中国、新興国の「今」をお伝えする海外ニュース&コラム。
2010年11月22日
中国人民銀行の発表した統計によると、預金準備率は1999年に7%。そこから2008年まで右肩上がりに上がり続け、2008年6月7日には17.5%を記録。2008年9月にリーマンショックが起きると、引き下げに転じ、同年12月には15.5%に。そして、今年に入り、引き上げに転換。今回の引き上げで18%となりました。
これだけばたばた動いているのは、中国のインフレ傾向が鮮明なものになったためです。消費者物価指数(CPI)の伸びを3%以内に抑制するという目標はおろか、11月には5%に達するという観測まで浮上しています。しかも、庶民感覚では「物価の上昇は数%どころじゃないだろ!」というのが本音。
「うちの街の豚肉価格、春先から倍ぐらいになってるんだけど」「うちもっす」「牛乳と卵もたけーよ」といった恨み節がネットにはあふれています。統計をごまかしているとまでは断言しませんが、一般市民の怒りの増幅率は5%では済まないのは明らかです。
思えば、リーマンショック前の中国では、「CPI」が流行語になったり、温家宝首相が「物価抑制が政府の最優先任務だ!」とかっこつけてみたりとインフレ対策が大変なことになっておりました。素人の感想ですが、国際的な金融危機で先遅れにされていた金余り(流動性過剰)とインフレの問題が再び焦眉の課題になったのかな、と。
インフレというのはひとたび予期が形成されると、なかなか止められないもの。中国政府はさまざまな政策を打ち出していますが、輸出と投資が経済を支えているわけでそこに手を突っ込む抜本的な対策はなかなか打てないでしょう(中国の投資主導経済についてはこちらを参考に。「壁と卵」の現代中国論第4回)。となると、民草にとっては尖閣問題の100倍以上関心が高いインフレ問題ですが、その退治は厳しいのではないか、と。となると、ことは経済問題を超えて社会問題、政治問題にまで発展します。いやはや、任期2年を残した胡錦濤政権にとっては、最後の大問題となるのではないでしょうか。