中国、新興国の「今」をお伝えする海外ニュース&コラム。
2010年09月02日
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成長によって問題が消えることはない
新興経済体の急成長期が過ぎた後には、危機が出現するのが一般的だ。成長の鈍化を危機の要因とする向きも多いが、本当の原因はそこにはない。急成長期に積み重ねられ続けた問題が、成長の鈍化を招き危機を誘発する。高成長は問題を隠していたに過ぎない。そのため政策決定者はなるべく高成長期を引き延ばし、成長によって問題の解決を試みる傾向にある。
現在、中国が直面している問題は、実際のところ、他の経済体が高成長期に経験した問題と大差はない。他国の歴史が教えてくれるのは、成長によって問題が消えることはないという事実だ。成長する期間が長ければ長いほど、問題の解決も難しくなる。もし成長によって問題の解決を図れば、必ずインフレを招く。短期的に見れば、米ドルの低迷は通貨流通量の拡大を招いた。キャッシュの増発を制限する外部的な圧力が弱いため、このままならば中国にバブルを招くことになるだろう。資産価値上昇が利益の源となり、さらに投資を加速させる。こうなれば経済の崩壊は免れられない。
2002年から2010年にかけ、中国の通貨供給量は3倍に拡大、年平均19%の伸び率を記録している。もし地下金融活動をも計算に入れるならば、伸びは年平均22%に達している。同時期の名目GDP成長率は年18.5%。公式統計だけを見るならば、貨幣供給量と名目GDPの伸びはほぼ一致しており、心配することはない。しかし、問題は以下の2点にある。(1)名目GDPは不動産市場の影響で膨張している。不動産市場にバブルが出現している今、貨幣供給量の急速な伸びもまたバブルである。(2)実際の貨幣供給量の伸びは公式統計よりも大きい。
(2)の問題を考えて見よう。2002年から2010年の中国電力消費量の伸びは年平均13%だった。歴史的に見て、中国の実質GDPの伸びは電力消費量を上回り続けている。両者には一種の弾性係数が存在すると考えられる。1990年代の弾性係数は0.8、GDPが10%伸びると電力消費が8%伸びるという関係だった。新たな経済成長の時期には、電力消費が大きい重工業の発展が先行するため、弾性係数も上昇する。しかし1.0を超えることはないと予測している。ゆえに過去8年の実質GDP成長率は年平均13%以上と算出される。この値を用いてGDPデフレーター(名目GDPを実質GDPで割ったもの。インフレの程度を示す物価指数として使われる)を算出すれば、なんと4.5%という高水準にあったことが明らかとなる。
現在、インフレは主に不動産とコモディティ市場で発生している。2002年から地価は10倍に上昇、不動産市場の加熱が目立つ一部沿岸都市では30倍に達した。さらに投機が目立つ地区では100倍以上に達している。一例を挙げると、浙江省の農村の大部分がそうだ。その地価は1ムーあたり1000万元と10年前の100倍に達した。農村が都市計画に組み入れられたゆえの地価上昇だと解釈しても、異常な水準にある。これら浙江省の農村の地価は、英国都市部のほぼ10倍の値段に達している。あらゆる先進経済体の中で、英国の地価は最も高い。つまり、中国の地価は主要経済体の中で最も高いと言えよう。中国の平均給与が先進国の10分の1しかないにもかかわらず、だ。
利益が投資を加速させ、投資が雇用を増やし、そして雇用が消費を向上させる。しかし、こうした循環の出発点にあたる利益の源が、資産価値の上昇によっているとのであれば、成長は続かず必ず危機に直面することになる。長期的な繁栄は往々にして大規模なバブルを生み出すものだ。危機に対する注意が薄れている時には、過剰なまでにリスク資産を求める動きが広がるもの。こうして資産バブルが発生し、繁栄は通常の周期を超えて持続する。周期の延長が長ければ長いほど、バブル崩壊後の調整の難度は拡大する。
中国の銀行融資の半分は、おそらく不動産関連業界や土地を担保とした地方政府へと流れ込んでいる。現在の繁栄が、中国に日本を抜く世界第2位の経済体という地位をもたらしたとはいえ、この周期における過度な行為はなるべく早く修正される必要があるということをしっかりと覚えておくべきだ。銀行業の繁栄は土地の値上がりという持続不可能な経済活動に基づいていることは明らかであり、脆弱である。こうした問題を解決するべく、中国は今、主体的な経済調整を行わなければならないのだ。