中国、新興国の「今」をお伝えする海外ニュース&コラム。
2010年11月04日
発端となったのは、「中央銀行、43億元を超過発行=インフレを誘発させる」という短い記事。日本語訳を紹介すると、
というもの。この記事を受け、「中国は異常やでー」「白菜の値段が上がったのも、住宅価格高騰が停まらないのも、中央銀行が紙幣印刷機をフル回転させているからないけ!」というネットの声、追いかけ記事があふれまくることに。
中央銀行の統計によると、今年9月末時点で、マネーサプライ(M2の統計)は69兆6400億元(約844兆円)に達した。国家統計局が発表した第3四半期時点のGDP26兆8660億元(約326兆円)を元に計算すれば、通貨の超過発行額は42兆7740億元(約521兆円)に達している。
全国人民代表大会財経委員会副主任、中央陸家嘴国際金融研究院院長の呉暁霊氏は、「過去30年間、我々は過剰な量の通貨供給によって経済の急速な発展を推進してきた」と率直に話す。
ある学者は近年の通貨超過発行の最大の要因は、金融危機後のデフレを懸念してのものだったと考えている。
超過発行現象の解決策について、周其仁氏(北京大学教授、中央銀行貨幣政策委員会委員)は、比較的合理的な政策の組み合わせとして、さらに多くのリソースを市場に動員することで、絶え間なく超過発行が続く通貨を消化することだと指摘した。
雑誌・週刊『新世紀』マクロニュース部の朱長征主任の説明。って感じのはず。
・GDPはフロー指標。M2はストック指標。両者の間に直接的な関係はない。
・でもね、M2・GDP比(M2の伸び率をGDPの伸び率で割ったもの)はインフレ状況をはかる国際的な比較指標として使われている。
・中国のM2をGDPで割った比率は1993年に100%を突破。2002年に150%。2009年に180%。米国など先進国と比べると高すぎ。現在の米国は60%程度。中国の比率は過去10年間、高水準で推移してきた。
・となれば、資産価格の上昇やインフレにつながるんじゃないかと心配していますわ。
「マネーサプライとは金融機関と中央政府を除いた経済主体(一般法人、個人、地方公共団体等)が保有する通貨の合計」(ウィキペディア)。なので銀行融資が増えればマネーサプライは増加するのであり、現在の中国はそれが主要因。ゆえに中央銀行を責めるのはおかど違いという話をいただきました(多分)。3. Posted by 梶ピエール 2010年11月05日 01:00結論から言うと財新網の解説が正しいと思います。M2マイナスGDPという数字に経済学的な意味は まったくありません。貨幣数量説によればMV=PQ(Mはマネーサプライ、Pは物価水準、Qは取引量、Vは貨幣の流通速度)となり、VとQが一定ならばM の増加はインフレをもたらしますが、Qが増えていたり流通速度が低下している場合は必ずしもそうではありません。
財新網で出てくるM2とGDPの比率はマーシャルのkとも言い貨幣の流通速度の逆数ですので、これは意味のある数字です。Vの低下は、一般に取引が銀行 預金を通じて行われるなど「貨幣深化」を通じて生じますが、資産バブルなどが生じ、貨幣の発行増が物価水準の上昇に反映されにくくなることも要因のひとつ です。ですので、あまりに過大なM2/GDP比率はバブルを懸念してよい状況だ、というのはその通りかと思います。
4. Posted by 梶ピエール 2010年11月05日 01:03なお、M2の過半は銀行預金なので、特に金融危機後これが増えているのは、政府の景気刺激策に呼応した地方政府が「融資プラットフォーム」などを利用することを通じ、銀行貸し出しの拡大に歯止めがかからなくなったからです。ですので、「中央銀行が紙幣印 刷機をフル回転させている」こととは直接の関係はありません。
5. Posted by 梶ピエール 2010年11月05日 01:15上のコメント。「直接の関係はありません」というのは言いすぎでした。ただ、重要なのは銀行貸し出しが増えることなので、「紙幣印刷機をフル回転させているからマネーが増える」というのはイメージとしてややミスリーディングだと思います。
情報が透明な社会だったら万博前にバブル弾けてるのバレテたと思います。