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2010年11月30日
10月20日夜11時、陝西省西安市の大学生・薬家鑫(21歳)は、車で彼女に会った後、帰宅中に交通事故を起こした。衝突したのは電動自転車で帰宅中の女性・張さん(26歳)。交通事故の怪我は骨折ですんだが、その後に本当の悲劇が待っていた。薬は最初逃げようと考えたが、ナンバープレートを覚えられているかもしれないと思い直し、持っていた果物ナイフで8回も刺した。張さんは出血多量で死亡。薬はその後、闘争しようとしたが、集まってきた人々に囲まれ身動きが取れなくなり、警察が拘束。11月25日、殺人罪で逮捕された。(11月30日付正義網を参照)という内容。
薬は音楽学部の学生。成績優秀で、学部1年生の時にはクラス87人のうち上位10人しか獲得できない乙級奨学金も獲得している。両親はともに学卒の高学歴者で、父は実業家、母は研究機関職員という恵まれた家庭で育っている。事故を起こした車も両親が買い与えたものだったという。(11月30日付新華網を参照)
交通事件がきっかけの問題といえば、「70マイル事件」(参考過去記事)や「李剛事件」(参考過去記事)のように、親が権力者で事件をもみけそうとしたという展開が多いが、今回は事件を引き起こした薬の非常識さ、人間性の欠如ばかりが浮き上がる事件となっているようだ。
取り調べに、薬は「農村の人にぶつかったのではと怖かった。彼らは始末に負えないから」と供述したという。つるし上げられるんじゃないかという恐怖ゆえの行動だったという話だが、それで人を刺し殺すという行動に出るものだろうか。裕福な家庭で育った薬は、農民を同じ人間とみなしていなかったのだろうか。正直、あっけにとられるばかりで、まったく理解できない事件だ。