ある銀行での話。1人の紳士がたった1ポンドだけ預金した。その後、数十年に1回、紳士は現れ、預金の更新手続きだけしていく。その姿は以前と全く変わっていなかったという。

数百年後、銀行の資産の大半は利息で膨れあがった紳士のものとなっていた。そして、前回現れた紳士は「次回、来る時に預金を引き出します」と予告している。彼の資産を引き出されれば銀行は倒産だ。
前回の来訪から数十年後、紳士は予告通りに現れた。以前と全く変わらぬ姿で、だ。銀行の頭取は震える声で聞いた。「ひょっとしてあなたは未来人ではないですか?タイムマシーンでこの時代にやってきたのでしょう。どうして私たちの銀行を潰すようなことをするのですか」、と。
紳士はうなずいた後、言った。「いえ、タイムマシーンの開発費を支払わなければならないので。」
上記は子どもの頃に呼んだ短編SFのあらすじ。うろ覚えで、タイトルも作者名もさっぱり覚えていませんが(笑)。さて、なぜわざわざこんな話をしたかというと、もしその未来人が中国の銀行に預けたとしたら、資産は増えるどころか、目減りして涙目になっていたはず、というお話をしようかと。
北京市に住む斉清さんは銀行に口座を持っていた。2000年2月29日時点の残高は100元(約1250円)。それから9年間、斉さんは一切口座の金に手を触れることはなかった。2009年8月、思い立って預金通帳に記帳した斉さんはびっくりした。100元あったはずの預金はたった60元(約750円)余りしか残っていないではないか。
銀行にお金を預けておくと利子がつくはず。なんで減っているのかという内訳が面白い。まず9年間の利息はたったの6元(約75円)。これもひどい話だが、2006年3月より「小額口座管理費」として四半期ごとに3元(約37.5円)が差し引かれていたという。計14回、42元(約550円)の管理費が差し引かれていた。
これには斉さんもお冠。「預金したまま放置していた金になんで管理費がかかるのよ!」と怒っている。
市民小额账户存钱被收管理费 钱越存越少(12日付人民網)
いやはや、これでは未来人もお手上げですね。実は私も全く同じ経験をしたことが。2005年から2008年まで交通銀行にきっかり100元を預けていました。で、どれだけ増えたかなと楽しみに見てみると目減りしていてがっかり。窓口のお姉さんに「あなた、解約しなさいよ」と言われる始末でした。
手数料もさることながら、毎年少なくとも3%は物価が上がっている中国で、この利率はないだろうというのも不満なところ。「小口口座管理費」が引かれなくとも、物価上昇率を引くと銀行預金は実質目減りしてしまいます!これでは中国の庶民が血眼になって投資に走るのも理解できますね。
さて、2006年に導入された「小口口座管理費」がなぜ今さらやり玉に挙げられているかというと、最近、中国では銀行が「独占業種」であることを生かして、むやみやたらに手続き費用を徴収していることが原因。
ATMで他行の預金残高を調べたり、引き出したりする時の手数料が必要になったというのが発端だったはずですが、
13日付華夏時報によると、小銭両替費、通帳交換費、小口口座管理費、ローン証明書交付費などさまざまな名目でお金を取られているのだとか。かつては20項目程度だった手続き費は現在200項目程度にまで増えているそうです。
14日付新華日報には、ある銀行スタッフの証言として、手続き費用が増えた理由が明かされています。
これまでこうしたサービスは手続き費を取りませんでした。それは各銀行が顧客を奪い合う手段としていたからです。しかし、現在では預金・貸出業務は政策的な規制が強く、先行きが不透明です。そこで銀行はこうしたサービスから利益を上げる方向に転換したのです。莫大な利益をあげることが可能ですし、またこうした業務にはリスクがありません。
なるほど、貸出業務で利益を上げようにも、バブル対策として「住宅ローンはダメ、絶対」とか、「貸していいのは年に**億円まで」とか言われてしまうと確かに辛いでしょうね。
銀行の理屈も理解できますが、一方で食い物にされる中国人の顧客の怒りも理解できるところ。
ん、なになに? 「おまえら日本人はATMで自分の金を引き出すのに手数料払ってるじゃん!とっくに飼い慣らされているじゃん!」ですって。ごもっともでございます。

(Chinanews)
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