中国、新興国の「今」をお伝えする海外ニュース&コラム。
2010年08月28日
今後の改革開放を語る前に、まずニセの命題の過ちを指摘しなければならない。「民主化こそ今後の改革における唯一の選択肢だ」「改革できるものは全て改革した。残されたのは難題ばかりだ」「政治改革こそ急務だ」、こうした考えはいずれも誤っている。
中国共産党にさまざまな問題があるのは事実であり、嫌うのは自由だ。しかし世界で最も活力にあふれ、学習能力が高い政権党であることは認めなければならな い。天安門事件のような政治危機、アジア経済危機や世界金融危機などの経済問題、湾岸戦争などの軍事問題、SARSなどの社会問題もすべて対応してきた。 まだ活力を有している中国共産党は自ら政権党を降りることはないだろう。となれば、政治改革こそ手を付けられない難題なのだ。逆に中国共産党には14億中国人を中産階層にするという歴史的使命がいまだ残されている。
もちろん長期的には民主化が必要だが、短・中期的(少なくとも25年)は経済成長と社会の安定を確保するという基礎を準備する段階である。この課題を達成出 来なければ、民主化などおぼつかない。また今後3世代の中国政府トップはテクノクラート出身になると見られるが、彼らは社会の改善を担う役割。政治改革は 2035年前後に就任する「80後」(1980年代生まれ)のトップが担うこととなる。
では、それまでの政治指導者は何をなすべきか。それは社会の改善を続けることであり、政治改革の準備をすることだ。最大の任務は14億人を「豊かにする」 こととなる。改革開放以来、中国の企業は力をつけてきたが、なお政府機関や国有企業による独占の弊害は消滅していない。また非政府組織(NGO)など社会的な力を敵とするのではなく、政府の助けとするようにしなければならない。
経済的潜在能力の開発、政府の独占権力の抑制、メディアを規制と検閲から開放すること、社会の自主的な管理能力を強化すること。これが今後20年間の中国人指導者が歩む道だ。