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【インフレ進行中】「スーパーから食用油が消える」報道、政府は否定=実際どうなの?中国人に聞いてみた。

2010年12月14日

右肩上がりの上昇が続く中国の物価。関連報道も日増しに増えています。

過去記事「【泥縄】中国政府の物価対策=社会主義的「伝家の宝刀」で混乱必至」では、今後出現するであろう「物価関連の不思議ニュース」を予想してみましたが、早くも不思議なニュースが出現。


Sichuanpepper oil / FotoosVanRobin


12月10日付華夏時報は記事「価格調整の苦境=食用油企業が生産停止に追い込まれる」という記事を掲載。北京市の食用油メーカー・匯福粮油集団が値上げを禁止されたため、「売っても損になるばかり。作るのやーめた」と生産中したとのニュースを報じています。また仏系大手スーパー・カルフールが「食用油の卸価格値上げを打診されたため、仕入れを中止した」という報道もありました。

「政府が値上げを禁止したばかりに、売り場から食用油が消えるのでは?」などという観測も広がったようで、当局は「噂」の否定に躍起のよう。(「「食用油メーカーに大規模な生産停止の兆し」=報道は事実に反する―発展改革委員会」(新華網、2010年12月13日)これが「噂」ですんでいる間はいいのですが。ま、「どんなに赤字になろうとも、生産は続けよ!でも値上げは禁止ね」との政府のお達しが出回っていることでしょう。

さてさて、報道だけではなく、現地民の肌感覚の声を聞いてみようと思い、本ブログではおなじみのSさんに電話してみました。天津市在住の「80後」(1980年代生まれ)ギャルが語るインフレの実感をどうぞ。

Chinanews(以下、C):最近、報道で物価高がすごいって聞いたけど?どんな感じ?

S:すごいよ。今日、お父さんが私の好物のスイカを買ってきてくれたんだけど、1斤(500グラム)=5元(約60円、中国の野菜・果物は量り売りで売られるのが一般的です)だったって。例年12月なら3元(約36円)ぐらいなのに。

C:おー。他には?

S:職場近くの市場でお昼を食べることが多いんだけど、値上がりしたね。春は1食5元(約60円)で食べれたのに、今は10元(約120円)かかるかな。

C:倍じゃん!困ってないの?給料上がった?

S:困っている。iPhoneが欲しいのにお金がない!職場で盛り上がってるの。iPad買った子が1人、iPod Touch買った子が2人。私も欲しい~~~。ゲームとか面白いよ。遊ばせてもらったけど、スイカを切るゲームが面白かった♪

C:(ゲームかよっ!)そっかー。他には家計が苦しくなったとかさ?

S:食べ物とかいつもお父さんが買ってきてくれるから。私はあんまりわからないな。お父さんに聞いてみる?おとーさーん(いきなり呼び始めた)。

C:いやいやいや、そんなお父さんに聞いてもらうほどのことでは……。

S父:Chinanewsくん、久しぶり。物価の話が聞きたいんだって?

C:あ、あ、あ……。お久しぶりです……。

S父:物価は上がっているよ。春先の天候不順とかがあったからね。白菜なんか去年の3倍。これはキムチ危機に陥った韓国が中国から輸入したためらしいのだが。(キムチ危機については過去記事「韓国「キムチ危機」に思う=中国の食料安全保障」を参照)。肉も野菜もなにもかも値上がりしている。去年と比べて1.5倍から2倍になったんじゃないだろうか。

C:厳しいですね。

S父:吉林か黒竜江か忘れたが、中国東北部のどこかでは物価高騰に抗議するデモがあったと聞くよ。(ネットでは確認できず)で もね、政府は結構よくやっていると思う。省長が主食、市長が野菜の価格統制の責任を負う「米袋子省長負責制・菜籃子市長負責制」が導入されたからね。耐え 難いほどの物価上昇ではない。現に街のレストランなんか人でいっぱい。インフレになったとはいえ、まだみんな食べたいものを食べて遊びたいように遊んでい る状態だよ。

C:なるほど。ではこれから物価は下がりそうだ、と。

S父:そうは思わない。というのも、みんな今の価格に慣れてしまったからね。卸価格が下がったとしても、小売店は値下げしないだろうよ。一度、上がった価格はそのままだろう。

C:なるほどー。

S父:中国人が物価高を怒っているか聞きたいのだろう?もちろん憎々しく思っているさ。だが、結局のところ、恨みが集中しているのは以前と同じ。「3つの大山」っていうやつさ。

C:「3つの大山」?

