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喜んだら即アウト!北京大が小説「1984」ばりの「表情罪」を導入した?!

2010年10月25日

まずは劉暁波のノーベル平和賞受賞に伴う、奇妙なニュースをご紹介。


Watching the Sun Set / gfpeck

「学生の中に一体どれだけのスパイがいるんだ」と顔を強張らせる学生たち。それもそのはず、北京大学は「臉罪(顔の罪)」なるものを制定し、劉曉波氏の受賞に“尋常でない喜び”ようをみせた者に対し、面談を行うという。学生たちは、「自分たちがどんな表情だったかをなぜ大学側が知っているのか」と驚いている。

綜合外電が報じたところでは、20日、北京大学は民主活動家劉曉波氏がノーベル平和賞を受賞した8日当日、外で集まってお祝いパーティーをした学生たちの奨学金申請資格を一律取り消しにすると発表した。更に、当日“尋常でない喜び”が見られた者については、大学が面談を行うことになり、これまでに少なくとも7人の面談が決まっているという。


面談が決まった学生は「今はヘタに話もできず動けない」と話す。皆で集まってご飯を食べることができなくなっただけでなく、顔の表情まで厳格にコントロールしなければならないのだ。今後更に面談者が増えると考えられ、楽観できない状況である。
Techinsight » 【アジア発!Breaking News】「顔が罪」劉曉波氏の受賞を喜んだ学生に処罰。(中国)
このテックインサイト・ジャパンの記事、ライブドアニュースにも流されたので、それなりに見た人が多いのではないでしょうか。元になったツイート、私も翻訳して流しました。10月8日、劉暁波のノーベル平和賞受賞の夜には、祝宴を開いたツイ民が拘束されるという事件もあっただけに、信じられないけどありえそうと思った人も多いのではないでしょうか。

しかし、このニュース、ネタである可能性がきわめて高いのです。

そも「臉罪(顔の罪)」とはなにかということですが、これは小説『1984』にでてくる「表情罪」のこと。表情だけではなく、内面までしばる「思考罪」まである究極の監視社会が舞台です。中国を知っている人間がこの小説を読むと、小説の世界と中国とを比較してしまいますね。『1984』ほど人々を縛ってはいない中国ですが、「技術と根気のない人間には有効に機能するネット検閲」とか、ある部分では小説を超えているところもあるかな、と。中国ツイ民は検閲をつかさどる中国共産党中央宣伝部を「真理部(真理省)」と呼ぶなど、『1984』用語は結構流通しています。

一報が流れてからしばらく経つのですが、続報がでてこないところを見ると、北京大の「表情罪」はさすがにネタだったもよう。ニュースブログ「政府醜聞」がそのあたりを考察しています。中国ツイ民の間では信じている人も大勢いますが。かくいう私も「多分ネタだろうけど、ひょっとするとひょっとして」と思っておりました(笑)。奨励金の取り消しは十分ありえる事態ですけどね。

というわけで、テックインサイト・ジャパンが「騙された」のもむべなるかな。ただちょっと許せない部分も。ネタ元が「綜合外電(総合外電)」となっていますが、これは「外国語ニュースを総合したもの」という意味。「総合外電」が伝えたという言い方はおかしすぎます。「綜合」と繁体字が使われていることからもわかるとおり、記事は台湾ゴシップ紙・アップルデイリーの記事と見られます。ちゃんとアップルデイリーって書けばいいのに。そのさらにネタ元の博訊までいくと、ちゃんと『1984』のことも書いてあったり、もう少しわかるようになっているのですが……。

まあ、私もネットメディアの翻訳者として働いていますし、本ブログでも間違えていることが多いでしょうし、なにより「表情罪」のツイートを「ネタかも」と注釈入れずに流した責任もあるので、あまり人のことを批判できない立場ですが、自己批判も含めての記事ということで。


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<過去記事>
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Kinbricks Now:インストール義務化の検閲ソフトに擬人化キャラが登場=盛り上がる日本的パロディ

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