人気ブログ「梶ピエールの備忘録。」の管理人にして、中国経済研究者の梶谷懐氏の連載コラム「「壁と卵」の現代中国論」が面白い!のでご紹介。
「
第1回 自己実現的な「制度」と中国産食品の安全性」では、まず「壁と卵」という村上春樹の言葉を連載タイトルに採用した背景を説明。壁=システムが合理的なものとして形成されるのではなく、歴史的な経緯から作り出されること。そしてひとたび形成されれば人々はそのシステムを前提に行動するようになるという、「歴史制度的分析」の手法で考えてみたいと述べています。
その具体例で紹介されているのが、日本における中国産野菜の価格です。
・他国と比べ中国食品のリスクは高くなかった
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・段ボール肉まんや毒ギョーザ事件などの報道で不安感形成
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・実際のリスク評価や個別業者の評価とは無関係に、中国産野菜全体の価格が低下
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・産地偽造へ
と、「事件」がシステムを作り上げていく経緯をわかりやすく紹介しています。
「第2回 中国の「搾取労働」とグローバルな正義」では、「血汗工場(スウェットショップ)」の問題を取り上げています。
「途上国からの搾取をやめよ」と抗議デモする米国の大学生。「先進国の水準から見れば低賃金だが、現地住民の生活工場には役立っている」と指摘する経済学者。「厳しい条件でも頑張って働く中国人労働者に共感」した日本人学生。
異なる意見を紹介しつつも、経済学者としての立場から正しい考えを押しつけないのが面白いところ。第2世代出稼ぎ農民の出現など中国国内の変化にも目を配りつつ、異なる意見と感覚を併存しうる道があるのではと示唆しています。
「中国社会はこうだっ」「グローバルな経済関係はこうなっているんだっ」と一刀両断にするんではなく、こんがらがった複雑な問題を理解しようぜと勧められているような印象を受けました。
第1回、第2回ともに結構な分量で、読み応えあり。これが無料で読めるというのは、もう破格のサービスと言えるのでは。オススメですっ!
(Chinanews)
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>「中国社会はこうだっ」「グローバルな経済関係はこうなっているんだっ」と一刀両断にするんではなく、こんがらがった複雑な問題を理解しようぜと勧められているような印象を受けました。
まさに目指しているのはそういう路線です。これからもできるだけいろいろなトピックを取り上げていくるもりですので、よろしければお付き合いください。