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2010年10月06日
しかし、現実的には中国の都市化は経済成長から大きく遅れている。改革開放後、経済成長に伴い多くの農村人口が都市部に移転した。全人口に占める都市人口の比率は1976年の15.4%から2008年の44.9%にまで上昇。平均年1%のペースで移転が進んでいる。
その一方で、都市と農村を厳格に区別し自由に戸籍が移動できない制度は残されたまま。そのため現状の都市化は「偽りの都市化」にとどまっているという。すなわち、都市部に住む出稼ぎ農民は都市人口に数えられず、また都市に戸籍を持つ住民が得ている各種公共サービスを受けることもできない。収入水準、消費モデルも都市住民とは大きく異なる。
「偽りの都市化」を解消し、都市は積極的に農村人口を受け入れる必要があると報告書は指摘。本当の意味での都市化を推進し、都市部の基本的公共サービスを出稼ぎ農民とその子女を含めた全ての人々に提供しなければならないと提言した。
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重慶市では、10年間で1000万人の農村戸籍者を都市戸籍に移転させる大規模な社会実験が始まりましたが、中国のエラい人も戸籍問題解消を相当前向きに考え出したよう。といっても問題は山積み。
・今のペースだと、解消には何十年もかかるが、その間、出稼ぎ農民は不平等な待遇に甘んじないといけないのか。例えば、現地に戸籍がない出稼ぎ農民の子どもは学費が高かったり、公立学校に入れなかったりという問題があります。上海市などでは対応策がはじまったようですが。
・都市戸籍取得は農地分配権の放棄を意味するわけですが、「やっぱり街で暮らすのは無理だわ」となった時にもう帰るところがないわけで。そういう人のセーフティーネットをどうするか。
・中国の都市に大量の農村人口を受け入れる余力があるのか(国家発展改革委員会事務局長が戸籍制度撤廃の動きに苦言、なんつー記事もありました。現行の都市では受け入れられないから、鎮(農村の小都市)をもっと発展させようぜという動きも)。
戸籍制度問題は中国にとって最も根が深く、深刻な問題の一つ。解決は一筋縄では行かないでしょうが、でも、さすがに限界は近づきつつあるんじゃないか、と。ポスト胡錦濤時代には道筋をつけないとダメでしょう。
*上記記事はレコードチャイナの許可を得て転載したものです。