中国、新興国の「今」をお伝えする海外ニュース&コラム。
社会的な問題をうまく娯楽として融合させ、教育という普遍的なテーマをインドらしく解釈した作品に仕上げた。
家のため、親のため、夢を捨てて良い学校に入り、良い成績をとるだけの人生に一石を投じ、学ぶということ自体の楽しさ、夢を持つこと、しがらみを背負い込んでいるのは実は自分自身なのだということなどを、男同士の友情を通してコメディタッチで描かれている。
豊かになってはいるのに、夢や目標、学校へ行くことの意味を見失いがちな日本でこそ上映してほしいと思った。
いくつか気になったことを。
全体的に完成度が高くはなっているが、あまりにもいろいろなエピソードを詰めすぎているため、少し冗長な感じがする。もうすこしコンパクトにまとめたほうがすっきり締まりがあってよかったのではないか。170分だと日本での公開はちょっとつらい。
冒頭の新入生イジメはインドの学校ではよくあることなのだろうか?
またラブロマンスはインド映画のお約束ではあるが、無理やり押し込めた感はする。会場ではカリーナのドアップでなぜか笑いが起きた。彼女の化粧、下アイラインの太さと濃さはなんとかならないものか。
アーミル・カーンは40歳を越えてなお大学生の役ができるのはすごい。『Rang De Basanti』でも大学生役だったが、おちゃらけた学生が次第に政治に目覚めていく先の作品よりは今回の方が似たテイストを持ちながらもより楽しく見ることができた。
ラストシーンとなるラダック地方はたびたびインド映画にも登場するが、幻想的な風景は本当に美しくて一度行ってみたい。
この映画でキーフレーズ的に使われる「All is well」を字幕の松岡環さんは夜回りのおじさんがなまって言っていたことと、少しくらい失敗したっていいんだよという意味を含めて「すべて良し」→「すべってよし」と訳されたと映画上映前の作品紹介コーナーでおっしゃられていた。私なら「問題ないさ」「うまくいってる」「イイあんばい」とかにするかな~ などと生意気に思ったりした。
インド映画の原点でもある笑いあり涙あり、そして幸せな気分で観終えることができる作品だった。今回限りの上映で終わってはもったいない。