中国、新興国の「今」をお伝えする海外ニュース&コラム。
2010年10月12日
野菜価格の高騰は異常気象が原因。白菜生産量は例年と比べ、40%も減少する見通しだ。こうした異常気象はなにも韓国に限られるものではない。ロシアやウクライナの干ばつは小麦生産量の減少を招き、世界的な小麦価格高騰を招いている。パキスタンの大洪水も米生産に大きな影響を与えるものとなった。
韓国政府は、「キムチ危機」を輸入によって解決しようとしている。10月1日、韓国政府は白菜と大根の関税撤廃を発表。中国から白菜160トンを緊急輸入した。人口4000万人あまりの韓国が、巨大な供給地である中国から白菜を輸入することは決して難しいことではない。問題は中国だ。もし中国の穀物価格が高騰したとすれば、中国はどこから輸入できるのか?13億人という膨大な人口を誰が養うというのだろうか?
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韓国の「キムチ危機」は中国からの輸入で一息ついた(生産量が10万トン減ったということなので、そう簡単には通常価格には戻らないと思いますが)かもしれませんが、白菜を「分捕られた」中国で価格が上がっています(12日付鳳凰網「韓国泡菜荒帯動山東白菜価格毎噸上漲150元」(韓国キムチ危機で山東省の白菜価格が上昇=トン当たり150元の値上がり))。
「中国の冬=白菜」というぐらい、中国人は白菜を食う(昔は冬の野菜が白菜しかなかった。一家で100キロとか買いだめして冬越しするのが風習でした)だけに、白菜価格が値上がりするとちょっと大変かも。まあ生産量も膨大なので、ちょっとやそっと輸出しても大丈夫なのかもしれませんが。
思い出したのが、TBSラジオ「Dig」の8月26日付放送「食料自給率から日本の農業を考える」。出演者の浅川芳裕さんの著書「日本は世界5位の農業大国 大嘘だらけの食料自給率」は大変面白くて、ブログに取り上げたこともあります(こちら)。
ただこの日は番組の仕切りが悪かった。「農業にもっと市場原理を」と訴える浅川さんに対して、相手役(スケープゴート?)にされた柴田明夫さんは「いつ食糧危機になるかわからないんだから、全力で食糧増産を」という主張。
「市場原理じゃ回らなくなるような食糧危機が将来予測されるのか?」が問われなければいけないはずなのに、「農業に市場原理導入はあり?なし?」ばっかりが話されていた。
浅川さんの主張は「技術革新により農業生産量は増え続けている。世界的な食糧不足はありえない」というのが前提になっているわけで、その検証が必要だったはず。その意味で、今回の「キムチ危機」はちょっと不安にさせられますね。
中国も今年は天候不順だったので、年末からまた食料価格高騰が話題になるんじゃないかな。13億人の胃袋を任せられる国は世界中どこにもないでしょうから、食料安全保障は日本以上に深刻です。