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「初めての中宣部」言論統制の最高権力機関、その神秘のヴェールの内側をのぞいてみた―中国

2010年12月11日

中国共産党中央宣伝部(略称は「中宣部」)という部局がある。簡単にいえば、メディア統制の最高機関といったところか。
中国共産党中央委員会に直属し、中国共産党の思想や路線の宣伝、教育、啓蒙を担当する機構。
国内の新聞、出版物、テレビ、映画、インターネットなどメディア全ての監視を行う。文化部、国家広播電影電視総局(広電局)の監督権を持ち、メディアに対して党の不利益になる幹部の腐敗や台湾問題などの情報の扱いを禁止する権限を持つ。
日本語版ウィキペディア「中国共産党宣伝部」
その内情は明かされることはほとんどない。北京大学ニュース学院副教授だった焦国標氏は「『中宣部』を討伐せよ」との論文を発表したが、中国国内では発禁処分となり、北京大学の職を失うこととなった(「『中宣部』を討伐せよ」の邦訳は『「中央宣伝部」を討伐せよ!』(草思社、2003年)に所収。)


人民大会堂/Great Hall of the People/人民大會堂 / kanegen


さて、そこまで過激な内容ではないのだが、中宣部に関する興味深いブログ記事がアップされた。作者は北京外国語大学国際宣伝研究センターの喬木主任。中宣部に呼び出され、中宣部ビルに立ち入った見聞録だ。あっという間にブログは削除されてしまったが、転載されたものが残っている。これをブログ「わがだいえっとウォーキング2010」のJunさんが翻訳されたので、ご紹介。

『初めての中宣部』

『初めての中宣部』について
(消されちゃったのでもう一度アップ。ただ惜しい事にブログのコメントはみんな飛んでしまった。)

通知;親愛なる新浪ブロ友へ 2010-12-08 18:01
貴殿の「初めての中央宣伝部」は管理員によって削除されました。貴殿には不便をおかけし、深く御詫びいたします。(最初の投稿はブログプロバイダーの新浪網によって削除された。この通知は削除後に表示されたもの:Chinanews注)

『初めての中宣部』
北京外国語大学国際ニュース宣伝学院修士課程コースの仕事で、5つの試験校関係者が中宣部と教育部の会議に呼ばれた。以前は出張や私の職階が低い、またはその他の事情で参加することはなかったのだが、11月25日に通知があり、会議に参加するよう連絡された。議題や日程は書いてあるものの、中宣部の住所は書いてない。たんに同部の**棟**会議室で開催されるとあるだけ。参加者は事前に連絡せよとのこと。

ボスは忙しいので私一人で行く事に。公用車は使えないし、でもタクシーはもったいないし、自分のクルマじゃ駐車場探すの大変。で、バスでいくことにした。

でも、中宣部ってどこにあるのよ?アメリカの衛星写真の地図以外に、中国の地図じゃどこにも出てないよ。まあ、党中央から近いはずだし、というか、党中央そのものだろうけど。でも具体的な住所書いてないよ。どの通りなのよ。事前に受けた電話だと、番号は8桁全部がゼロ。わざとヒミツにしてるのか、やっぱ人には言えないんだ。おっかなびっくり通知に書いてあった番号に電話して、「中宣部ってどこにあるの?」って聞いてみた。

回答は「車でどう走らせて、どこを曲がって、云々」というもの。またおっかなびっくり「クルマじゃなくてバスなんだけど」と言うと、相手が驚いたのがわかった。しばらくうなった後、「どのバスに乗ればいいのか、下りてからどう歩けばいいのか」教えてくれた。

まず地下鉄で北京の中宣部から遠くない某繁華街で下りた。目指す場所からはそう遠くない。でも探し出せなかった。何人かに道を聞いたけど、誰も知らない。しょうがないからもう一度おっかなびっくり電話。その指示どおり歩くと、表札のでてない大きな入り口があったよ。武装警察が警備しているから、ここそうなんだ。

誰かが迎えてくれないと入れない仕組みになっている。我が党は長年地下政党だったから、いまや政権政党になったのに依然として地下秘密工作の良き伝統を保っているんだ。でもいまや中国で最も権勢並ぶものない機構で、その影響力たるや、万能たるインターネットでもどうしようもないぐらい強力なんだけどね。

直接、そのナントカ楼の会議室へ。広く明るいし装飾も凝ってるし、設備も最新。壁の上には大きな文字で「責任山の如く、働くこと牛の如く、細心なること髪の毛の如く、ヒミツを守る事瓶の口の如く、団結すること一の如し」と書いてあった。

このスローガンについて何もいうことはないよ。私も「守る事瓶の口の如し」に徹します。でも、どうやって「団結すること一の如し」するのかな?「守る事瓶の口の如し」だから会議の内容は言えないよ。始まってしばらくすると閉会になった。

食事の時間になったけど、招待されないと思った。前に教育部に行った時もそうだったから。中国の役所はエラい人がきたらすげー大ゴチソウ出るし、帰りには記念品という名の貢ぎ物の山だけど、下っ端がきたって、とくに委員会なんかは「入るに難く、顔は見がたく、話は聞きがたし」。座らせてくれて水でも飲ましてくれたら御の字だ。

ま、公金での飲み食いを少しでも減らしてると思えば、大成功ってわけね。教育部や宣伝部の1~2時間の会議のためにわざわざ上海の復旦大学から御見えになった先生方は、それでもマジメに元気にとことんやりぬいておられる。

会議終わって退場、明るく豪勢な中洋折衷建築様式の庭をみると、すごい数の高級車。最低がアウディだ。全部「京○」(市公安局など北京市当局関連:Chinanews注)か軍のナンバープレート。ここ警察とか国防部じゃないんだけど。この標識つけたら違反も信号無視もやり放題、パトカーが先導してくれるんかなあ。

出口の大ホールには、各地方からの献上の宝物がいっぱい。一例をあげると、雲南の大理から送られてきたでっかい大理石。すごい山並みのような色とりどりの模様に彩られて鎮座ましまして、まるで山水画の様。見る者を愉快にさせるとともに、なにやらいろいろ想像しちゃうよね。

他の宝物については言わないでおこう。一つ一つがもう豪華絢爛。でも「瓶の如くヒミツ」だからやめとく。門を出るとクルマの洪水。従うものは栄え、逆らうものは滅びる、だ。

Junさんによる蛇足:なんせすごいところ。ここに長年勤めて退職、社長になった男は、去年あっさり30億円以上する自家用ジェット機を買って中国中どころか世界を飛び歩いている。これが『中共中央宣伝部』。まさに権力の総本山なんである……らしい。その一番下の方をちらっとみた貴重な記録だ(^^;)。

(執筆者:Jun)Twitterアカウントはこちら
*当記事引用部分は、ブログ「わがだいえっとウォーキング 2010」の管理人・Jun氏の許可を得て掲載したものです。
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