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「お金を稼いで母さんを楽にしたかった」17歳の「地上げ屋」が告白―中国

2010年12月03日

今まで中国の強制土地収用とそれにまつわる事件を何度もとりあげてきました。それだけこの種の事件が多いということなのですが、今回はちょっと視点が違う、興味深い記事をご紹介します。立ち退き拒否住民を襲う地上げ屋に所属していた17歳の少年の告白記事です。12月3日付華商報を参照しました。


Red Hammer / MarcusYeagley

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・母の訴え
 「息子はまだ17歳ですが、学校に在籍していた時、誘われて取り壊し企業の「騒ぎ屋(撑場子)」「頭数(充人頭)」になりました。立ち退き拒否住民の家の前で爆竹を鳴らし、門に大便をひっかけ、刃物や棍棒で玄関を壊す仕事です。毎回でかけるたびに不安になります。何度言い聞かせても言うことを聞きません。どうしたらいいでしょうか?」

2日、西安市に住む50代の女性・李さんは息子・小強(仮名)くんのことを心配し、本紙に電話をかけてきた。「私は貧しくて死んでもいいんです。それでも息子にこんな無法なことはさせたくないんです。まっとうな仕事を探して、いい人生を送って欲しい。」李さんはそう話した。


・地上げ屋の収入
李さん宅を訪れた記者を前に、小強くんは地上げ屋として働く日々について話し始めた。 「自分も「アニキ」にくっついてこの仕事をしているだけです。仕事は簡単。くっついていくだけ。頭数になれば、騒げばそれでいいんです」と小強くんは話す。

地上げの仕事を始めてしばらくたってからようやく内情が分かったというが、通常、地上げ企業の経営者は仕事を数人の「アニキ」に振り分ける。現場を取り仕切る「アニキ」は何人の人手を連れてこなければならないかノルマが決まっている。人手が足りなければ、仕事は別の「アニキ」のものとなる。

地上げ企業から「アニキ」に支払われる金は、現在の相場だと1人100元(約1200円)。うち20元(約240円)は「アニキ」が受け取り、「騒ぎ屋」には80元(約960円)が与えられる。もし子分が別の子分をを勧誘すると、その支払いから20元の仲介料を受け取れるという(ネズミ講のような構造。アニキ―子分の場合、分け前は20元―80元。アニキ―子分―孫子分の場合、20元―20元―60元となる。Chinanews注)。なおこの金額はたんに嫌がらせと家を壊すだけの場合の金額。相手に暴行を加える場合には、1人あたりの金額は200~300元(約2400~3600円)にはねあがる。

仕事は週に2~3回程度。交通費が支給されるほか、食事も1回与えられるという。通常、「騒ぎ屋」の月収は3000元(約3万6000円)前後に達する(週2~3回、1回80元だと計算が合わないのですが。Chinanews注)。別の人間を勧誘していれば収入はさらに増える。小強くんの「アニキ」は仲介料の収入だけで月2万元(約24万円)弱の収入を得ているという。

・地上げ屋の仕事
立ち退き拒否住民が早く協議書にサインするよう脅かすため、「騒ぎ屋」たちは出動する。毎回、100~200人が一緒に動くという。

夜12時ごろ、住民宅の電気が消えたのを見計らって爆竹を鳴らす。そして棍棒や刃物で家を壊す。たいていの場合、立ち退き拒否住民は恐れて外に出てこないという。嫌がらせの仕事が終わると、「騒ぎ屋」たちはすぐに土地収用指揮部に走って帰る。もし誰かが追いかけてきたら、指揮部のガードマンが立ち入りを防ぐという寸法だ。暴行を加える場合、「アニキ」は別の省の人間を呼び寄せる。仕事が終わればすぐに帰るため、後で犯行者を探しても見つからない。


・仕事のリスク
もちろん仕事では危険な目にあうこともざらだ。立ち退き拒否住民が人を集め、ハンマーや刀で武装して待ち受けていることもあったという。ある時は刃物で武装した40~50人が待ち構えていたうえ、う ち1人は人の背丈ほどもある関公刀(三国志の英雄・関羽が持っている大刀。いわゆる青龍偃月刀)を持っていた。 小強くんのアニキは、立ち退き拒否住民に切りつけられ、足を負傷したという。


・少年の後悔
記者:なぜ地上げ屋を始めたの?」

小強:学校でやることがなかったし、数時間の簡単な仕事で数十元の金をもらえるから。だから友達と一緒に参加した。

記者:お母さんが心配するとは思わなかったの?

小強:家が貧乏だったから。お金を稼いで母さんを楽にしたかった。母さんもお金を稼げと言っていたから。当時はそんなにいろいろ考えなかった。

記者:君に脅かされて、立ち退いた人になにか言いたいことは?

小強:ただ、ごめんなさいとあやまりたい。

記者:お母さんはもうこの仕事を続けて欲しくないと言っているけど、どうするつもり?

小強:まっとうな仕事を探すつもりです。母さんに心配をかけたくないから。

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といった感じ。過去記事「【孔明の罠】ド田舎で本当にあったリアル仁義なき戦い―中国・雲南省」も、「仕事のない若者」が抗争に駆り出されているという話でしたが、結局、こういう汚れ仕事は「貧乏で仕事がない若者」に押しつけられているという構造があります。「むごい地上げ」と「就職難」という異なる社会問題がリンクしているわけですね。

小強くんの話は矛盾していることも多く、すべてが信じられるわけではないと思いますが、それでも地上げ屋のイメージをつかむうえでは大変貴重な告白だと思います。土地収用指揮部(当局)に逃げ込むなど、当局と地上げ屋の癒着もばっちし明かしていますし。ここまで率直に話して、彼の身の安全は大丈夫なのかと不安になるほど。

小強くんのやったことは明らかに犯罪であり許されないことですが、「貧乏な家を助けるため、相手に悪いと思いながら、地上げをしていた」という告白は身につまされます。今日も中国全土で何万人もの小強くんが地上げに加担しているわけで……。どうにかならんものでしょうか?


(執筆者:Chinanews) Twitterアカウントはこちら
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<過去記事>
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 コメント一覧 (3)

    • 1. 犬彦うがや
    • 2010年12月03日 19:36
    • あー、これは映画化するわ
    • 2. Chinanews
    • 2010年12月04日 14:47
    • >犬彦うがやさん

      シティオブゴッドみたいな映画にするには、「騒ぎ屋」ってちょっとかっこわるいよね……
    • 3. yoshibon
    • 2010年12月04日 20:55
    • やりきれない話ですね。

      小説化するなら、花村萬月あたりか?

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