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2010年11月03日
山東省諸城市では行政村を改編。1249カ村を208の農村社区に再編した。同市に住む70万人の農民たちは暮らしてきた村を離れ、新たに建設された「社区小区」(団地)に引っ越すこととなった。諸城市のような「農村取り壊しと居住地合併」は現在、全国の20省・市以上で実施されている。
農村での土地収用が広がっている背景には、2004年に公布された国務院の通知「改革の深化に関する土地管理の決定」があるという。中国は食料確保のため、耕地18億ムー(約1億2000万ヘクタール)確保の目標を掲げている。そのため農地から住宅地、工業地、商業地への転換する面積は厳しく規制されてきた。
2004年の通知により、新規開拓農地面積を別の場所での農地転用面積に充当することが認められた。ある村の住宅地を農地に転用すれば、別の村の農地を商業地などに転用できるという寸法だ。
この規定は一部の認可された試行地域にのみ適用されるものだが、大々的な都市開発が可能になるとして乱用されるケースが目立つという。今年6月までに中国国土部は第3期試行地域となる18プロジェクトを認可したが、土地用途転換の詳細が地方政府に任されていた第1期、第2期と異なり、中国国土部の認可を経ることが義務づけられたという。
問題は乱開発だけではない。2004年の通知では農地転用によって得られた利益は農民に還元することが求められていたが、守られていないケースが目立つという。広がりを見える中国地方政府による「エンクロージャー(土地囲い込み運動)」。我が家を奪われる農民たちには反発が広がり、各地で抗議活動が相次いでいる。
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最近、「山東新農村建設」などの問題性を訴えるツイッターの書き込みが多くのリツイートを集めるなど、調べる必要を感じていたのだが、新京報の記事は要点をよく押さえている。
2004年国務院通知に基づく制度の適用により、都市開発の必要がない田舎の農村までもが土地収用の対象になったのだろう。こうした動きは農民たちの予想の範囲外であり、新築したばかりの家やインフラを整備したばかりの村から引っ越す必要が生じる。
同制度を適用すれば、どれほど田舎の農村であっても、地方政府にとっては土地収用を実施するメリットが生じる。つまり、影響は7億人と呼ばれる中国の農民全てに及ぶものとなる。このまま制度の乱用が広まれば、農民の抗議活動はこれまで問題が起きなかった地域にまで、広範囲に広がっていく可能性が高い。
需要あるんだろうか
GDPを伸ばすための開発?