S 父:新中国成立直後は、帝国主義、封建主義、官僚資本主義が最大の敵であり、「3つの大山」と呼ばれた。だが、今では「教育費、医療費、住宅費の高さ」が 「3つの大山」、すなわち庶民の敵と呼ばれているんだ。いや、もうひどいものだ。例えば教育費。正規の学費の問題だけじゃないよ。同僚の息子がね、来年大 学受験なんだ。

C:それは大変ですね。

S父:で、猛勉強しなければということで、家庭教師を雇った。高校の先生の副業な んだがね。生徒は2人いるんだが、支払いは1人1時間80元(約960円)。しかも80時間分前払いなので、6400元(約6万5280円)が必要。さら に結局、もう1人の生徒が逃げたとかで1万2800元(約13万1000円)を支払うはめになったんだそうだ。

C:1万元は痛い!

S 父:あと医療費。私は前に病院につとめていたからわかるが、医者は本当の病状よりもよっぽど深刻なことを言うもんだ。で、怯えた患者にあれこれ検査を受け させ儲けるという寸法だ。だが、友人にはそうした詐欺まがいのことはできないだろう?だから、コネがある患者は安く治療を受けられて、しかもよっぽど早く 「完治」して退院できるという寸法だ。最後の住宅費についてはもう説明は要らないだろう。

C:説明どうもです。ありがとうございました。

S:よく分かった?よかったよかった。ところで、iPhoneなんだけど、友達は香港で買ったらしいの。中国本土よりよっぽど安いんだって。で、日本の価格が知りたいんだけど(以下略)

と まあ、こんな感じ。いきなりSさんのお父さんとお話するはめになった時はちょっとまいりましたが、さすがはマジメなS父。しっかりと自分の見方を披露して くれました。もちろんS父個人の見方であり、全中国人共通の意見ではありませんが、インフレの現状を知る参考になりました。

騒がれているほど物価高に困っているわけじゃない、というのはなかなか冷静なご意見かも。とはいえ、現状のインフレは食品価格高騰が主要因となっている以上、エンゲル係数が高い貧困家庭ではまったく別の意見もあるのではないか、と。


(執筆者:Chinanews) Twitterアカウントはこちら
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 コメント一覧 (5)

    • 1. こんちわ
    • 2010年12月15日 02:25
    • 4 お父さん良いね!また出演求む。
      そして女子の家に電話かけて父出て困るC氏。

      冗談は横にして、投機ブームで保存の利く食料まで買い占めるのは聞いていましたが価格統制で需給バランスが壊れるとか教科書にのりそうな中国・・・大変だ。
    • 2. _
    • 2010年12月15日 14:22
    • 常識人な中国の方と知り合いなのは羨ましいわ
    • 3. Chinanews
    • 2010年12月15日 15:24
    • >こんちわさん
      コメントどうもです。S父と話すと緊張するのがちょっと……。

      おっしゃるとおりの大変な状況で。金融緩和、財政出動を続けすぎた反動はやばいんじゃないかな、と思ったり。

      >_ さん
      S父は話すと緊張しますが、話題が豊富で面白い人です。仲良くなると、おもろい中国人はたくさんいますよ。
    • 4.  
    • 2010年12月15日 17:52
    • 浙江省温州市の養殖業者のメラミン肥料汚染の取材もやって下さいw粉ミルク以上と言われてたのに全く続報がなくなった、ちょっと怖いよ。
    • 5. Chinanews
    • 2010年12月16日 00:54
    • >4 さん
      コメントどうもです。
      温州市のメラミン魚粉問題、近いうちに記事にしますね~。

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