中国、新興国の「今」をお伝えする海外ニュース&コラム。
まずは簡単に連載を振り返っておきます。第1回の「反日感情燃えたぎってますか?中国のギャルに聞いてみた―中国人民は日中対立をどう見ているのか?」では、「80後」(1980年代生まれ)のギャル・Sさんの話を聞きました。日本好きの彼女ながらも事故のニュースを聞いて、「中国心」(中国人魂)が反応したとのこと。
また船長の勾留延長決定後、中国でのニュース報道が増え、彼女も周囲の人と「日本人はなんで船長をすぐに釈放しないの?バカなの?」と雑談していたことを教えてくれました。とはいえ、基本的にはのほほんとした様子。インタビューしたのが船長釈放後ということもあって、「まだそのネタ、気になっているの?」ぐらいののんきさが印象的でした。
第2回の「ネット検閲を超えられない人たち=中国ツイッタークローンのつぶやきを読んでみた―中国人民は日中対立をどう見ているのか?」では、中国版ツイッター「新浪微博」のつぶやきを紹介。「日本」という検索ワードで表示されたタイムラインのうち約10分間のつぶやきを全部紹介するという企画でした。キティちゃんネタや日本料理なんかもある一方で、「ぶっ殺す」「小日本を倒せ!」「日本人をぶちのめす映画を見るとすっきりする」などという過激な発言が多かったのが特長。
ちなみに余談ですが、Sengoku38氏による衝突ビデオ流出後に同じく新浪微博を検索してみましたが、日本に対する罵倒の言葉などは非常に少なく、関心がきわめて薄かったことがわかりました。逆に、船長釈放から間もない10月初頭時点では怒っている中国人が多かったと言えるでしょう。
第3回の「荒れ狂う反日感情は恐怖でしたか?日本人留学生に聞いてみた―中国人民は日中対立をどう見ているのか?」、第4回の「反日デモが起きても街の空気は変わらなかった=日本人留学生が見た反日の国―中国人民は日中対立をどう見ているのか?」では日本人留学生にインタビュー。事件のことはよく知らないというぐらいののんきさ、むしろ親のほうが心配していますという状況でした。
第2回の新浪微博で過激な話しがあったものの、Sさんと日本人留学生の話はのんきそのもの。記事が遅れたので、記憶があいまいになっているかもしれないが、当時の日本メディアは「船長釈放を求めて怒る中国の民」「反日デモで怒る中国の民」とともかく中国の民が怒っているとの報道でした。この温度差をどう理解するべきでしょうか?
日中をまたにかけ活躍するミュージシャン・ファンキー末吉さん。そのブログに大変興味深い記事があるので引用します。
だが多かれ少なかれ日本のマスコミはこのように日本のマスコミは自分で描いたストーリーで、中国の状況を決めつけてない?本当にそんなに騒いでいると思う?ちがーうっ!というお話。中国滞在経験が長く、日頃から中国人とお付き合いしているファンキー末吉さんの言葉だけに大変重みを感じます。
「落ちどころを決めてから取材をする」
というところがあるように思える。
数年前、反日感情が高ぶってデモとかが起こっている時、
サッカー場かどっかで日本人が殴られているシーンをテレビで放送されたことがあったらしい。
ちょうど同じ日にワシは、
布衣のライブを初めて見て感激し、
彼らと一緒にどんちゃん騒ぎをしていた。
思えばその飲んでた店でも中国のテレビでデモのニュースを流していた。
反日感情を持っている人もいるし、
日本人ドラマーと大喜びで酒を酌み交わしている人もいるし、
その人達に喜んで酒や料理を運ぶ店の人もいる。
「中国各地でデモが起こり、中国じゅうが反日感情で湧いている」
というのはどう考えてもウソなのである。
日本のマスコミ ファンキー末吉BLOG ~ファンキー末吉とその仲間たちのひとりごと~
*太字はChinanews
(9月24日、早朝にオーストラリアから北京に戻った時のこと)驚いたのが、北京空港から地下鉄で移動している間に暴漢に囲まれたことです。僕は中国のテレビなどにもよく出演しているので顔が知られています。ブログなどに自分の予定を書いているのでそれでいつ帰ってくるのは分かったのかもしれませんが、それでも僕が北京空港に着いたのは朝の5時ですよ。そんな朝早くに待ち伏せしていたようです。 8人くらいの男に囲まれて胸ぐらまでつかまれました。中国マスコミともパイプが深く、中国ウォッチャーとしても活躍している加藤さんは、ファンキー末吉さんと真反対の見解?!いったいどうなってるの?!
(…)
僕が今、肌で感じているのは、今後日中関係は2005年より悪化するかもしれないということです。
日中関係は2005年以上に悪化する(日経ビジネスオンライン、10月7日)
*太字はChinanews
全中国人にもしアンケートが取れたとしたら、これには完全に同意です。中国人と話したり、ネットの議論を見ていても、最大の関心事は、物価や給料、家を買えるかどうか、医療費や学費が高すぎるといった生活のこと。卑近な話以外では、中国も民主化して欲しいとか、官僚の汚職許さまじとか。興味があるのは国内の問題であって海外のことではありません。
大多数の中国人はこう言うだろう。
「日本なんか関係ない。
俺は明日自分が豊かになることの方が大切だ」
と。