生以下の理屈をこねてくるのです。

中国という隣人: 陝西省国土庁は裁判所の判決に干渉するな

コメント欄を開く

ページのトップへ