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2010年08月21日
今回は専門家1期と2期の合格ラインを30点引き下げたとのこと。結果、舟曲県受験生は824人全員が大学に合格。内訳は優先募集合格者24人、本科1期 19人、2期98人、3期86人、専門科1期239人、専門科2期358人が合格となっています。甘粛省全体の合格率は61.5%だったということで、 「30点引き下げ」がどれほどの効果を持っていたのか推して知るべし、でしょう。
こういう措置が果たして合法化というご質問でしたが、四川大地震でも青海地震でも前例もあり、違法ではないはず。ただしそれでみなが納得するのか、公平性が担保されるのかは別問題です。
そもそも「高考」があったのは土石流のずっと前。四川大地震や青海地震のように、災害が試験に影響したということもないわけで。ネット掲示板をのぞくと、「舟曲県の高考優遇措置、どうよ?」といったスレッドが乱立。厳しい意見も少なくないようです。
19日付帮考網は「教育部は被災地の全受験生を合格に=入試の公平性をめぐる論議呼ぶ」を掲載、この問題を追及しています。つまみぐいしますと、
・四川大地震では被災地の高校入試、大学入試の日程が延期され、合格ライン引き下げ、加点、異例の合格、試験免除などの優遇措置が取られた。青海大地震では被災地受験生の合格ラインを引き下げたほか、被災地学生のみを受け付ける定員増員も行われた。舟曲の優遇措置もまた前例を想起させるものとなった。
・教育部の政策は、被災地学生への配慮という善意に根ざしている。しかしその善意は入試の公平性と明らかに矛盾している。
・鳳凰網が実施したネットアンケートでは、49%が全受験生合格という優遇措置は不適切なもので、入試は公平性を第一のものとしなければいけないと回答した。古代の科挙同様、金持ちも貧乏人も同じように運命を変える権利を持つ、その公平性こそが高考えの魅力だったはずだ。
・ネットユーザーの声。「国家のための人材を選ぶことが大学入試の任務。同情すべき困難があっても公正性を失わせてはいけない」「俺は大学合格無理そう。うちにも土石流来いよって願っているよ」
・青海地震後、玉樹第二民族中学校の尕瑪朋措くんはクラスメートの脱出を誘導、さらに廃虚から4人を救出した。青海省を訪れた清華大学専門家グループは彼に会い、「優れた品格を持ち、心は太陽のようだ。危機を恐れず、勇気にあふれている。また学問への意欲も強い。なにより時持ちに強い愛着があり、将来は青海省で仕事するつもりだ」と高く評価。通常の受験なしで中国一の名門・清華大学への合格を決めた。
・尕瑪朋措くんの品格と気力を否定するわけではないが、英語で論文を書けるレベルにある同級生と同じ大学に入って、彼の自信は打ち砕かれないだろうか?むしろデメリットのほうが多くはないだろうか。
・入試は能力のみを見るべきだ。被災者への配慮は別の方法でもできる。全員合格のような優遇措置は被災者にとっても、その他の受験生にとっても、公平性を欠くものだ。
といった感じ。大学の大衆化は進んでいるとはいえ、まだまだ「大卒」という看板に幻想がある中国。今回の「いきすぎた」温情措置に納得できない人も多いようです。