中国、新興国の「今」をお伝えする海外ニュース&コラム。
2010年09月27日
中国で一般市民など新たに台頭した外部勢力が、中央政府の影響力を著しく高めているとした報告書を、スウェーデンのストックホルム国際平和研究所(Stockholm International Peace Research Institute、SIPRI)が6日、発表した。国際社会への積極参加を求めるこうした勢力は、中央政府の外交政策決定にも、少なからず影響を及ぼしているという。と、ネット世論など「ニューパワー」を高く評価したAFPに対して、フィナンシャルタイムズは厳しい見方。
同研究所で中国問題を担当するリンダ・ヤコブソン(Linda Jakobson)氏は、フィンランド・ヘルシンキ(Helsinki)でAFPの取材に応じ、「今では党幹部でさえ、多様な意見を考慮せざるをえない状況だ」と話した。
新たな外部勢力とは、国家機関のみならず民間団体、地方自治体や有識者からメディアやネットコミュニティを通じた一般市民まで幅広い。こうした人びとからの「声」は、ある程度、党幹部の耳にも届いているという。
中央政府における政策決定は依然として非公開であり、共産党や人民解放軍などの既存勢力に対し、新勢力の意見が、どの程度まで政策決定に反映されている のかは定かではない。だが、ヤコブソン氏は多方面からの意見を聞き入れざるを得ない中国政府は、もはや一枚岩の組織ではないことは明らかだと指摘した。
台頭著しい新勢力は、党中央部との個人的なコネといった従来のチャンネルだけでなく、新聞への投書、ブログ、公の場での演説、テレビ討論会など、多様な場で意見を表明し、中央政府への影響力を強めている。
これらの開かれた媒体によって、中国は、ある程度の多元性と公な議論を容認する国家へと変遷を遂げつつあると、ヤコブソン氏はみている。
中国で台頭するニューパワー、外交にも影響 シンクタンク
中国の国民生活においてインターネットは強い力をもつようになった。中国のネット世論はただでさえ荒っぽいが、日本のような歴史的ライバルから何か嫌な目 に遭わされたと思うやいなや、彼らは感情的に激高する。フランスのニコラ・サルコジ大統領がダライ・ラマと会談した後に中国政府が2008年の中仏首脳会 談を中止したのは、怒り狂う中国ネット世論に配慮してのことだろうと、多くの中国アナリストは見ている。こちらも同じストックホルム平和研究所のリンダ・ヤコブソン氏を引きながら、全く違う結論に達しているのが面白いですね。
自分たちがいかに世論の圧力にさらされているか、中国政府当局者はしばしば他国政府の相手に嬉々として語る。
し かし中国で世論が外交政策に与える本当の影響力は、過大評価されがちだ。ネットの騒ぎがどれほど沸騰しようと、中国政府は国内議論の方向性を自在に操るこ とにかけて実に長けている。中国での検閲は、特定の話題に触れるべからずという直接命令の形をとることもあるが、もっと巧妙なやり方もある。そういう場合 の当局は、国民に言いたい放題させてすっかりガス抜きをしてから、それ以上の議論は禁止するのだ。
2005年の大規模な反日行動にもかか わらず、胡錦濤総書記はその3年後に、日本とエネルギー分野における互恵協力を約束した。エネルギー開発こそ、まさに今回の紛争の発火点なのだが。特定分野に関する国民感情がどうであれ、その高ぶりがいざ鎮まれば中国政府は政策を転換することもできる。これまでもそうしてきたし、今後もそうかもしれない。
なによりも中国世論にばかり注目すると、中国の外交政策を今後左右しようとする別の国内勢力を見逃してしまう。中国が世界で影響力を発揮するにあたって、政府にかかる圧力はネット世論だけでない。多くの既得権益を抱えるエリートたちが、外交を動かそうとしているのだ。
中国エリートたちは国民の声をかき消すこともできる
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WEBRONZA編集部