中国、新興国の「今」をお伝えする海外ニュース&コラム。
2010年08月17日
対外情報発信を加速させる政府系企業
この新華社の報道を受け、欧米のメディアがさっそく反応している。英フィナンシャル・タイムズは、両社の取り組みは、商業的な影響力よりも政治的な影響力の方がはるかに大きく、これは中国政府のプロパガンダ政策だと報じている。
中国国内のネット社会における反政府的な意見を抑制することが狙いで、そのために国内最大のメディアグループを利用する動きだと指摘している。
また政府系企業による対外情報発信に向けた動きが顕著になってきていることもここ最近の変化だと伝えている。
例えば、新華社は今年になって、英語放送のテレビネットワークを立ち上げている。また8月の第2週には政府系メディア関連の投資ファンドが、米ニューズ・コーポレーションの中国におけるテレビ3局の経営権を取得することで合意した。
中国が国営の検索エンジンを開発へ 欧米メディアは「プロパガンダ政策」と指摘 JBpress(日本ビジネスプレス)
JBプレスの記事でも触れられていますが、昨年話題となっていたのは、中国国営メディアの海外配信強化という話(関連記事)。きっかけになったのはチベット暴動と北京五輪聖火リレーで、中東のテレビ局アルジャジーラをモデルに、中国の立場を世界に伝える独自メディアが必要という論調でした。
一方で、中国国営メディアも今や市場競争の時代。プロパガンダだけで飯が食えるわけではなく、必死に稼がねばなりません。海外配信強化策も中国政府が国営メディアにプランを出すよう求め、新華社が合格、資金を得たという段取りでした。ですから検索サイトサービス参入も、プロパガンダと商業目的、どちらの比重が高いのか、なかなか判断がつかないというのが私の意見です。
ただし、モバイル検索の戦いは始まったばかりとはいえ、パソコンではグーグルの手一体騒ぎもあり、百度がシェア70%を占めるなど盤石の体制。今さら新規参入しても商業的に勝てるはずがないという判断も十分頷けるものではあります。
しかし、なにせ「世界最大の官僚国家」中国だけに、一発逆転の可能性が残されていても不思議ではありません。思えば、グーグルの検閲受け入れ、さらには撤退騒ぎはあれやこれや山盛りの嫌がらせを受けたため。今までは「外敵」に対抗する「国産検索サイト」として支持される立場にあった百度ですが、国営企業との競争ではやり玉に挙げられる可能性もゼロではないか、と。
現時点では私の妄想に過ぎませんが、ミラクルが起きるのか、今後の推移に注目したいと思います。